世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

2014年4月

2014-04-30 04:25:35 | 花や木
2014年4月の花や虫。
冒頭はオオキバナカタバミ。


サクラ


ツルニチニチソウ


ユキヤナギ


キュウリグサ


テントウムシ


アツミヒナゲシ


アフリカンデージー


ベニシジミ


ナガミヒナゲシ




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緑の薔薇

2014-04-29 06:06:06 | 画集・ウェヌスたちよ

緑の薔薇
2000年

ちこりの表紙から。後の緑色の薔薇のイメージがもうこの頃から出ている。

なお、かのじょはこの絵を描いている時、なんとなくジーザスをイメージしていた。
似ていないこともない。




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ママとユキ

2014-04-28 06:08:42 | 月夜の考古学・本館

 日曜日のデパートになんて、来るんじゃなかったと、ママは思った。
 五階のギャラリーでやってたお目当ての版画展は、イマイチ好みじゃなかったし、昼下がりのデパートは小ぎれいな格好をした人々にあふれていて、擦り切れたジーンズにセーター、ダサめのハーフコートという普段着姿のママは、なんだか町中に裸で出てしまったような居心地の悪さで、お尻のあたりがムズムズしてしまうのだ。
「ねえ、ユキったらまだなの? 早くしてよ」
 ママはユキの肩をつついた。ユキはさっきから目の前のおもちゃの山を夢中で吟味している。
「待ってよママ。ユキだってママにつきあったんだから、ママもユキにつきあってよね」
 幼稚園児のくせに、小生意気な理屈をスラスラ言う娘に、ママは天井を見あげて肩をすくめた。とっておきのウールのスーツをおしゃれに着こなしたお嬢さんが、今必死に選んでいるのは、例のたまご型電子ペットの新製品だ。去年大流行したこのおもちゃも、ブームがピークを過ぎた今では、エスカレーター前のワゴンの上に無造作に山積みされている。
「やっぱりピンクのにしようかなあ。でもピンクはリナちゃんが持ってたしぃ……。ねえママはどれがいいと思う?」
「どれだって中身は同じでしょ。ほら、その白いのにしなさい。白がきれいよ」
「でも……。あっ、ママ見て! モズラのがある!」
 ユキがいきなり大声を出して、他のとは少し形の違うたまごを取り上げた。何げなくそれを見たママは、思わず悲鳴をあげそうになった。何しろそのパッケージには、大きな蛾とイモ虫の絵が、でかでかと描かれてあったのだ。
「ちょっとやめてよ! ママはこの世で、イモ虫とナマコだけは絶対に許せないの! たとえおもちゃでも、イモ虫を育てるのなんてごめんよ!」
「モズラは怪獣よ。やさしいのよ。もう、いいじゃない。ママのじゃないんだからぁ」
 ユキは口をとがらせると、さっとママに背を向けた。ママはそんなユキのツムジを、憎たらしげににらんだ。でもほんとは、ユキみたいな娘がいることに、ママはちょっとした驚きと誇らしさも感じているのだ。ママが小さい頃は、こんなふうにてらいもなく、親にものを言える子じゃなかった。
 親子って不思議。昔は、どちらかと言えば一人でいるのが好きなママだったのに、ユキを産んでからというもの、そんな仮面がどっかに吹っ飛んでしまったかのようだ。ママは自分がこんなにおしゃべりだとは知らなかったし、たとえ相手が娘でも、だれかとこんな風にうちとけてしゃべれるなんて想像もしなかった。どうしてママみたいなネクラな美術オタクから、ユキみたいな子ができたんだろう。
「あれぇ? サトちゃんだ!」
 ユキがまた大きな声を出したので、物思いしていたママははっと我に戻った。
「なあに? だれって?」
「サトちゃん。あっちにいたの。もう見えなくなったけど」
 ユキが指さしたのは、通路の突き当たりの文具売り場の辺りで、四、五人の人の塊が見えるけれど、ママにはそれらしい人影は見えなかった。
「ほんと? ほんとにサトちゃんだった?」
「うん」
「でもサトちゃんは、遠いところに引っ越したんだよ。今頃ここらへんにいるはずはないんだけど……」
「でも似てたよ」
「きっと誰かと間違えたのよ。サトちゃんだったら、ユキに声をかけないはずないもの」
「そうかなあ」
「そうよ。きっとそうよ」
 ママは少し声を上ずらせながら、急いで言った。ママにとってサトちゃんの名前は、ちょっと心を落ち着かなくさせられる材料の一つなのだ。
       *
 帰りのバスの中で、ユキは買ってもらったピンクのたまごを満足そうにさすりながら、ママに言った。
「そう言えばサトちゃん、ユキにいつかこれ買ってくれるって言ってたんだ」
「これって……、そのたまごのおもちゃ?」
「うん。高いからいいって言ったんだけど」
 ママは、ちょっとすっぱいような、胸苦しいような気持ちが、むくむくとわいてきて、長いため息を一つついた。
 サトちゃんは、去年の夏休み頃まで、ユキと同じ幼稚園に通っていた女の子だ。活発で、度胸のある子で、いいところはいっぱいあるんだけど、正直な親の気持ちとしては、あんまり自分の娘と遊んで欲しくないと思う子の一人だった。
 なぜなら、ママは一度、サトちゃんがユキと他に二~三人の子を従えて、小さな子犬の首に紐をかけていじめている所に出くわしたことがあるのだ。びっくりしたママは、あわてて止めに入ったけど、サトちゃんは大人の姿を見たとたん他の子を置き去りにして、まるでネコのように自分だけすばやく逃げてしまった。子供はみんな天使だという幻想を、まだ捨て切れずにいたママは、あっけにとられた。
 後でユキたちに聞いたところによると、最初に犬の首に紐をかけたのは、サトちゃんだったということだ。ママは犬いじめに加担したユキを厳しく叱りながらも、自分だけ逃げるというサトちゃんの、年に似合わぬ小賢しさが気になった。
 家も近いし、年も同じだから、サトちゃんはよくユキの家にも遊びに来た。近所づきあいの手前、ママは表面上はにこやかにサトちゃんを迎え入れていたけど、内心は不安でしょうがなかった。遠慮を知らないサトちゃんは、勝手にママの家の冷蔵庫を開けたり、タンスから服を引っ張り出すようなこともあった。
 ママは悩んだ。親は、子供の友達関係にどれくらい口を出していいものなのかしら? いくら自分が気に入らないからって、あの子とは遊んじゃいけないなんて冷たい言葉を言う大人には、できるならなりたくない。一人でものを考えがちなママは、だれかに相談することもできずに、うじうじ考え続けた。子供をまるごと受け入れられない自分が悪いのよね、なんて考えながらも、内心自慢にしているかわいい娘に、あの目付きの暗い子が悪い影響を与えるのではないかと思うと、心配で心配でたまらない。
(あの子……、今頃どうしてるかな?)
 ママのため息を乗せたバスは、冬の日差しを浴びた寂しげな休耕田の横を通り過ぎ、静かな住宅街に入って行く。
       *

