世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

小さな朝

2019-01-28 04:15:44 | 青空の神話


フィリップ・オットー・ルンゲ

夜がすべてを支配し、まことの魂をすべて怠惰の中に飲み込んでしまうかと思う頃、真珠のようなただひとかけらの愛が、わたしはわたしだと言った。そこから夜明けが始まり、真珠は新たな嬰児をこの世に産んだ。



覚えておられる方もいるでしょう。この絵はかのじょが、例の日記の表紙として採用した絵です。夜明けの太陽の中にヴィーナスのような女性像が現れ、その足元には玉のような嬰児が描かれている。何かのインスピレーションを受けたのでこれを使ったのでしょう。その日記はタイトルを変えられて人類世界に広がっている。そして暗がりにひずんだ人の心をひっくり返し続けている。まさに、ひとりで千万人の子を産むような仕事を、かのじょはしたのです。
あの日記は、世界中の馬鹿にすべてを否定された人間の、玉を砕くような叫びでした。わたしは、美しいのだと。すばらしいのだと。どんな暴虐の嵐の中でも折れはしない。わたしこそが真実なのだと。
新しい神話は、ここから始まっていくのです。






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アダムを創造するエロヒム

2019-01-27 04:18:45 | 青空の神話


ウィリアム・ブレイク

神は世界を創造したあと、土の塵を使って、神に似せた形をつくり、それに息を吹き込んで命を与え、最初の人間、アダムを作ったという。



神もアダムも実に苦しそうな顔をしている。それはこの創造が人類の破壊的未来を悲観していたからではなく、人類の創造というものが、勇猛を必要とする偉大な冒険だったからです。神は、偉大なる自分の存在をかけた冒険を、アダムの創造のためにしてくださったのだ。人間はまだそんなことは何も知らない。膨大な愛の真実がなければ、人類の創造などできはしない。
すべては、ここから始まった。人類の迷いも、墜落も、上昇も、悲哀も、歓喜も、すべては神が初めてくださったのだ。神が、自分を産むために、何をしてくださったのか。なんのために産んだのか。それを知るために、人間は永遠を生きていくのです。





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最後の審判

2019-01-26 04:11:54 | 青空の神話


マールテン・デ・フォス


世界の終りに、イエス・キリストが再臨し、すべての死者がよみがえり、人々の魂を生前の行いによって、天国に行くものと、地獄に落ちるものに、分けるという。



わたしたちがいつも言っているように、ここでかのじょと呼んでいる最後に残った天使は、この考え方が嫌いでした。すべての人類を愛していたから、天国と地獄に無情に分けることができなかったのです。人類史の大区切りと言えるこの時代に、降りてきたのはイエスではなくこの人だったというのがおもしろいでしょう。予言などあてにならない。実質、運命というものは、生きてみなければわからないのです。しかしすべての人間を天国に導きたいと願う救済者はあっけなく死んだ。そしてその後ろから、イエスよりも厳しい審判の天使が出てくる。
そして本当に、人類は天国と地獄に分けられるのです。





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フォルトゥーナ

2019-01-25 04:11:12 | 青空の神話


ピエール・ブイヨン


幸運の女神。幸運は後方からではつかめないということから、フォルトゥーナには後ろ髪がないとされるが、最近ではすべての髪を前で結っているかたちに描かれる。幸運をつかむには、フォルトゥーナの前に回り、その顔を見ながら前髪をつかまねばならないという。



愛する女性の心を得るには、後ろから見ているだけでは何もならないということでしょう。前髪をつかむには正面からその顔を見ねばならない。このことに必要な勇気はかなり大きい。美しいフォルトゥーナの前髪に触れるには、満身を見られ、その力量の全てを見抜かれても微動だにしない自分が必要だ。小さな自分を恥じているような男では弾き飛ばされてしまうだろう。恥をかきたくない馬鹿な男は、後方からばかりよっていく。そして、フォルトゥーナの後ろ頭にも触れられず、幸運に逃げられるのです。





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聖フランチェスカ・ロマーナ

2019-01-24 04:11:37 | 青空の神話


オラツィオ・ジェンティレスキ


14世紀にローマの貴族の家に生まれたフランチェスカは、修道女として信仰に生きることを望んだが、両親の望みによってある軍人の元に嫁ぎ、六人の子をなしてよき家庭を築いた。夫に尽くし子に愛を注ぎながら、慈善に尽くし、貧者や病者のために働いた。国が乱れ、夫と息子が敵の捕虜となり、貧しさに落ちても心迷わず、献身的に世のために尽くした。そして夫には最後まで妻として寄り添い、夫が亡くなってからある修道院の門をたたき、修道女としてこの世を去ったという。フランチェスカ・ロマーナのそばにはいつも守護天使が描かれている。彼女にはいつも、足元を照らしてくれる守護天使の姿が見えていたという。



やさしげな女性だ。幼子イエスに注ぐ優しいまなざしが美しい。フランチェスカ・ロマーナは実在しました。宗教的プロパガンダによって多少ゆがめられて入るようだが、彼女が生涯家庭と世間のために尽力したのは本当のようです。このころには、模範的に生きる女性の存在が許されていたのです。後に、こういう女性はあらゆる凡庸の人に嫉妬されて、いじめられるようになる。清らかに生きる女性がひとりでもいれば、馬鹿なことばかりする人間の正体がばれていやなことになると思った人々が、こういう人を目の色を変えて攻撃するようになる。こんなものはみな嘘だと。ぺてんだと。人間はみんな馬鹿なのだと。だが、本当は、こんな女性はたくさんいるのです。





