千寿の碁紀行

小林千寿の世界囲碁普及だより

MGプレスより 碁縁旅人⑩ 国際囲碁セミナー・京都編

2021-08-27 16:10:15 | 日記
【小林千寿・碁縁旅人】#10 国際囲碁セミナー・京都編
2021/08/27 碁縁旅人

日本文化の中で学ぶ碁
26、27日に囲碁の3大タイトルの一つ「名人戦・七番勝負」の第1局が打たれ、井山裕太・名人(32歳)への一力遼・九段(24歳)の挑戦が始まりました。そして何と、その翌々日の29日に一力碁聖と挑戦者の井山名人による、タイトルが決まる5局目が打たれる緊迫した日程です。
日本棋院は海外の囲碁ファンのために名人戦の開催に合わせ、「国際囲碁セミナー」を開催していましたが、コロナ禍で残念ながら昨年に続き中止です。
2017年は主催の朝日新聞社の大阪・中之島フェスティバルタワー披露に合わせ、名人戦1局目が特別に大阪で打たれ、それに合わせて囲碁セミナーも大阪、京都で開催。そこで世界の囲碁ファンに日本文化に浸りながら囲碁を学ぶ企画を用意しました。
日頃、ご指導いただいている京都・相国寺の坐禅(ざぜん)道場・大通院の小林玄徳老大師の計らいで、日頃はできない貴重な経験をさせていただきました。
まず相国寺内の法堂(はっとう)の天井の狩野光信作の「龍」を見学。龍の下で手を叩(たた)くと音が反響する「鳴き龍」です。晩夏でもまだ暑く、セミの鳴き声の中、広い境内を歩き、その中の塔頭(たっちゅう)の一つ大通院へ。
広い畳の部屋で諸外国から集まった囲碁の生徒は慣れない正座にトライ。老師の法話を拝聴し、その後は脚付きの碁盤で碁を打つ。正座に痺(しび)れを切らし足を崩しながらも、碁に没頭する姿。
そして坐禅堂で坐禅。広く薄暗い坐禅堂の四方の窓を開けると暑さが消え、セミの鳴き声が聞き分けられるほどの静けさ-。
昼は雲水さんたちと「そうめん供養」。ひたすら、そうめんを食べ続ける修行です。そして修行後に相国寺の塔頭の一つである、夕日に輝く金閣寺を見学しました。
このコロナ禍で自由に行き来できなくなった今、その時が如何(いか)に貴重な時間であったか気づかされます。
(日本棋院・棋士六段、松本市出身)

「そうめん修行」に臨む世界の囲碁の生徒たち




夕日に輝く金閣寺
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信濃毎日新聞社 中部地区 MGプレスのコラムより

2021-08-13 22:45:33 | 日記
2021年4月より月2回コラムを投稿してます。
今回はオリンピックを観戦していたら世界の思い出が蘇ってきました。
その中のエピソードを少しご紹介したものです。
自由を愛するフランス人との小さな思い出です。

https://mgpress.jp/2021/08/13/%e3%80%90%e5%b0%8f%e6%9e%97%e5%8d%83%e5%af%bf%e3%83%bb%e7%a2%81%e7%b8%81%e6%97%85%e4%ba%ba%e3%80%919%e3%80%80%e5%a4%8f%e3%81%ae%e6%80%9d%e3%81%84%e5%87%ba/

合宿場のテラス、日光浴が必要な欧州では外で碁を打つのは普通。
この写真の少年がブーケをお礼に。

『フランス人気質・夏の思い出』

開催に賛否両論がありましたが、オリンピックの世界のアスリートの活躍ぶりを観戦していると、今日までの努力と忍耐が伝わり、目頭が熱くなります。
夏休みに入った今、残念ながらコロナ感染者が急増し、昨年に続き移動し難くなってしまいました。
私は囲碁のプロ試験が毎年夏にあったので、高校2年の8月に受かるまで休みはありませんでした。プロ棋士になってからは、夏に長い休暇を取る習慣の欧州の囲碁大会・合宿に指導に出掛けることが増えました。
海外囲碁普及に慣れてきた1986年夏、南仏の田舎の囲碁合宿に初めて指導に行った時のことです。合宿場は広い敷地で24時間、どこかで誰かが碁を打ち、踊り、飲み、歌っている日々。碁の指導以外は全く自由で、気遣い、お構いなし。
そんな状況のため、私は食後は居場所が見つからず、どうしたものかと一人、テラスの石垣に座って夕焼け、星を見ていました。すると、そこを通り過ぎるプレーヤーがだんだん声を掛けてくるようになり、そのうちに座って話し込み、気付くと大きな輪になっていたり…。
なんというか、フランス人の中に無理して入ろうとせず、自分の場をつくり、そこにフランス人が立ち寄る。強制されるのを嫌うフランス人の方から、一人で座っている私に「何してるの?」と声を掛ける状況になったのが良かったのでしょう。
数日たつと、英語が通じない子どもたちも碁を習いに来てくれるようになり、その合宿の空気に馴染(なじ)めました。
そして合宿最後の晩はお別れパーティー。夕闇の中で待っていてくれた少年が囲碁指導のお礼にと渡してくれた野原で摘んだ花束。みんなで草むらに寝転んで流れ星を数え、ピレネー山脈のシルエットが見える夜明けまで語り合ったのは、楽しい夏の思い出です。





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