 玄関のドアを開けると、ママは買い物の荷物をどさりと足元において、大きな声で言った。
「あーあ、疲れた。デパートなんて行くもんじゃないわ。版画もたいしたことなかったし、ママには散々よ」
「デパートがきらいなんて、ママおかしいわ」
 ユキは靴を脱ぎ散らかすと、大事なたまごだけを持って急いで居間の方に消えた。ママは大荷物をキッチンのテーブルに運ぶと、どっこいしょと椅子に座り込み、こった肩をまわしながら言った。
「おかしくていいの。どうせママは変わってるのよ。昔から言われてることだけど」
「ふーん、ママ変わってるんだ」
「変わってるの。ママ、ユキみたいに普通の家で育たなかったもん。パパはいなかったし、ユキみたいに好きなおもちゃも買ってもらえなかったし」
「パパは今、出張なんでしょ?」
「そのパパじゃないの。ママのパパよ。ユキのおじいちゃん」
「じーじならお正月に会ったばかりよ」
「そのじーじじゃないの! ……もういいわ」
 ママはわざと大きなため息をつくと、テーブルにほお杖をついて目を閉じた。
 ママがユキみたいに小さかった頃、ママの両親は突然離婚した。ママの子供の頃は、今ではもう思い出したくもないくらい、つらいことの連続だった。だから、普通の両親の元で、何不自由なく素直に明るく育っている娘のユキは、ママにはちょっとまぶしい存在だ。いわばユキは、ママにとって、子供の頃に自分がなりたかった自分そのものなのだ。
 そう。要するに、あのちょっとひねくれたサトちゃんがママの気にいらなかったのには、そういう訳もあったのだ。まるで、大事な自分の分身をサトちゃんに汚されるような気がして……。それは、子供を悪いものから守りたいと思う親の当然の気持ちなのか、それとも……。
「親のエゴ、かな? やっぱり」
 ママは、ため息まじりに、独り言を言った。目を上げると、キッチンの小窓の透き間から、小さな青空が見える。そういえば、あの日も確か、こんな青空の日だっけ。
 夏休みの近いある日、幼稚園から帰ったユキが、見慣れないおもちゃを持っていた。一目で新品とわかるアニメのキャラクター人形。どうしたのかと問いただすと、ユキは気まずそうに、サトちゃんに買ってもらったと言った。
「サトちゃんに? どうして!?」
「ユキだけじゃないよ。ナッちゃんとジュンちゃんと、マサキくんも買ってもらったよ」
「買ってもらったって、子供がそんなお金、どうして持ってるの!」
「サトちゃん持ってたもん。それでみんなにお金くれたの。だからみんな、サトちゃんの言うこときくんだって」
 そのときだ。ママの中で、今まで耐えに耐えていた我慢の糸が、ぷつんと切れてしまったのは。
「ジョウダンじゃない! バカにするにも程があるわ! ユキ、それかしなさい、ママが突き返してやる!」
 ママはユキの返事も待たず、ひったくるようにして人形をとりあげた。
 ママの頭は、怒りにぐつぐつ煮たっていた。道の真ん中をものともせずにずんずん歩き、通り一つ向こうにあるサトちゃんちの扉をばんばんたたいた。考えてみれば、それまで一度もサトちゃんの家を訪ねたことはない。どんな家の子なのかも、知ろうともしなかった。
 扉が開いて、寝間着姿にガウンをはおった、どこかだらしない感じの女の人が出て来た。ママが事情をまくしたてると、女の人は、サトちゃんによく似た半開きの暗い瞳を、まるまると見開いた。
「す、すみません……。あの子、父親がいなくて、私が夜働いてるものですから……、十分かまってやれなくて……、だから時々、親のサイフからお金ぬいて、こんなこと……。ご迷惑おかけして、すみません、すみません……」
 女の人は、恥ずかしそうに、何度も頭を下げた。それを見たママは、急に悪いことをしたような気分になって、怒りがしゅんとしぼんでしまった。
「いえ、注意してくれれば、それでいいんですよ……」
 ママがしどろもどろになりながら、人形を差し出した時だ。いきなり、女の人の背後から小さな手がぬっと飛び出してきて、人形をむんずと取った。
「いらない、こんなもん!」
 激しい声がママに突き刺さり、人形は地面にたたきつけられた。ママは、母親の陰から、挑むようにこっちを見ているサトちゃんの目を見た。ママがひるむと、女の人が振り向きざま、さっきまでとは全然違う金切り声で叫んだ。
「なんてことするの! このバカ!」
 ほおをばしんとたたく音と、子供の泣き声が、ほどんど同時に起こった。驚いたママは、あいさつもそこそこに、逃げるようにその場を去った。去り際サトちゃんは、獣の悲鳴のようなわめき声を、ママの背中に投げつけた。
「出ていけぇ! あっち行けぇ! バカぁ!!」
 家に帰る途中、ママの頭の中を、何か煙のようなものがぐるぐるとうずまいていた。ドアの透き間からちらりと見えたサトちゃん家の暮らしは決して豊かなものじゃなかった。カーテンをしめきった部屋の、よどんだ空気の匂い。それはママに、子供の頃のことを強烈に思い出させる。父親のいない家。わが身の不幸をなげいて、愚痴を娘にぶつける母親。寂しい心を、自分の世界に逃げ込むことで、紛らわす子供。
 ママは道端の電柱に手をついて、しびれたように立ち尽くした。言葉にならない思いのくずが、ぐにゃぐにゃともつれて、蛇のようにママにまとわりつく。目に涙が盛り上がり、胸をしぼるようなあえぎ声が、ママの喉からもれた。
(終わったんだ。あれはもう終わったことなんだ……!)
 見上げると、青空が、無言で広がっている。ママは涙を飲んで、空に手を伸ばした。昔からそうだ。何かに届くわけでもないのに、つらいことがあると、ママは空に触りたくなる。
      *
 サトちゃんちが引っ越したのは、それから一月もたたない頃のことだ。突然だったので、近所の人はみなびっくりしていた。伝わって来たうわさでは、サトちゃんのお母さんが、夜の店で知り合った外国の人と、結婚することになったのだそうだけど……。
 正直な気持ち、サトちゃんがいなくなって、ママはほっとしていた。ユキも、すぐにサトちゃんのことは忘れたみたいだ。でも、ママの胸の底には、解決しきれない気持ちのしこりが、まだ重たく残っている。
「ママぁ、こっち来て。これどうやったらいいの?」
 居間の方からお呼びがかかったので、ママは物思いを中断して、腰をあげた。
「どれどれ、説明書見せて。……ああ、これはね、こうやって、リセットボタン押すのよ」
 ママが操作すると、たまごの液晶画面ばぱっぱっと切り替わり、やがて何かがちらっと動いて、とくとくと動き始めた。ユキが歓声をあげて、ママの手からたまごをとった。
 うれしそうなユキの様子を満足そうに眺めながら、ママはふと遠い目をして、ぽつりと言った。
「……ママも買えばよかったかなぁ、あのモズラのたまご」
「なんで? ママってイモ虫きらいなんでしょ?」
「きらいだけど……。でも、いつか……、やさしい怪獣になるんでしょ?」
「うん、ちゃんと育てればね」
 どうして、あんなにサトちゃんを嫌ったのか、今のママにはよくわかる。サトちゃんの瞳がひきずっている、あの暗い影が、あまりにも、ママの小さな頃に似ているからだ。
「ちゃんと育てれば、か……。そのたまごみたいに、育て方がわかってれば、苦労はないんだけどね」
 また涙が出そうになったので、ママはあわてて立ち上がり、窓を開けた。青空が広がっている。かんだ唇が震えだす。
「ママ、ねえママ、どうしたの? 泣いてるの?」
 気がつくと、ユキの心配顔が、ママの肘にひっついていた。
「なんでもないよ。なんでも……。ただ……」
 ママは無理に笑顔をつくろうとしたけど、顔がいうことをきかない。
「ママね、思い出しただけなんだ。ママが昔、いじけたイモ虫だったこと……」
 つらかった。でも乗り越えてこれた。憎しみも、寂しさも、愚かさも……。そしてパパと出会って、ユキに出会えた。何だか奇跡みたいだ。ママがイモ虫から脱皮できたのは、いつだったろう? そして、なぜだったろう?
 ママは青空に、サトちゃんの幸せを祈った。そうすることで、気持ちの中のしこりが、みんな消え去るわけではなかったけれど。……祈らずに、いられなかった。

