マネジャーの休日余暇(ブログ版)

奈良の伝統行事や民俗、風習を採訪し紹介してます。
すべての写真、文は著作権がありますので無断転載はお断りします。

都祁馬場農産物直売所・老婆の休日

2024年02月22日 08時00分32秒 | 民俗あれこれ(売る編)
奈良市の川上町から山越え。

須川を経て誓多林町に茗荷町。

まさに山越え、峠越えを繰り返す山行きロード。

小さなカーブ繰り返す山道に峠を越えてきた。

もうすぐ幹道に出る。

そのとき開けた地に集落があった。

小豆を干すお家もあればズイキも干していた民家に、思わず車を停めてシャッターを押した。

その地は上杣ノ川。

そこから幹道に出て、右折れした直後に出くわした道端の売り場。

さて、ここはどこなんだ。

売り子さんに伺った、ここは旧都祁村の都祁馬場。

年の4月にオープンした、というお店は”老婆の休日”。

売り子さんたちの年齢を考えた上でのネーミングが素晴らしい

この道は、過去何度も走行していた幹線道路。

まさかの道端店舗売りに、どのような商品を売っておられるのか、興味津々の入店。

あるある、食べたい野菜がいっぱい。

どれを選ぶか、迷うばかりの好みの野菜たち。

決めた買いの野菜は、3個で100円のハヤトウリ。

これ、めっちゃ美味いんやで。

スライスしたハヤトウリは天ぷら、炒めてチーズやピザソースかけ。

漬けもんもいいが、ハヤトウリの食感がイチバン。

もうひとつは甘くて美味しい100円売りのモロッコインゲン。

野菜、柿などの地産地消に餅、赤飯も売る”老婆の休日”。

売り場を撮らせてもらった。

”老婆の休日”を伝える書がある。



売りの地産地消を奨める言葉はなく、な、な、なぁんと山田道安に関する歴史を伝える文。

ここ”老婆の休日”の意図は・・・さて

お店を仕切る高齢?女性がいらっしゃる。

都祁馬場で売っている私たちは、隣村の荻、(※上・下不明)深川。

その女性は荻住民。

で、あるなら”刺し鯖“は、ご存じですか、と尋ねたら首を傾げられた。

こんな魚ですが・・聴いたが、まったく存じていないらしい。

実は、荻住民に、お盆の”刺し鯖“習俗を、今もしていると話してくれた家族さんがいる。

と、いうことは同じ地区であっても、されているお家もあれば、まったく体験してこなかったお家もある、とわかった。

ただ、その荻の女性は知らなかったが、横で聞いておられた深川の女性はしていた、と・・

胸は躍ったが、その中年層の女性がいうには、40年?ほど前まで。

あの塩辛い“刺し鯖”をイタダキしていた、と話してくれた。

(R3.11. 3 SB805SH 撮影)

つい、くるまにポピー♪を口ずさむが、これはポーポー

2024年01月02日 08時26分54秒 | 民俗あれこれ(売る編)
知人の写真家Kさんが、ストーリーに揚げたポーポー映像。

思わず反応してしまった地産地消よってって大和郡山店に売っていた魅惑の果物ポーポー写真。

コメントは、驚き、感動の「おおお!!!」・・・

驚きコメントに対して返答した。

「地元にある地産地消の“よってって”に、売っていたポーポー・・・
明日香の“あすか夢販売所”にも売っていたと、どなたかがアップしていたようです。
今年は、ポーポーの当たり年かもしれなですね」

一度は、味わってみたい甘くて、美味しいとされる魅惑のポーポー。

どこの売り場にあるのか、確定情報もないポーポー。

楽天市場に見つかった

ポーポーって、ケッコーお高いのね。

(R3.10. 4 SB805SH撮影)

