世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

9月の終わり

2013-09-30 05:10:39 | 花や木
オオマツヨイグサ


カマキリ


クコ


センニンソウ


チャバネセセリ


ツユクサ


ニラ


ヒマワリ


ヘクソカズラとセンダン


ヤマトシジミ


ヤマトシジミ


フヨウ


カタバミ


キンミズヒキ


クズ


ヤマトシジミ


ヒメアカタテハ


ルコウソウ



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これは わたし

2013-09-29 04:43:36 | 月夜の考古学・本館

これは わたし
わたしは さかなです
うみを ひらひら およぎます




これは わたし
わたしは かめです
ゆっくり ゆっくり
あるきます




これは わたし
わたしは とかげです
くさの はかげを
ちょろちょろ あるきます




これは わたし
わたしは かえるです
のいちごの したを
ぴょんぴょん はねます




これは わたし
わたしは ことりです
あおい そらを とんでいきます
そらと 木が すきです




これは わたし
わたしは ねこです
まるまって ねむるのが すきです




これは わたし
わたしは 木です
まっすぐに たっていることが すきです




これは わたし
わたしは にんげんです
わたしは ときどき
せんせいに おこられます
そんな わたしが
ときどき きらいです




これは わたし
わたしは 山です
わたしは わたしが
山で あることを
ずっと かんがえています




みんな わたし
たったひとりの わたし
わたしが いっぱい
ひとりじゃ ないよ
ともだちは いっぱい 
みんな わたし




これは わたし
わたしは 月です
よぞらに ひかって
みなを しずかに
てらします





(2008年、入院中のノートの走り書きより。絵本のアイデア。
 絵は、山以外は、こものの部屋のカードシリーズを採用した。)





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嘘をついた神様

2013-09-28 04:31:27 | 月夜の考古学・本館

 昔、ある所に、かろてなの原という、とても美しい国がありました。
 そこに住む人々は、みな穏やかで優しく、土地を守る優しい鎮守の神を、とても大事に、敬っておりました。かろてなの原を守れる神様は、カロマと、フツという名の、二柱の神様でありました。
 フツの神様は、真珠の柱のように美しくたくましい、青年の神でありました。知恵深く、力あり、かろてなの人々には特に篤く慕われておりました。
 しかしカロマの神様は、フツの神様の母神様でありましたが、とてもそうとは思えないほど醜いご様子をなさっておりました。全身を猿のような毛で覆われ、顔は齢を重ねすぎてひしゃげてしまった亀のように平たくしわくちゃで、手足は黒く枯れ枝のようでした。そしていつも、垢まみれの衣をずるずるとひきずりながら、珍妙な歌を歌いつつ、山河をはいつくばるように歩き回っているのでした。
 だからフツの神様は、カロマの神様をとても嫌っておりました。実の母とは言え、かくも醜く、知恵もそう高くなく、することと言えば、毎日国中を意味もなく歩き回って、森の中に迷い込んだ人を驚かしたり、遊んでいる子供たちの中にいつの間にかまじりこんで、親たちから菓子をせしめたりするだけなのです。この神が、自分といっしょにこの国を治めているのだということが、フツの神様には、何とも合点がゆかぬことなのでした。
「実質的な仕事は、すべてわたしがやっているというのに、この方がここにいることに、何か意味があるというのだろうか? 天の大神様は何を考えておられるのだろう?」
 フツの神様は疑問に思い、一度カロマの神様に、尋ねてみられました。
「母上様、あなたは、この国で、いったい何をなさっていくおつもりですか?」
 するとカロマの神様は、もじゃもじゃの髪の毛の間から、いかにも哀れをそそる瞳で、フツの神様をじっとごらんになり、しゃがれ声でおっしゃいました。
「わたしはおまえの母だから、おまえのためにここにいたいのだ」
「わたしももう一人前ですから、一人でやってゆけますよ」
「でもおまえ、わたしはおまえの根であるから。おまえを支えてやりたいのだ」
「種はいつしか古い根を離れるものです」
「でも、わたしはここにいたいのだよ。おまえが病んだ時、すぐに手当てが間に合うように」
「わたしはこのとおり健康で美しいのです。ご心配なさらずとも、大丈夫ですよ」
「でもおまえ……」
 カロマの神様が、なおも食い下がろうとするので、フツの神様はがまんがならずに、とうとう言ってしまわれました。
「実は先程、天の大神様からお達しがあったのです。かろてなの原は、これからフツのみが治めるようにと」
 すると、カロマの神様は、瞬間、哀愁のたまった目をありありと広げられ、何かをいいたげに口を開きかけました。しかし何もおっしゃることなく、そのかわりに悲しげなため息をつかれました。そして、のろのろときびすを返すと、そのまま、とぼとぼとどこかへ去ってゆかれました。
「やれやれ、これでさっぱりした。これからこの国は、わたしの理想通りに、豊かに美しく成ってゆくことだろう」
 カロマの神様のお姿が、山の向こうに消えてしまうと、フツの神様、安心したようにひとりごちました。そして、ご自分のお住まいである、かろてなの神殿へと帰るられました。
 しかし、神様が神殿の御座の前に来られると、なんとそこには、すでに他の神様が座っておられました。フツの神様は驚いて、思わず「あなたはだれだ」とおっしゃいました。すると相手はニヤリと笑ってこう答えました。
「わたしはフツの神である」
「何をいう。フツはわたしだ。おまえはだれだ。嘘を言うのは、神ではないぞ」
「おまえは嘘を言ったではないか」
 相手は、平然と、言いました。フツの神様は、はっと、言葉を飲みました。確かに、カロマの神を追いはらわんと、大神さまの名を語ってまで言ったことは、すべて嘘だったのです。相手は御座にふんぞりかえりながら、あざ笑うように言いました。
「……知らなかったのか。神が嘘を言えば、嘘が神になるのだ。わたしはおまえの言った嘘であり、今やおまえ自身でもあるのだ。そしておまえは抜け殻。もはや神でもなんでもなく、何の力もなく、ただ消えゆくしかない夢の影なのだ」
 フツの神様は、震えながら、嘘の神を見上げました。確かに、その神様は、姿も声も、フツの神様と瓜二つでありました。ただ向背を満たす光ばかりが、妙にぎらぎらとしてあやしく、そのほほ笑みは優しげにも見えましたが、瞳の中には温みと偽った冷気が、近寄るものを傷つけようと待ち構える氷の刃のように、冷厳と居座っているのでした。嘘の神はゆっくりと立ち上がると、言い放ちました。
「これからはわたしがフツの神である。おまえは永遠にそこに座っているがよい」
 するとフツの神様は、空気を抜かれるように見る間にしぼみ、神殿の隅の石壁に、染みのようにはりついてしまいました。
「ばかなやつめ」
 嘘の神は、壁の染みとなったフツの神を指さし、長々とあざ笑いました。フツの神は何とか抗おうとしましたが、もう動こうにも動けませんでした。
 さて、それからというもの、嘘の神はフツの神を名乗り、したい放題のことをしました。
「欲しいものは他人から奪え」
「女子と子供は卑しいから、いらなくなれば捨てればよい」
「他の国の者は蛮族であるから、殺してもかまわない。これらは神のお告げである」
 彼は人間に、次々と嘘を吹き込みました。人間は、最初のうちは首をかしげていましたが、ほかならぬ神様のおっしゃることであるからと、最初は戸惑いながら、後はおおいに喜んで言うとおりの行いをしました。もちろん中には神に疑問をたてる人間もいましたが、そういう人間は、嘘の神が殺したり、追放したりして、ノミをつぶすようにていねいに除いていきました。そうして、美しく穏やかであったかろてなの人々は、次第にその質を、凶暴で、冷酷なものとしてゆき、他国の人々から人面の獣とまでさげすまれるほどになってゆきました。嘘の神の嘘は、際限を知らずに大きくなってゆき、やがて自分は世界を作った最も偉大なる神であるとまでいうようになっていきました。そして人々は、嘘の神の言葉だとも知らず、その言葉を信じ、ますます魔の境涯に深く沈んで行き、世界に嘘と悲しみを広げてゆくのでした。
「なんということだろう。……ああ、どうすればいいのだ……」
 神殿の廃墟の隅にはいつくばりながら、フツの神様には、ただ悲しむことしかできませんでした。フツの神様は、何とかして、人々に正しいことを教えようとしたのですが、その声はだれの耳にも届きませんでした。嘘を口にしてからというもの、フツの神のその声は細く力なく、人間たちの耳はそれをとらえることができないのです。自分が何げなく口にした嘘が、このような結果を招こうとは……。フツの神には悔んでも悔やみきれず、ただ神殿の隅で毎日のように魂も溶けんばかりに泣き暮らすばかりでした。
「ああ、これも、母を追い出そうとした報いに違いない。母上、ばかな息子をお許しください。かなうことなら、もう一度お会いしたい。そしてこの重い悔いを伝えたい……」
 フツの神は涙ながらにおっしゃいました。すると、そのとき、みょうに目の前が明るくなりました。フツの神様が顔をお上げになると、そこには、白い衣を纏われた、ふくよかで春の花のようにお美しい女神様が、立っておられたのです。お顔のまわりには虹のように穏やかな光が満ち、全てを知っているような静かな微笑みがお口元に宿っておられます。見たことのない女神様でありましたが、そのフツの神様を見つめる優しい瞳を見て、フツの神様には一目でお分かりになりました。
「ああ母上……帰って来てくださったのですね」
 フツの神はひざまずくと、今までの自分の過ちをすべて告白され、深いざんげのお気持ちを告げられました。
「すべてはわたしがいけないのです。わたしの言った小さな嘘が、こんなにまで人々に苦しみと過ちをもたらしてしまうとは……」
 すると女神さまは、やさいくおっしゃいました。
「今からでも間に合いましょう。さあ、いっしょにおいでなさい」
「どこへ?」
 怒りを覚悟していたフツの神は、その優しいお言葉がにわかに信じられず、思わず顔をあげられました。
「魔の国へ赴いた人間たちを、追いかけるのです」 
「しかし、一度ついた嘘は、取り返しはつきません。それに彼らはもうはるか遠くに行ってしまいました」
「わたくしは、足はのろのろとしておりますが、大事なことに遅れたことは一度もないのです。ほら、こうして、おまえを手当てすることにも、間に合ったでしょう」
 女神はそうおっしゃると、フツの神様のこうべをやさしくなでられました。すると、フツの神のお体が、はりついていた壁からすっと外れました。しかしまだ、歩くことはできません。女神はフツの神を背負われますと、昔と変わらぬのろのろとした足取りで歩きだしました。
「さあいきましょう。わたくしたちは神。決して人々を、あきらめてはなりません」
「母上……」
 カロマの神の暖かな背中の上で、フツの神は赤子のように涙を流されました。そして母神様のお気持ちも、天の大神様のお気持ちも、全てがわかったように思われました。
「あきらめては、なりません……」
 そうして、フツの神と、カロマの神は、遠く離れてしまったかろてなの人々を追いかけて、今も歩いているのです。この世の終わりになる前に、もう一度めぐり会い、過ちをとりかえすために。
 今も、黙々と、人々を追いかけているのです。

(おわり)



(2001年7月発行、同人誌ちこり22号所収)





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神の空

2013-09-27 04:17:50 | 空よ












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マグダラのマリア

2013-09-26 05:09:38 | 画集・エデンの小鳥
マグダラのマリア
2013年




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月の世の物語・精霊編 6

2013-09-25 03:13:34 | 薔薇のオルゴール

旅の終着点は、深山の奥にある、記憶の花と言う、永遠に咲く花のあるところである。

アルタンタスに来た小精霊は、だれも、一度はこの花のところに来て、自分が存在することの意味を尋ねねばならない。花は、小精霊に、これからの自分の運命を導く、大変大切なことを教えてくれるという。

エルナスがそれを聞いた時、花はなんと、いたずらはやめなさい、と言ったそうだ。その言葉通り、エルナスは、決まりを破ると言うことが使命のような、いたずらばかりした。先生を一番困らすやんちゃに育ち、果てはアルタンタスを脱走すると言うことまでやりとげた。たいした小精霊である。

何度か危機を乗り越えながら旅をつづけ、深山に上り、キオラックルは花を探した。だが、なかなか花に出会えない。エルナスやアリウスの教える通りの魔法をしても、花は現れてくれない。むなしく時間が過ぎた。

キオラックルは淋しくなった。自分はなぜこんなにもみんなと違うのか、その理由を花にたずねたいのに、花は現れてくれない。

彼は親役のブナの樹霊が持たせてくれた、お守りを持っていた。それはブナの枝を細工して作った、小さな人形だった。その人形に話しかければ、ブナの木のお父さんの声で、時々答えてくれるのだ。

ブナの木のおとうさんは、花将棋を応用した、召喚の儀式を教えてくれた。その教えのとおり、自分なりの工夫をして、心を込めた儀式をすると、ようやく花は現れてくれた。
それはなんと、岩のように大きな、青い菊だった。

エルナスやアリウスに聞いていた話とずいぶん違う。キオラックルは花に、自分はなぜ生まれたのかと、問うた。

花は答えた。

特別な、あまりに特別な、愛のために。

キオラックルは、意味がわからなかったので、もう一度、それはどういう意味ですかと尋ねた。

すると花は、やさしくも厳かな声で、答えた。

今は何も、知らない方がいい。


(おわり)




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月の世の物語・精霊編 5

2013-09-24 03:18:10 | 薔薇のオルゴール

キオラックルと仲間たちは旅を続ける。

途中、女性の精霊3人が棲む、透き通った池にたどりつき、キオラックルは女性というものを知る。
なお、キオラックルたち小精霊にはまだ、性別がない。ある程度大きくなってくると、女性になる精霊が決まってきて、男性になる精霊たちのコミュニティから離れていき、しばらく別に住むのである。

学校のフクロウの先生は男性であったから、キオラックルは女性を初めて見た。
キオラックルは大変驚いた。

女性はとても美しくて、たよりないほどに細くて、その歌の繊細なことと言ったら、先生よりもずっとおもしろかったからだ。
キオラックルは、女性を見て、自分も女性になりたいと言った。でも、女性の精霊たちは、キオラックルのもう一つの姿を見て、あなたはもしかしたら、一生性別を持たないかもしれないと言った。
キオラックルは驚いた。

一体自分は何者なのか。どうしてこんなにも、ほかの精霊たちと違うのか。
そもそも、自分は本当に精霊なのか。
もしかしたら、おとうさんのような、樹霊ではないのか。

このように、キオラックルは、その風変わりな故に、幼いころから、自分の存在というものに、つねに疑念を持つことになる。




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月の世の物語・精霊編 4

2013-09-23 03:11:17 | 薔薇のオルゴール

アルタンタス浮遊大陸に生まれてきた小精霊は、しばらく学校で基本的な精霊のルールを教えられると、数人の仲間とともに、大陸を旅する課題を与えられる。

キオラックルもその旅につく。エルナスや、世話焼きの小精霊アリウスとほか数人の仲間とともに、キオラックルは、アルタンタスのあちこちを巡る、冒険の旅に出る。

途中、空を飛ぶ小屋に住む、研究者に出会う。それは青年の段階を卒業し、役人試験のために勉強を積んでいる人だった。かなり若い人間の姿をしているが、けっこうきつい魔法を使う。風変わりな存在だ。月の世や日照界のお役所の役人になるには、20年に一度の役人試験に通らねばならない。だがこの研究者は、前回の試験において、精霊に関する経験の不足をつかれ、試験に落ちたらしい。それで彼は、精霊に関する経験をつむために、アルタンタスに飛ぶ小屋を作り住んでいるのである。

彼は、風変わりな小精霊キオラックルに大変興味を持ち、研究させてくれと言った。キオラックルはある程度協力するが、旅を進めねばならないので、すぐに別れていく。ただ研究者は、キオラックルにひどく興味を引かれて、彼を追いかける。

旅の間に、この研究者はしつこくキオラックルを追いかける。めんどうだなあと思いつつも、キオラックルはこの研究者になついていく。

この風変わりな小精霊には、風変わりな友人がつくらしい。

まだ幼いこの小精霊にとって、忘れられない大切なことを、研究者は教えてくれた。
君が君故に、君を愛すると言うことを。




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月の世の物語・精霊編 3

2013-09-22 03:14:44 | 薔薇のオルゴール

森の中でしばらくブナの樹霊と暮らしていたキオラックルを、よほど時間が経ってから、アルタンタスに住む、金色のフクロウの姿をした大きな精霊が気付いた。精霊は驚いた。もはや取り返しがつかないほど、キオラックルはブナの樹霊と心を結んでいたからである。

だが精霊はキオラックルを見捨てるわけにはいかない。彼はキオラックルを説得し、自分が開いている、小精霊たちの学校に導いていく。
そこで初めて、キオラックルは自分以外の小精霊と出会う。風変わりなキオラックルを、小精霊たちは驚きながらも、こころよく迎えた。

ここに、余編「虹」編に出て来た、黒猫の姿を取る小精霊が、エルナスと言う名前で登場する。彼はアルタンタス脱走と言う大罪を犯したがために、教室の後ろの方で、黒猫の姿に封じられ、鎖につながれていた。
エルナスはキオラックルに花将棋を教える。

キオラックルは、たいそう珍しい小精霊だった。生まれた時は、自分の別の姿を知らなかったが、先生役のフクロウの姿を取る精霊によって導かれ、自分のもう一つの姿を知った。それを見たみんなは驚いた。自然界のリズムを歌い自然界を導くことを使命とする精霊は、白蛇や熊や猿や鹿や鳥や魚類などの姿をとることが多い。だが、キオラックルはなんと、変身すると、月桂樹の若木になったのである。しかもその木は、歩こうと思えば歩くことができる。

こんな精霊はだれも見たことがない。
みなは驚いた。

キオラックルは、自分がまるでみんなと違うのだということを、このとき初めて知った。




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月の世の物語・精霊編 2

2013-09-21 05:14:34 | 薔薇のオルゴール

物語の主人公の名前を、かのじょは決めていた。キオラックルは、風変わりな小精霊である。

精霊は、最初、誕生界というところに生まれてくる。そのときは、人間と姿が変わらない。だが、高位の存在によって養育を受けている間に、姿が変わってくる。そしてその姿がある程度決まってくると、小精霊としてアルタンタス浮遊大陸や別の世界にある小精霊の養育地に連れて来られる。そのときになると、誕生界の記憶は、すべてなくなっている。

キオラックルは、アルタンタス浮遊大陸のある森の中で目を覚ました。もう自分の名前は知っていた。だが、自分がどこから来たのかは、皆目わからない。ただ、自分がずっとここにいるような気持ちはしていた。

森の中でぼんやりとしているうちに、キオラックルはすぐそばにいた大きなブナの大樹に心を開いた。それが原因で、この高貴なブナの樹霊が彼の親役になることになった。これは大変まれなことである。普通小精霊の親役になるのは、アルタンタスに住んでいる高位の精霊に限られる。樹霊が小精霊の親になるなど、あり得ない。だが、ブナの樹霊はそれを引き受けた。これが、キオラックルの運命を導いていく。





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