世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

諸国物語

2008-12-31 08:30:45 | わたしの本棚

チェーホフ、他
ポプラ社 2008年

大みそかです。とうとう今年も終わりですね。大変な年末でしたが、皆さんはどうお過ごしでしょうか。私も今年は大変な年でした。なんとかがんばりましたが。

大晦日にまた本の紹介というのもなんですが、ほかにとくに思いつかなかったので。これは、今年の春ごろだったか、書店で一目ぼれして買った本です。
チェーホフの「かけ」から、ツルゲーネフの「片恋」まで、世界中の名作をこの一冊に凝縮してあるという感じの本です。帯には、「全一冊で読む、世界の文学」と、書いてあります。

筆者の名前だけでも並べてみますと、チェーホフ、ワイルド、シュニッツラー、トルストイ、ホフマン、ネルヴァル、ツヴァイク、シュティフター、ストリンドベルヒ、、云々かんぬんと、この本も、入院中の時間をつぶすのをずいぶんと助けてくれました。あまりに厚い本なので、逆に、こんなことでもなきゃ読破できないということもいえます。大変面白かったです。

人間たちが一体、どんなことを考え、何をしようとしてきたのか。苦悩多い頭脳の中で何を悩んできたのか。馬鹿なことや頓狂なことや、ありえないことなどを経験しつつ、何を表現しようとしてきたか。

これを機に、どれかの作家にのめりこんでいく人なんかも出るのではないのかな。中には、まるで、どこかの芸人がやりそうな、不条理コントみたいな作品もありましたよ。これが書かれた当時はともかく、今やったら、まさにそんな感じですね。時代は変わっても、人間の中にある、もやもやしたあせり、形にならない叫びをなんとかして表現しようともがいている魂の活動は変わらないのかもしれない。そんなことを考えました。

人間は馬鹿ではありません。悩んだり落ち込んだり馬鹿をやったりのたうち苦しみながらも、ちゃんと考えている。そして、何かを探そうとしている。何かを。人間たちが何を求めていたのか。何に苦しんでいたのか。それを気取ることなくそれなりにまっすぐに見据えようとしてきたものが、この時代(19世紀)ごろにはまだあったのでしょう。

現代文学ではどうなのかな。最近の純文学はなんだか頭がねじれそうで、ほとんど読んでいないのです。

それはそうと、ポプラ社さんはいい仕事をなさいますね。装丁の美しさと言い厚さと言い重さといい、宝物みたいな本です。本には、ある種、風格がなくてはね。本棚に並べてると、そこだけだれか違う人がいるみたいですよ。まあ、あなたはだれ?なんて声をかけてしまいそうな美人だ。タイトルもいい。

まるで、現代のジャータカという感じです。





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ガンバとカワウソの冒険

2008-12-30 09:27:32 | わたしの本棚

ガンバとカワウソの冒険
斎藤惇夫作 薮内正幸画 岩波書店 1982年

入院中を慰めてくれた本のひとつです。少し前に古書店で見つけて買い求めたものですが、病室で読んでいるうちに、あ、これまえに読んだことがあるわと、粗忽にきづきました。それでも、ほとんど斜め読みに近いけれど、一応最後まで読破しましたよ。新刊の切れそうなページをめくるのもいいけれど、ふちの黄ばんだ古い本をめくるのにも、何だか趣があって、そういうのを楽しんでいました。

いつだったかな、わかいころ、C.S.ルイスだとかJ.R.R.トールキンだとか、ミヒャエル・エンデだとか、ファンタジーの有名どころを次々と図書館で借りて読んでいたときに、確かこれも読んでいた、という記憶がうっすらとあります。入院中半分くらい来たところで、ラストシーンが浮かんできて、さあこのまま読もうかどうかと迷いました。

確かこの作品は、アニメ映画にもなっているんじゃないかと思います。ビデオ屋さんで見かけたことがあるような気がするので。ストーリー仕立ても、どこか漫画チックで、不良少年ぽい話し方をして極度に擬人化されたネズミたちの話と薮内正幸さんのリアルな絵の組み合わせが、いかにもおもしろいという感じでした。

愛、を、だれかのために素直に表現できないネズミたちが、不良少年のように斜めに構えて気取ったスタンスをつくりながら、カワウソたちのために行動する。その姿は愛以外のなにものでもないのに、最後まで、だれもそれを愛とは言わない。言えない。

なぜだろう。なぜ、正直に、愛を、愛と言えないのだろう。ネズミたちはほろびに瀕している(いや現在は実際に絶滅しているらしい)カワウソたちが、仲間を探すのを助けて、いっしょに長い旅をするのですが、その旅をするということを、自らのかっこつけのためだとか、冒険がしたいからとか、ぷいと、横を向いていうだけ。カワウソたちのためにやってあげたいからだとは言わない。でも実際、正直な気持ちは、ほとんどそうのはず。

物語としては、敵役の野犬がどうしてカワウソを狙うのか、そこらへんが説明不足だし、少し不満は残るのですが、最後のドラマチックな演出は、日本人らしいなという感じがしました。

わたしは、斜めに構えてかっこをつけて、愛なんて知らないよ、なんていうのは、もうはやらないような気がします。かっこをつけて、愛に虚勢を張る時代は終わってほしい。

「けっ、おれはやだね」
なんていいながら、かげでいいことをしてる、ていう不良少年のいい子、いわゆるつっぱりというのですか。もうあまり好きではありません。でも、この本が出版されていた時代には、それしかできなかったんでしょうね。とくに、男の子には。

愛しているのなら、愛していると真っ正直に言えるのがいい。ほんとうにそんな時代がくればいい。そうなったら、きっと、こんなにも、嘘かほんとかまるでわからないような情報がお化けのように世界を飛び回っている世界は終わるに違いない。

古い本の黄ばんだページをめくりながら、なんだかそんなことを思いました。







コメント (2)
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怒りの天使

2008-12-29 10:12:14 | 画集・ウェヌスたちよ

少しは落ち着いてきたでしょうか。精神の不安定さは隠せませんね。

苦しい状況を乗り越えるためにやってきたことが、すべて聞かない状況というのに落ち込んで、基本に帰り、家事をやっています。

朝から食事を作り、ゴミを片付けたら階段のほこりをはき、こたつの部屋を片付け、台所を掃き、食器を洗い。

絵を描くのも詩を書くのも歌を詠むのも、今は小休止です。魂の活動を、活性化させようとすると、苦しいので、ただただ、平凡に普通にできることをやっています。そうするといろいろ、それまで気付かなかったことにも気付きます。

毎日毎日階段を掃いても、翌日には同じ大きさの埃の塊がとれるんですよ。これはけっこうおもしろい。なんでかな。まるで不思議な創造みたいなんですよ。一見とてもきれいな階段なのに、上から下まではくと、子ネズミ程度の小さなほこりの塊ができるのです。おもしろいなあ。いったいきみは、どこから生まれてきたの?なんて呼びかけてしまいそうだ。さても。

家事べたの私ですので、それはそれは、この家すべてを完璧になんて無理でしょうが、気がついたところからおもしろいことをやってみましょう。

いずれまた絵を描ける日が来るときがくるでしょう。
詩も書けるでしょう。やりたいことは、見えない袋の中に隠してそっとわからないようにしてあるのですが、さて、それらのうちのどれができるかな。やりたいという方向が少しきまってきつつあります。

無理してでも行きたかった方向に見えない壁があることに気づいて。あれはやってもいいけど、やっては苦しいことなんだな、てことがわかるようになってきた。

それはともかくとして、やりたいことはやりたいこと。

やれるときがくるように。今は少し療養中です。

あ、ところで画像は、今のとこ、わたしの最新作です。ずいぶん前ですけどね。タイトルは、「怒りの天使」です。怒ってる顔に見えるでしょう。これはわたしより、仮の主座に近い作品ですね。わたしには、こんな顔描くの、ちょっと難しい。

荒くて単純すぎる線が、ちょっと怖い。息をつめて、真剣に線をなぞりたくても、指がそれを無視しようとするんです。こんなふうに単純すぎる作品は、もうこれから描けないかもしれないなあ。でも迫力。

こんなふうに書くと、まるで自分の作品じゃないみたいですね。









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今少し

2008-12-28 09:32:49 | 珈琲の海
本調子でなく、あまり書くことがありません。

今までは、この状況をどうやって乗り越えるかということで、必死でやってきてたのですが、それがどこかぷつんときれたようで、今は家族に大方をたよっている状態です。

廊下や階段の掃除をしたり、ご飯をたいたり、簡単な家事をしつつ、疲れたらよこになるという状態です。

詩や絵もスランプの状態かな。書いてある下書きはあるんですが、今一つ気に入らない。というより、どこかからどこかへいくための過渡期で何かを見失っているんでしょう。今は静かに、家事でもしようっと。

夫も子供もみなやさしいし。

写真も調子が出ないんですが、ないとさみしいので、ひとつつけますね。

これはうどん屋さんの前に咲いていたピンクのサルビアです。冬でも美しく咲いていました。




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おひさしぶりです

2008-12-27 10:59:50 | 珈琲の海
みなさん、お元気ですか。長いご無沙汰、すみませんでした。

ながいこと書けませんでした。ご心配の向きもあったかと思いますが、大半の方はわかっていたかなあ。実は緊急入院していました。今は、状態もあんていし、一時帰宅中です。そろそろ退院てところです。

一応療養中というところなので、今は長い文を書く気力がわいてきません。なので、短い挨拶でごめんなさいね。

突然の休止、すみませんでした。これからもときどき、そのときそのときの思いを書いていきたいです。

休止前は、ほとんと暴走状態でしたからね。いつかはこうなるとはわかっていたものの。入院生活はかなりつらかったですよ。読書や日記書きでなんとかしてたけど、自己表現ができない。

これから少しずつ、あせることなく、直していきたいと思います。

冬枯れの季節、最近急に寒くなりましたね。お風邪など召しませんように。
では。



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