今年もよう売れたという都祁白石の自家製刺しさばを売る店

2023年11月13日 08時21分32秒 | 民俗あれこれ(売る編)
この日の目的地は吉野町香束

途中に道の駅大宇陀での小休止を予定に車を走らせた。

西名阪国道・針ICから走る南へ。

その道中に、いつもお世話になっている都祁白石の辻村商店に顔出し表敬訪問。

今夏に調査したお盆売りのトビウオ調査結果を伝えたい。

ここ辻村商店もお客さんの注文要望に応えて奈良県中央卸売市場で仕入れたトビウオ。

塩辛いトビウオはカラカラに乾いた塩干物。

初めて見るお盆のトビウオを見届けて三重県入りした7月30日。

名張市内にある魚屋さんや食料品店で販売していたことがわかった。

名張市本町のいしかわ魚店や、新町の矢の惣総合食品は、今年もお客の要望のあったトビウオを奈良県中央卸売市場から仕入れて売っていた。

例年より注文数は減ったが売っていた。

一方、発注願いの声もなく、やむなく仕入れをやめた食料品店は2店舗。

安部田の永橋商店

赤目口の西川商店がある。

逆に、まるで別物では、と思ったくらいのひと塩干しトビウオを売っていた大手スーパーのイオン名張店売りも調査してきた。

そのことを伝えたくて立ち寄った辻村商店。

店舗扉に貼ってあった「遠い昔より続く 都祁の都の里のさしさば」に、時季が過ぎているのでは・・

目がキョトンとした看板の売り文句。

こんにちは、と声をかけて入店した目の前にも「遠い昔より続く 都祁の里の刺鯖」があった。



その売り場にあの真っ黒な刺しさばはなく、空っぽ。

いつも福住から来ている売り子さん。

あー、あまりにも忙しかったから刺鯖看板を下ろすん、すっかり忘れていた、という。

そう、この日も店内奥の厨房では、店主は忙しく注文の仕出し弁当をつくっていた。

店奥の半床にずらりと並べた仕出し料理の盛り付けに調理場はてんやわんや。

応対している余裕もない店主に大きな声で報告した。

今年の売れ行き。

結果的には200枚も作って完売。

お盆がもう終わる時季にも買ってくれたお客さん。

たぶん、それは知人のKさん。

一口食べて、塩辛いって口に出したそうだよ、と伝えたら、ニコッと笑顔を返してくれた。

(R3. 9. 5 SB805SH撮影)

名張市赤目口・盆に食べるトビウオを昨年まで売っていた名張市赤目口の西川商店

2023年10月15日 09時30分24秒 | 民俗あれこれ(売る編)
「鮮魚に料理仕出しの西川商店がある。うちから近い赤目口駅からすぐ近くにある店。そこはトビウオを売っていた。」

そう教えてくれた名張市安部田谷出の永橋商店の女将さん。

赤目口の駅から名勝、赤目の滝に向かって走った左側にある。

その指示の通りに走ったらあった。

店舗外観を見るだけでは、鮮魚なども売っているようには見えない。出入口の扉を開けて、ごめんください。

「三重県にトビウオを食べる習慣がある、と聞いてやってきました。」

名前を名乗って取材主旨を女将さんに伝えた。

お盆に食べるという塩辛いトビウオは、20~30枚も入っているトロ箱で仕入れて売っていた。

仕入れ先は、伊勢の松阪の市場(※おそらく松阪市小津待ちの㈱松阪魚市)。

ここ何年か前から売れ残りが多くなっていた。

母親が健在だったころの西川商店。

亡くなる13年前まではトビウオを食べていたが、今はもう誰も食べないし、うちの若いもんは見向きもしない。

塩辛いのはヒダラもそうだが、なぜかトビウオを買う人が急におらんようになった。

これまで高齢者の人たちがトビウオを注文していたが、今はその声も聞かない。

こういう状況に、仕入れは昨年を最後にした。

両親がそろっていれば、2枚のトビウオを食べる習慣が、ここ赤目にもあったが、継いできたのは高齢者の人たち。

注文が途絶えたということは、高齢者の後を追う壮年、いや、もっと若い人たちは、継承する考えがなかった、ということだ。

(R3. 8.10 SB805SH撮影)

名張市元町・盆に食べるトビウオを売る名張市元町のイオン名張店

2023年10月14日 07時05分26秒 | 民俗あれこれ(売る編)
この日も猛暑。

実態を知った名張市街地にある2軒の魚屋さん。

常連だった購買者層の減少に歯止めがきかない。

名張黒田に住むMさんが、教えてくださった塩辛の飛魚を売るお店。

かつては、近くにダイゴ水産が売っていたが、数年前に閉店。

それからは、ジャスコと今でも読んでしまいそうになるイオン名張店の魚屋さんに見たことがある、と話してくれた。

その証言に嘘はないと信じて立ち寄った大手のスーパーのイオン名張店。

鮮魚コーナーにない開きの飛魚。

そりゃそうだ。開きの飛魚は、塩干物。

干物は鮮魚じゃなく乾物売り場にあり。

そう判断し、かなり距離が離れた売り場に・・・・あった。



「名張の盆にとびうお開き」を表記したPOPを立て、お客さんの目線を誘導していた。

ひと袋に2枚売りの開きの飛魚。

両親がそろっているなら2枚を食べる風習に合わせて、ここイオン名張店にも売っていた。

トビ魚の開きは、鹿児島県の屋久島産。

鮮魚の飛魚を仕入れ、加工製造した事業者は、鹿児島県日置市東市来町伊作田にあるみのだ食品㈲。

ネット調べにたくさんの干し魚を提供するみのだ食品。

ふるさと納税にも提供している加工専門業者のようだ。

外装の袋から見る開きの飛魚の状態から、名張城下町・本町のいしかわ魚店や、新町の矢の惣総合食品が売っているホントビとはまったく異なる仕様。

「屋久島産のトビ魚開き」の賞味期限は8月12日。



本日が10日だから、数日間。

たぶん売り切れると思うが、名張井出のNさんが、纏めた史料に「8月14日、夕方に墓参。両親の揃っている家の子どもたちは、夕食に飛び魚を食べる」である。

売る方にとっては、14日にトビウオを食べる盆の習慣は、知っていても、いつ食べなくてはならないかまでは知らずにいる。

つまりは商魂しかない、ということだろう。

内面のできぐあいでわかるイオン名張店が398円で売る開きの飛魚は、一般的なひと塩仕立ての食べやすい塩干物。

これなら塩辛くもないから、開きが好きな方なら、お盆に関係なく食べているだろう。

実は、そのふるさと納税仕様の中に「特大のとび魚開きが1枚」もある。

今、この売り場に並べているとび魚開きよりも、大きな干物だと表記していた。

(R3. 8.10 SB805SH撮影)

名張市本町・再訪、盆に食べるトビウオを売る新町の矢の惣総合食品

2023年10月13日 07時53分14秒 | 民俗あれこれ(売る編)
本町のいしかわ魚店に売っていたホントビと刺しさばを拝見して、それで踏査は終わりでなく、すぐ近くにある新町の矢の惣総合食品も再訪した。

ここ本町の通りは、江戸川亂(乱)歩先生の生誕地。

明智小五郎に怪人二十面相の唄。子供のころに歌っていた懐かしの歌。

「ぼっ、ぼっ、ぼくらは少年探偵団♪・・・(勇気凛々 瑠璃の色)」が、自然に口ずさむ世代は、今や高齢者。白黒テレビで観ていた番組を思いだす。

お客さんが途絶えた時間を見計らって食事を摂っていた店主のFさん。

どうぞ、ゆっくり食事を摂ってくださいね、と声をかけ。

店内にでてきた店主に、えっ、刺しさばも売っているのですね。と思わず声が・・。

近づいてよく見た刺しさばは、和歌山県産だった。



1枚ごと袋入りで売っていた刺しさば。シールを見れば「和歌山県田辺市磯間 水産加工 カネソ増田商店」が製造、販売するさしさば。

さしさばをきっかけに、機会を設けて和歌山県の田辺漁港まで、行ってみたい気もするが・・・。



その下にあったトロ箱のトビは、7月30日に入荷したときよりかなり減って、残り4枚。

入荷したときのトロ箱状態が7枚。これが実状である。

どちらも、ぐんと減ってきた。

今年も希望者が少なくなり、この状況である。

常連だった高齢者からは求める声も聞かなくなった、という。

トビもさしさばも、共に塩辛い塩干物。若い人にとっては、興味もない塩辛魚。

仮に高齢者が80歳台としても、その子たちは50歳から60歳であろう。

孫にも継がれない盆に食べてきた塩辛魚。

遅かれ早かれ、注文がまったくない時代を迎えることになるだろう。

(R3. 8.10 SB805SH撮影)

