その昔「9500万人のポピュラーリクエスト」というラジオ番組があった。
チューナーを回して探り当てた放送、小島正雄さんが番組を担当していて歯切れの良い司会ぶりだった。
番組は特定のジャンルでなく良い曲はなんでもリクエスト・チャートに上がってくるし、いち早く紹介される海外のヒット曲を聴くのが楽しみだった。
思えばご近所のKさんが作られたという上部に蓄音機がセットされた大型のラジオで、浪曲からポップスまでなんでも聴いたものだ。
ハワイもので言えばリズ・ダモンとオリエント・エキスプレスの「1900Yesterday」が印象的だった。
ブラスとコーラス、彼女の写真を見るのは随分経ってからLPジャケットで知ることになり、当然買い求めた。
シャドウズの「アパッチ」を聴いたのもこのラジオからだ。
考えてみれば祖母と共に「清水次郎長」の浪花節を愛聴していた同じ箱からエレクトリック・ギターが流れたのだから少年は驚いた。
ビートルズが出てきたのも、トニー・シェリダンの「マイ・ボニー」が最初だったかもしれない。
シルバー・ビートルズと称していた頃、プロデュースしたのがオーケストラで有名なドイツのベルト・ケンプフェルトだったことを最近知った。
そして「Please please me」や「She loves you」のインパクトで「頭の中にビートルズの特別室ができてしまった」人は多かったのではないだろうか。
「話題になる」などといったレベルでなく、まるで新しい別世界を見たような衝撃があった。
先日中村とうようさんのメモリアルコンサートで湯川れい子さんに初めてお会いした時、年甲斐もなく握手を求めてしまったのはこうした小中学生の頃からの歴史があるからだ。
ビートルズ以前はエルビス・プレスリーがヒットを飛ばしていた。
映画の公開と同時に発表される収録曲がヒットするというビジネスモデルが定着していた。
が、オーケストラをバックで歌うだけのエルビスに飽きてくる、ビートルズ以降ロックのムーヴメントが、彼をラスヴェガスのショービジネスへ追いやったのだろうか。
しかしエルビスの曲には良い曲が多い。
初期の頃の歌は腰だけでなく歌自体がセクシーだったに違いない、そう、ビートルズが出てきた頃のように。
本家以外のミュージシャンがカバーして「いいなあ」と思った時、その楽曲が優れているのだなと実感する。
もちろん楽曲が良いだけでなく「その人が歌うからいい」パターンもある、尾崎さんのように。
「今宵独り寂しくしていないかい」という歌詞は男のロマン、
道端に捨てられた子猫が気になって帰ることができないように、男の子は気になったら四六時中その人のことを考えてしまう。
もちろん寂しいのは歌っている自身なのだが、恥ずかしくて言えないからこそ君に向かって歌うのではないか。
それなりのミュージシャンが手がけると「カバー」という表現が適切かどうかと思う。
本家へのリスペクトの念を持って自身の世界が開ければそれでいい。
Norah Jones - Are You Lonesome Tonight
Diana Krall - Crazy
Amy Winehouse - Will You Still Love Me Tomorrow
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます