世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

夢の名残

2008-02-29 08:53:31 | 詩集・貝の琴

いつはりの衣に やすらふ君よ
去りゆくものの 声も聞かず
赤玉のごと 笑ひたりけり

くちびるにひく 苦き紅の
鳥のごとくさかんに 騒ぎたるを
蒼き花の諌めに しづめむとせよ

貝玉を砕きて 白く描きし眉の
風に軽々と 折れゆく
その悲しみを 聞かむとせよ

いたはしき鳥の親の くりかへし
石の雛に 食はさむとして
つかれゆく その眼の翳りを見よ

いつはりの衣に やすらふ君よ
去りゆくものの あまたあるを
玉の面に消ゆる まぼろしに変へ
夢の名残に また酔はむとすなり





  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

砂、水、二題

2008-02-28 08:51:03 | 歌集・恋のゆくへ


  慟哭の風よ砂より生まるるを彼方に聴けり月天の丘


  幻の衣を去りて逃げ騒ぐ砂のねずみの小枝に転ぶ


  此はたれの咎かと問ひし君の手の砂にこもりてつぶてを探す


  *


  清げなる水の流れに梅の香を逃したりけりをさななる頃


  雪解けの水を汲みゐて見出しぬ我が小さき手のほの白きこと







  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

月毛をえたり

2008-02-27 09:00:43 | 歌集・恋のゆくへ


  めづらしき月毛を得たりおろかなるわらはのきはみ弥見が欲しく

 

  おくやまの立木のかげの石むすび見えじの月に帰りたきかな



  なよたけのうれひの月をかきおとし人の世を堪ふ頼りともせむ



  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

森を見ざりき

2008-02-26 08:47:39 | 歌集・恋のゆくへ


  薔薇ならぬ薔薇の悲しみうとましき骨を悔やみてその珠を踏む



  夜に積むあばらの罪を甘く煮て菜の花を添へ君に食はさむ



  長々と森を見ざりき目をひさぐ糸をほどきて我ゆかむとす




  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

宋朝の美あらずんば

2008-02-25 09:13:48 | てんこの論語

祝鮀の佞ありて、而して宋朝の美あらずんば、難いかな、今の世に免れんこと。(雍也)

今の世の中、顔がよくて口がうまくなければ、生きていけないようだ。

 *

祝鮀(しゅくだ)、宋朝(そうちょう)はともに人名で、前者は衛という国の祭官、後者は美貌で名高い宋の公子だそうです。

こんなことをいっては何ですが、最近、これはみごとだな、という男性を、とんと見なくなりました。やたらと清潔にして、髪型や服装をきれいにまとめた男性だとか、さらさらと軽い弁舌のうまい人だとかは、よく見るんですが。

テレビを見ても、立派に胸をそらして、俺は偉いんだぞ、というポーズをとっているのですが、なんだか今にも張りぼての芯が折れてしまいそうだ、という感じの人が多いのです。

外見は磨きまくり、どこかで聞いたようなことばを、完璧に磨き上げて論理構築した演説をし、一見すばらしいと感じさせるようになんとかつくりあげてはいるんですが、見ていると、苦しいと感じる。

これは、だれかが何とかしないと、みんなだめになってしまうぞ、という感じの人が多いのです。できない仕事を、無理にやったがために、ひっこみがつかなくなって、どうしよう、という目をしているんですよ。それが丸見えなのです。

要するに、外見を取り繕うことの上手な人ばかりが、成功するようになったから、こんなことになったんだな、という感じの男性を、テレビや新聞なんかで、よくみるようになりました。大変だなあ、と感じています。彼らは、一度、ほんとにやってることがばれると、どういうことになるかわかりませんよ。

 *

君子は言に訥にして、行いに敏ならんと欲す。(里仁)

 *

やるべきことをちゃんとやってる人は、あまりものを言わないものです。やってることそのものが、自分の報酬みたいなものだからです。自分はやれるものなのだという幸福が、なによりすばらしい。だから、特に主張する必要はない。わかってくれるものだけがわかってくれればいい。

格好だけ、完璧にすることが巧みな人は、たくさんいるのですが、そっちに一生懸命になる暇があったら、ほんとの自分を磨くほうが、ずっといいと思うんですが。

自分自身である自分を、何より幸福だと考えて生きている人のほうが、ずっと美しいと、わたしは思います。




  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

阿呆の宴

2008-02-24 11:07:47 | 歌集・恋のゆくへ


  空蝉と思ひし種の彼方にて芽吹く気のする小春日の陰



  羽たたむ鳥の休めるこの春の門より先にその夢はなく


 
  花の実の朱を欺きてことごとくあをきにしたり阿呆の宴



  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ベリルの舌

2008-02-23 10:08:27 | 歌集・恋のゆくへ


  いつはりの林檎を噛みて
          荒砂の高殿に立つ 
       ベリルの舌よ




    薔薇の根をほどきてよりて
         沈黙の糸を編み来ぬ
              アラクネの夜




    高空の清きしるしの砕き散る
        花園に寝し
                あぽろんの犬






  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ヒイラギナンテン

2008-02-22 10:29:49 | 花や木

メギ科ヒイラギナンテン属。Mahonia japonica

種小名にはjaponicaとありますが、原産は中国だそうです。常緑低木。でも冬の寒い時期には、全体が赤っぽくなりますね。それがとてもきれいです。

これは幼稚園の近くの、スーパーの裏手に植えられているヒイラギナンテンです。今は、こんなかわいい黄色い花が、いっぱい咲いています。

人間が好きかきらいか、という観点で振り分けたら、このヒイラギナンテンは、どうしようかなあ?とちょっと考えたあと、中立派を選ぶことでしょう。

あんまりにやっかいなことをする人間は、ほんとはちょっといやなんだけど、痛いことをして、こけて、馬鹿だなということになって、苦しんでいる人間をみたら、やっぱり放ってはおけない。

仕方ないなあ、という顔で、影からそっと、やさしいことをしてくれる。でも人間は、そんなことにはぜんぜん気がつかなくて、ちょっと立ち直ったら、また変なことをやり始める。ヒイラギナンテンは、ちょっと悲しくなって、だまりこむ。

そんな感じです。

ヒイラギナンテンは、とてもかわいいし、低木なので、よく庭や公園などに植えられているのですが、なかなか美しい樹形になりません。どこかゆがんだり、ぼさぼさになったり、小さく縮こまった感じになったり。わたしの見たところ、人のたくさん集まるところに植えられているものほど、くたびれているような気がします。

それは、ヒイラギナンテンが、人々のやっていることを、みんな知っているからです。町で、ヒイラギナンテンを見かけたら、近寄って、たずねてみてください。「わたしのことを、知ってるの?」ヒイラギナンテンは、ただしずかに、まっすぐに返してくれるでしょう。

ヒイラギナンテンは、マツほどに強くない。痛いとげで、外壁を守り、あまり近寄らないでとは言っているけれど、かわいらしい花が、子供や、寂しげな大人に、ふっと微笑みかけてしまう。ヒイラギナンテンの木が、ゆがんでしまうのは、この自分のやさしさが、つらいから。意地悪が、できないから。

だから、人々の心のとげが、ひりひりと痛すぎるとき、ヒイラギナンテンはゆがんで、くたびれて、いつしか、溶けるように、消えていく。

ヒイラギナンテンのとげは、人を傷つけるためではない。やさしさに弱くなる自分の心を、精一杯、守るためなのです。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

マツ

2008-02-21 09:31:51 | 花や木

マツ科マツ属 Pinus thunberugii

学名はクロマツです。

これは確か、幼稚園の近くの、大きなおうちの生垣のマツです。ずいぶん前に撮ったものですが。

マツはたいてい、カメラを向けても、あまりいい顔をして写ってはくれません。やっぱり人間が嫌いだからでしょうか。いつも、自分はそんなもんじゃないって顔で、むっつりと睨み返されてしまうのです。