名張市本町・再訪、盆に食べるトビウオを売る名張市本町のいしかわ魚店

2023年10月12日 07時35分24秒 | 民俗あれこれ(売る編)
この年のホントビの仕入れは8月5日。

毎年の固定日でなく仕入れ先の奈良県中央卸売市場休場日は、制令が定める休日でなく、だいたいが水曜日。

稀に月曜とか、金曜、土曜に移動する場合もあるが・・。

5日に仕入れてすぐにホントビを求める顧客が押し寄せるわけでなく、10日前後がピークになる、と店主が話してくれた。

ただ、毎日が仕入れだと話していた店主であるが、ととやのいしかわ魚店の定休日は存じていない。

定休日の概念はある、と思うのだが・・。

今年は東京五輪の関係で8月9日は振替休日。

まさか、お休みでは、と思って、最も集中するであろうと判断した10日に車を走らせた。

お店の駐車場に停めさせてもらって、そこから見たととやのいしかわ魚店

シャッターを開けて売り物の魚を、通り過ぎるお客さんがすぐわかるように、昔ながらのPOP表示も置いて・・。



一瞬にしてわかったホントビの姿。

その姿は、奈良県・都祁白石の辻村商店、ならびここ名張の新町・矢の惣総合食品で売っていたトビと同じだった。

その横に、なんと身の厚いサバ。

日焼け、塩焼け、真っ黒けの刺しさば。

辻村商店から仕入れたんでは、と思ったくらいのそっくりさん。

いやいや、そうじゃなくて、ホントビも刺しさばも、奈良県中央卸売市場内で販売している松本水産㈱から仕入れた、と話してくれた店主。

まさか、私の住む奈良県大和郡山市内にある県中央卸売市場内で卸していたとは。灯台下暗しとは、こういうことだ。

先代の父親は、仕入れた生の飛魚から塩干物のホントビを作っていたころ。

漬物と同様、漬物桶に・・。

一枚、一枚重ねて塩漬けする開きの飛魚。

その塩の量の加減で、しょっぱさは強くもなるし、弱くもなる、と話してくれた。

「もう聞くことないか・・」といわれて、奥に入り込んだ店主。

体調がすぐれないのか、今日の応対は、ここまでだったが、自由に撮っていい、と・・・。

売値は、ホントビが350円。



刺しさばは、550円。

それぞれ、30枚に、10枚の仕入れ数。

年々、買ってくれる枚数が少なくなってきた。

購買者層は話してくれなかったが、2枚セットの人もあれば、1枚の人も・・。

(R3. 8.10 SB805SH撮影)