  (おわり)



(1998年、ちこり12号所収)






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背景の反乱

2014-04-27 06:12:18 | 詩集・試練の天使

車と家が
人々から去ってゆく

広い庭から
庭木が裸足になって逃げだす

こんなものは馬鹿みたいだと
放っておいたものが
いつの間にか消えている
必要だと思ったときに
それはない

ブランド物のバッグが
溶けて消えてゆく
かっこいいブーツが
足から逃げて行く

アニメ塗りのような
ファンデーションが
とれない
自分の本当の顔が
馬鹿になる

空が落ちてくる
海が反乱する
風が棒のように硬くなる

花は凍る 森は拒否する
水は飲もうとすると
馬鹿かという

何もかもは だれかが許してくれていたから
あったものだったのに
それは当然 自分のものだと思っていた
そういうものが
一斉に
人間から去って行く

背景の反乱だ
ネガとポジの反転だ
人間よ
おまえたちはもう
主役ではない

舞台の隅に退き
カーテンのほころびでも
つくろっているがいい



コメント (1)
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にんかな

2014-04-26 06:07:47 | 画集・ウェヌスたちよ

にんかな
2002年

にんかなは、「小さな小さな神さま」に登場する、豊穣の女神である。
モデルは、木花之開耶姫であるらしい。富士を、脇息のようにひじの下に敷いている。
実にでかいね。

神は、これくらい大きいものと、解釈して、誤りはない。





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サラディン

2014-04-25 06:13:04 | 虹のコレクション・本館
No,129
ギュスターヴ・ドレ、「サラディン」、19世紀フランス、ロマン主義。

美しい男性像を探そうと思えば、やはり肖像画ではなく、神話画や宗教画や、挿絵などを探さなくてはならないようだ。

この絵に描かれたサラディンは、とても体躯のたくましい美しい男に描かれているが、残念ながら、人類の男に、ここまでの肉体表現は無理なんだよ。

馬鹿が人工的に作る場合もあるが、どうしても眼光が弱く、風船を膨らませたような感じがして、すぐにしぼんでしまう。

ここまで厚い存在感を発するには、中にいる魂が相当に熱くなければできないのだ。

しかし、ムハンマドはこれよりすごかったよ。これを一回り大きくして、ひげをたっぷりとたくわえた美丈夫を想像すればいい。ムハンマドにそっくりになる。

彼なら、これくらいの男はできるんだ。

漫画やアニメなどで、人間はよくこんな男を描くがね、やっていることが実に幼い。女の子を意識したことばかりしている。

男の見本というのを、見たことがないんだな。もう少し勉強させんといかんね。




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若き日のサムソン

2014-04-24 06:14:42 | 虹のコレクション・本館
No,128
レオン・ボナ、「若き日のサムソン」、19世紀フランス、アカデミック。

秀逸な美しい男性像を探したのだが、なかなか見つからない。ヘラクレスの絵なんぞも探したんだがね、男はヘラクレスを描く時は、何とももっさりと描く。もっと男前に描いてもらいたいものだが。