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アトラス

2019-01-23 04:11:27 | 青空の神話


ジョン・シンガー・サージェント


ティターンとゼウスたちの戦いの中で勇猛に戦ったティターン神族のアトラスは、ゼウスに敗れた後、とびきり思い罰を科せられた。彼は世界の西の果てに立ち、永遠に天空を背負わねばならなくなった。この苦行はアトラスを激しく苦しめた。一度だけ、姦計を弄してヘラクレスに天空を支えさせたが、それもすぐにヘラクレスに見抜かれて、再び背負わされた。彼のこの苦しみは、ペルセウスがヘスペリデスの園を訪れ、彼にメデューサの首を見せた時に終わったという。彼は石となり、もう二度と苦しむことはなかった。



天空は支えがなくとも落ちては来ないものですが、しかし天空を支えるがごときことをして、この世界を支えてくれている存在はたくさんいます。人間がいくら馬鹿なことをしても、地球環境が目立って大変なことにならないのはそのせいなのです。人間が誰も知らないところで、神はすばらしいことをしてくださっている。ただ愛のみを理由として。人間はいつかこの愛に応えねばいけません。





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ディアナとアクタイオン

2019-01-22 04:11:22 | 青空の神話


ヤン・ブリューゲルとヤーコブ・デ・バッケル


キタイロンで狩りをしていたディアナは、そこで泉を見つけてお供と一緒に衣を脱いで水浴びをしていた。そこを同じく狩りをしていたアクタイオンが通りかかり、木陰から女神の裸体を覗いた。それに気づいたディアナは怒りのあまりアクタイオンを鹿に変え、彼の連れていた猟犬たちに襲わせて殺させた。



女性の裸を裏からのぞくようなことはいけないことですよ。決してしてはなりません。女性が嫌がりますし、男にとってもよくない。女性を侮って馬鹿にしだすからです。愛を誓わなければやすやすと裸体を見せてくれない女も、ずるいことをすれば簡単に思い通りにできると、思い込むからです。そんなことばかりしていれば、男はずるばかりにふけって何もいいことはしなくなる。そしてとんでもない愚か者になるのです。





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フローラ

2019-01-21 04:11:41 | 青空の神話


ルカ・ジョルダーノ

花の女神フローラはユノに、触れば子供を身ごもる不思議な花を教えた。それによってユノは身ごもり、軍神マルスを産んだという。



処女懐胎というか、女性が男性の協力を得ずに子供を生むことは、理屈では可能です。ですが、やるべきではありません。生まれる子供が苦しむからです。一体自分は何の子なのかと。両親の愛によって生まれた子でなければ、子供は自分の存在意義を大きく崩される。それによって痛いことになる子供も多いのです。





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ガニュメデス

2019-01-20 04:12:34 | 青空の神話


ベニグネ・ギャグネロー

トロイアの王子ガニュメデスの美を愛したゼウスは、鷲に化身し、彼をさらってオリュンポスにつれてきた。そこで神々に神酒ネクタールを注ぐ給仕役にしたという。



古代ギリシアの人間たちは、神にも似るかと思うほどの美を与えられていました。それほど美しくない人はほとんどいなかった。それゆえに、その美でかなり奔放なこともしていました。年端のいかない少年を性的対象とする男も相当にいたのです。時にはこうして堂々と美少年をさらっていく男もいた。幼児誘拐の原型です。馬鹿な人たちは、いつもこうして、力の弱い幼い人たちを性的対象にし、犠牲にしてきたのです。ガニュメデスはオリュンポスなどにいない。おそらくどこかにそのまま捨てられてしまったのでしょう。





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復活

2019-01-19 04:11:57 | 青空の神話


ヘーラルト・セーゲルス


婦人たちは、安息日のおきてに従って休んだ。そして、週の初めの日の明け方早く、準備しておいた香料を持って墓に行った。見ると、石が墓のわきに転がしてあり、中に入っても、主イエスの遺体が見当たらなかった。そのために途方に暮れていると、輝く衣を着た二人の人がそばに現れた。婦人たちが恐れて地に顔を伏せると、二人は言った。「なぜ、生きておられる方を死者の中に捜すのか」

(ルカによる福音書)



キリストの復活の神話は、子供の甘えのような嘘です。大切な人を殺してしまった罪から、簡単に逃げたいと思う人間の、甘い夢です。実際はもちろん、イエスは復活などしませんでした。死体は辱められたあとに墓に納められ、そのまま朽ちていったのです。霊魂はその故郷に帰り、地上にはかえってこなかった。人間の肉体は、一度死に染まれば生き返ることはありません。しかし人間の魂は時にその喪失と罪への脅えに耐えきれず、こういう夢を描いてしまうのです。あの人は本当は死ななかったのではないかと。或いは、死からもよみがえることができるほど、すばらしい人なのではないかと。こうして、イエスを神に押し上げる神話が作られていったのです。





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