盆にトビを売る名張市新町の矢の総総合食料品店

2023年09月26日 07時33分00秒 | 民俗あれこれ(売る編)
ほんの一握りのごくごく一部の民俗に触れ合えた名張の城下町。

刺し鯖からトビウオ調査に訪れた町内だけでも本町、元町、中町、新町。

蛭子神社が鎮座する鍛冶町の他、木屋町、榊町、豊後町、栄町、丸之内、狭間などの町名からもわかるように、ここは城下町。

慶長十三年(1608)、それまで伊賀国領主であった筒井氏は転封。

代わって伊予国から藤堂高虎が伊勢・伊賀国領主として入封

転封は寛永十二年(1635)。

以来、明治四年の廃藩置県までの260年間。

十一代に亘り、藤堂家が居を構えた歴史ある地。

武家、商家の暮らしを支える商売に海産物を扱う魚屋があった。

もちろん、米穀商、青果、乾物、味噌醤油、生糸、木炭、肥料、医師、薬、酒、材木、金物、桶、結髪、古物、旅館などもある。

ちょっと、歩くだけでなんらかの民俗が見つかる。

「伊賀上野から言わしたら、名張の城下町より、上野の方が古いねん」、という人もいるらしいが、私はふるさとを争いにするのではなく、それぞれの良さがある。

民俗文化の違いは、あろうが、比較、差異、優劣を見出すような目的は持ち合わせていない。

民俗文化は、暮らしの文化。

それぞれの土地に風土があり、歴史もある。

それが地域の特徴でもある。

さて、今回の目的地はお盆に干し飛魚を売る魚屋さんの調査である。

本町のととやのいしかわは、8月5日に入荷するとわかった。

で、あれば新町の矢の惣総合食品も望みがある。

取材主旨を伝えて売り場を覗かせてもらったそこにあった。



店主のFさんは、塩干物の干し飛魚を「トビ」と、呼んでいた。

たまたま訪れた今日に仕入れてきたばかり、だという。

仕入れ先は、またまた、なんと奈良県中央卸売市場の松本水産。

ここ矢の惣総合食品店も、ご縁が繋がった。

両親が揃っているお家が食べる「トビ」。



そんな風習がある名張。

干した乾物だから、物流によって運ばれた。

陸地の名張にも、その風習が続いてきたが、売れた枚数は徐々に減っている、という。

ここら名張は、三重文化に奈良文化もある。

奈良県山添村などにあってもおかしくないが、今回仕入れのトビウオはひと塩干しのトビウオである。

店主曰く、トロ箱売りのトビウオは、塩辛いっ、と。

干してつくるには吹く風が要る。

風をもってつくる、というが、ここらではつくる人はおらんから、奈良県中央卸売市場まで毎日出かけて鮮魚などいろんなものを仕入れている。

飛魚の漁獲高が多い地方は、日本海側。

島根や長崎が漁場だから、その地でつくっているのでは・・と。

女将さんがいうには、明日葉が自生するあの島もよ、といわれた。

それは、東京都の八丈島。

伊豆諸島・小笠原諸島近海は、飛魚(※ハマトビウオ)の好漁場で知られ、春に八丈島に寄った飛魚は、伊豆諸島沿いを北上し、夏場は三陸から北海道沖に(産卵)生存。

飛魚には、冬から春にかけて再び伊豆諸島に戻るグループと、そのまま通過し、鹿児島の屋久島や種子島付近まで南下するグループがあるそうだ。

(R3. 7.30 SB805SH撮影)

盆にホントビを売る名張市中町の石川魚店

2023年09月24日 07時28分32秒 | 民俗あれこれ(売る編)
谷出からそれほど遠くない地にジャスコ、もとい、今はイオン名張店にもトビウオを売っていたと聞いたのは、昨年の12月。

行事調査に訪れた三重県名張市黒田に住むMさんが教えてくれた。

同地にはかつてダイゴ水産がトビウオを売っていたが、何年か前に閉店。

代わりかどうかわからないが、イオン名張店内の魚屋さんにあった、と話していたが・・・。

そのイオン名張店からすぐ近くに大きな鳥居があった。

この鳥居は見たことがある。

平成31年2月7日に訪れ、取材した鍛冶町蛭子神社の「名張八日市の宵宮蛭子祭」。

大にぎわいの宵宮蛭子祭を見終わって、はまぐり売りをしていた通りをぶらり散歩。

辿り着いた場に鳥居に出くわしたが、魚屋さんは見当たらなかった。

ちなみに鳥居は、蛭子神社でなく名張市平尾に鎮座する宇流冨志彌神社(うるふしねじんじゃ)の大鳥居。

女将さんに娘さんが話していたとおりの位置にいしかわ魚店が見つかった。



「ととやのいしかわ」で呼ばれる石川魚店。

車も潜って通りに入る大鳥居。

一方通行でもない本町通り。

店主は、魚介類の仕入れに毎日出かける奈良県中央卸売市場。

早朝だけに片道1時間。

今日はまだ仕入れていないホントビ(※干物のトビウオをそういう)。

翌月の8月5日に仕入れるホントビは、中央卸売市場松本水産から・・・に、えっ。

奈良の都祁白石もトビウオ仕入れは松本水産。

同じく白石のショッピングプラザたけよしもまたサシサバ仕入れに松本水産。

まさか、三重県の魚屋さんも仕入れていたとは・・・。

奈良県中央卸売市場は、私が住まいするおひざ元の大和郡山市の馬司町にある。

思わず、「なんてこったい」が口に出た。

お盆に買い求めるお客さんは8月10日辺りに集中する。

その前後の、午後1時過ぎなら、仕入れから戻っているから取材に応じられるから、来ていいよと逆にお願いされた。



ととやの先代は店主の父親。

トビウオを仕入れて塩干物のホントビをつくって売っていた。

当時はお客さんも多く、百枚はゆうに買ってくれたが、今は当時の半分くらいに落ち込んだそうだ。

その時代、嫁さんは盆に実家へ里帰りする。

そのとき、実家に持って行かせるようにしたのがトビウオだった。

塩干物のトビウオは10枚。

それに三輪のそうめんも1箱持たせて里帰りさせるお中元。

今では、まず聞くことのない里帰りの中元。

風習はとんと聞かれなくなったこともあって飛ぶように売れたトビウオも半滅以下。

伊賀地方では聞くこともなくなった里帰り風習。

ここ名張では少なくなったものの、しょっぱいトビウオの味を食べたくなって、今も買いに来てくれるお客さんがあるから、仕入れている。

仕入れに伊勢くんだり、行くこともあるが品数が少ないから、奈良の中央卸売市場。

そりゃぁもう、質も量も多いし、需要にこたえてくれるから、仕入れ先は自然と奈良の中央卸売市場になる。

先代の親父さんが言っていた。

「両親が揃うてる子どもに食べさす塩干物のホントビ」である。

が、片親しかおらん家もある。

不平等な言い方は今の時代に相応しくないから、私はそういうことは口にしないと現店主はいう。

父親が健在だった時代は、飛ぶように売れたホントビ。

今どきの人たちは、とてもじゃないが、しょっぱいホントビなど食べやしない。

見向きもしないが、かつてホントビを食べて育った高齢者が、今でも口にしたいといって買いにきてくれる。

まぁ、気のもんやから、と話す店主。

奈良と三重を結ぶ峠を越えたらここ名張ではホントビだが、奈良はまっ茶に焼けた刺し鯖。

冷蔵庫のなかった時代の魚の保存に塩干物しかない。

生の魚が、食べられるようになったのは、戦後に発展した流通の文化のおかげ。

トビウオの水揚げが盛んな地域は丹後地方も含む日本海寄り。

島根や鳥取がそうだ、という。

4月~5月によく捕れるトビウオ。

そのころの鯖もよく捕れる。

水揚げ量が多い月は、値も安い。

安いときに捕ったトビウオとかサバは塩漬け干物を作っていた。

店の奥で加工する塩干物。

ひと塩入れて、風通しのえーとこで天日干し。

つくった塩干物は、夏場に店前に並べて売っていた。

食べ方は、塩抜きが大切。

水に浸けておくだけでは塩分はとれない。

迎え塩をするんや、という。

迎え塩は、うすい塩水に漬けおき。

2日間は、そうして寝かしておけば塩分が抜ける。

トビウオを食べる習慣がある地域は、ここら辺りでいえば、比奈知に滝之原。

青山も高原の向こうは伊勢文化だが、手前は名張文化。

他にもまだあるような気がする、と話してくれた。

料理人は、刺しさばの味わい方をたぶん意識していないから、旨味を重視する”迎え塩“処理をされるでしょう。

ちなみに参照したブログがある。

「迎え塩の意味・・和食の料理用語集」を拝見すれば、完全な塩抜きでなく、塩味を損なわないように”塩”だけを抜く処理のようだ。

その塩抜き、知人のAさんが届けてくれたコメントは「塩数の子は迎え塩しますね。なんせ、刺しさば初めてだったのですが、ひとかけらでご飯一杯食べられるので美味しくいただきました。水に浸けるとふにゃーってなりそうです」と。

そのコメント返した「酒なら有りですが、水浸けはさすがにやらんです」。

塩抜方法は専門的に伝えるブロガーさんや、こと細かに素人でもわかりやすく解説されるブロガーさんの記事も参考になる。

(R3. 7.30 SB805SH撮影)
(R3. 8.22、23 追記)

名張市谷出・永橋商店刺しさば代わりの塩辛いトビウオ

2023年09月22日 07時33分53秒 | 民俗あれこれ(売る編)
昨年末の11月、12月は、三重県名張に出かけて刺しさば調査の聞き取り。

出会った井出住民のNさんの話によれば、刺しさばは奈良県。

峠を越えた名張ではサバでなく、トビウオだ、という。

奈良の山添村で聞いた盆はトビウオ。

地域の一つに遅瀬がある。

平成23年9月17日に行われた中南寺の観音講の営み

集まったご婦人たちが「盆のときはトビウオを食べていた。ドロイモの葉に乗せたトビウオ。それは開きの干物で2尾を重ねていた。下は生の干物で、上に焼いたトビウオを乗せていた。食べるのは子どものころだったが、塩辛い味だったことを覚えている」と、話してくれた。

平成2年11月、奈良県月ヶ瀬村が発刊した『月ケ瀬村史』に、「墓参は8月14日。その日に、両親が揃うてる家はトビウオの干物を食べる。このトビウオは婚家から里方へ中元として贈るもので、焼いて里芋の葉にのせ、両手でいただく」と、あった。

一方、三重県名張市井出に生まれ育ったNさんが、地区の年中行事を整備、纏めた史料に「8月14日、夕方に墓参。両親の揃っている家の子どもたちは、夕食に飛び魚を食べる」と、記録していた。

昭和43年12月、名張民俗研究会が調査、編纂した『名張の民俗』に、興味深い「サバすえ(鯖据え)」記述があった。

「7月上旬、サバすえ(鯖据え)と、いって里方から塩サバに白餅米をそえて貰い方に贈った」とある。

山添村の北野津越、大矢商店のことばブログに遺していた。

さて、三重県の調査である。

Nさんが、教えてくださった三重県名張市・安部田谷出の永橋商店。

実は、所在地は知っていた。

令和2年11月2日、安部田で行われているイノコモチ行事の調査に伺った際に、見つけていた谷出の永橋商店。

井出住民、Nさんから聞いた塩辛いトビウオを教えていただければ、と・・・

不在だった店主に替わってお話ししてくださった女将さん。

店主は、ほぼ毎日の仕入れに大阪・鶴橋市場に出かける。

店主が運転する商用移動販売車は、近鉄大阪線赤目口駅の指定駐車場入り。

電車一本、乗り換えなく着いた近鉄鶴橋駅。

市場内にある中谷商店が仕入れ先。

戻ってきたら、一部はお店の棚に。



残りは、お店に来るのが難しいご近所の常連さんに販売するいわゆる行商的移動販売に移った。

2、3人の高齢者求めるトビウオを売っていたが、今はその希望もないから、仕入れはやめたそうだ。

なんなら、これまで買ってくれたお客さんに、今年はいかがですかと声をかけてあげようか、といわれてが、そこまではしたくない。

昔は冷蔵庫がなかったから、塩干もののトビウオだった。

塩辛いからメシのお供。

塩漬けの鮭も好む人がいるからヒダラも売っていたが・・・。

2枚で1組のトビウオ。

この付近でいえば、奈良県になるが、榛原から室生路の大野辺りまでトビウオ需要はあったようだが・・。

地区谷出は34軒。

地区以外のお客さんもあるが、注文、購買は増えることのない暮らし。

ここら錦生(にしきう)地域に、魚屋さんは3軒もあった。

当時は、居住者も多かったからトビウオの需要もあったが・・。

塩辛いトビウオは、盆に供えることなく、盆に食べるだけ。

若いもんは、わざわざ買ってまでして食べることはない。

味覚が替わったということだ。

うち以外に、赤目口から赤目の滝に向かって走った左側に西川商店がある。

また、本町にいしかわ魚屋がある。

そこならあるかもしれない、と女将さんが教えてくださったが、そこはどこに・・。

立地はジャスコの近く。

大きな鳥居からすぐ近くにある、蕎麦屋に文房具屋、散髪屋さんらが並ぶ通りに行けばわかるから、と教えてもらって再出発した。

(R3. 7.30 SB805SH撮影)