獅子退治の仕事などは、ヘラクレスもやっているが、ヘブライの英雄であるサムソンもやっている。若いが、なかなかやるね。小手調べという感じで描いてあるが、これがなかなか難しい。

獅子というのは、男が向かう敵の象徴のようなものだ。強い。デカい。美しい。しかも威厳がある。王者のようだ。

若いガキが、男に目覚めて、最初に敵視するのが、こういうものだ。

もちろん、こんなものに正面から立ち向かえる男など、めったにいない。だからたいていの男は、いろいろな知恵を使って、獅子をやっつけようとする。

一番最初に思いつくのは、もちろん、大勢でやっつけることだ。こういうやつはいっぱいいるよ。

だが、ときに、自分一人でやろうとするものが出る。これが、すごいやつさ。

ヘラクレスも、サムソンも、それをやったやつだ。だから神話に残る。

大勢でなら、マンモスだって倒せる。だが、一人の、自分だけの力で、獅子を倒す。これほど、男の血を熱くするものはない。おれがおれだという、激しく痛い存在証明だ。

一度は、獅子に、ひとりで挑戦してみたまえ。これくらいやれねば、男ではないぞ。




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2014-04-23 06:12:16 | 虹のコレクション・本館
No,127
フェルディナンド・ホドラー、「昼(真実)」、20世紀スイス、アール・ヌーヴォー、象徴主義。

これはまたすばらしい絵だね。ホドラーはまっこうから描いている。これは何らかの使命が画家にあったとしか思えない。

美しいが、何もかもをそぎ落とされて、真裸にされ、なにもかもを見られている。それでも自分を恥じることなくまっすぐに前を見ている。

これを平気で見られる人間はいまい。

この絵の女性は、かのじょの霊的世界での姿に似ている。何となくわかるはずだよ。かのじょはいつも、真裸だった。嘘などつけないからだ。植物存在には、嘘をつけるものなどいないんだよ。

人間にはこれがわからないのだ。

これはまるで、石に生えたなめらかな不思議な木のようだ。

瞳は悲しげな真実の実だ。永遠に、こちらを見ている。

これは、あらゆるものを奪い尽くされた女というものを描いた絵だ。見るのは辛いかもしれないが、見たまえ。真実はいつか、白日の下に照らされるだろうと。

こういうことを、男は、女にしたんだよ。




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オランピア

2014-04-22 06:11:01 | 虹のコレクション・本館
No,126
エドゥアール・マネ、「オランピア」、19世紀フランス、印象派。

「草上の昼食」もこれも、ティツィアーノに学んで描かれたものだが、マネは何もわかっていないね。いいところのぼっちゃんだから、これが描けたのだろうが。

これがサロンで発表されるやいなや、物議をかもしたのは、人間に見たくない現実を見せてしまうからだ。

立派なよい女性が、苦界に落ちている。その姿をそのまま描いているのである。娼婦というものがどういうものかを、美化もパロディ化もせずそのまま描いてしまったのだ。

これを見たら、男は遊び女と平気で遊ぶことができなくなる。女性に、どんなことをさせてしまったのかを、まざまざと見せられるからだ。

マネ自身は、古典に学んだスタイルで描いたつもりだったのだろうが、これは何らかの見えない存在が、彼に描かせたのだとしか思えないね。

芸術作品の中には、時にこういうのがある。なんらかの見えない存在が、人間に何かを教えるために、人間に描かせるのだ。

この絵は、これからもしばらくの間、人間にきついテーマを投げかけていくだろうね。




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救世主

2014-04-21 06:03:33 | 虹のコレクション・本館
No,125
ダニエレ・クレスピ、「救世主」、17世紀イタリア、バロック。

いや、見つけた。これ、イエスの本当の顔に似ている。
彼はこんな感じの顔をしているよ。もちろん実像はもっと美しいが、感じがよく似ている。

探せばあるもんだね。

芸術家というのは、よい仕事をしている。この絵を頼りに、イメージを固めていくといい。
これをもっと優しげでどっしりとした感じにすれば、もっと実像に近くなる。

どうだい、男っぽいだろう。やさしいが、少々きつい感じもするだろう。
いいやつなんだよ。

人間のために、なんでもやっている。どんなことでもやってくれる

彼は本当に、あなたがたを愛しているんだよ。




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