マツはとっつきにくい。ちょっと怖い。それはなぜか。人間が嫌いなのは、スミレと同じ。でもマツは、スミレのように悲しそうにうつむいたりしないのです。

ちゃんと、やるべきことはやってますよ。いやなことをやるやつには、きついところで、しっかりとお目玉を食らわせます。人間には、わかることはあまりないですけどね。マツは、侮れないのです。

男は、痛いんですよ。そ知らぬ顔をして、痛い、と感じたときには、絶妙のところで、やることはやっている。それが、すごく、きついときがある。勘弁してくれって、悲鳴を上げるような辛いことがあるときには、マツがきついことをやっていることがあります。ほんとよ。彼らは、だてに、マツをやっていません。

いっときますが、マツは、女性より、男性に、きついです。立派なマツが生えている家には、男性に厳しいことがあるかもしれません。ほんとですから、マツがあるおうちに住んでる方は、よく考えてみてください。おうちの男性が、ちょっと苦しそうでしょ。

そのうちの男性が、馬鹿なことをしていると、マツは、ほんとに、怒るんです。

こんなこというわたしにも、マツはいい顔をしないでしょう。余計なことを言うんではないと、にらみつけるかもしれない。マツは厳しいから。けれども、マツが痛いからと言って、伐ったりすると、もっと痛いことになるから、やめてくださいね。マツは、みんなを守っていますから。

昔から、防砂林、防風林などにマツを植えるのは、悪いものが絶対に来ないように、ここで立っててくれ、という人々の願いだったのです。人間も、なんとなく、マツのことがわかっていたのです。ほんとよ。悪いことをしてる人は、よーく考えてみてね。マツが立っているところには、ちかよっていきたくないでしょ。

でも、松くい虫のおかげで、こんなにマツが減ってしまったのは、とても苦しい。悪い人に、がつんとやってくれる、強い守り神がいないから。

マツは、みなで、大事にしましょう。なんとかしていきたい。これ以上マツが減らないように。



  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

パンジー

2008-02-20 08:55:43 | 花や木

スミレ科スミレ(ヴィオラ)属。Viola × wittrockiana

さて、ちょっとクイズです。この、どこにでも見かけるパンジーは、人間にやさしいさくらそうタイプ、あるいは人間が嫌いなきくタイプ、どっちでしょうか。

よく顔を見て、花の心を感じてみてくださいね。微妙なところも、ちゃんと読んであげてね。なんとなく、わかるでしょう。

そう、スミレの仲間も、どちらかといえば、人間が苦手です。ちょっと、いやだと思って、いつもしぶい顔をしています。

ただ、きつい少年という感じのキクや、厳格なおじいさんという感じのマツ、生真面目なおじさんという感じのツゲと違うところは、すみれが、かわいい女の子、という感じのとこでしょうか。

「なんでそんなことするの?」という感じで、目をつりあげてはいるけれど、そこは女の子、あまり強くは責められない。だからいつも、すみれは悲しそうな顔で、うつむき加減に咲いている。

そんなスミレの花が、この日本中どこにでも、四季を問わず、咲いている。栽培がしやすいし、気軽にどこにでも植えられるし、繁殖力がすごいから、どこででも増える。一日、パンジーの花を見ない日は、日本ではないほどです。どうしてこんなに、パンジーが栄えているのか。

それはきっと、人間が、悪いことばかりしているから。だから、ちょっとは怒ってほしいんだけど、できたら、厳しい男の人に、ごんとお目玉を食らうよりは、やさしい女の人に、ちょっと怒ってもらうほうがいい、ていう感じでしょうか。

要するに、人間は、疲れすぎているんでしょうね。いろいろと、いやなことをしなければならないことがあって、それが積み重なってくると、悪いということはわかっていても、優しさを求めていきたくなる。

心に重荷を抱いている人は、だれかにいつも、ごめんね、て言いたい。悪いことしてるから。つっぱってるけど、本当はいつも、苦しいから。その崩れやすい心を、受け止めてもらうには、パンジーが、やさしい。

こんなにパンジーが、どこにでもたくさん咲いているのは、そんな人が多いからじゃないでしょうか。




  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする