世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

天使

2013-02-28 05:49:50 | 詩集・試練の天使


たったひとりの 小さな女に
世界中の男が かなわなかった
たったひとりの 小さな女に

たったひとりの 赤い女に
世界中の男が かなわなかった
たったひとりの 赤い女に

神様 みんなを たすけてください

窓辺で 小さく祈っていた
たったひとりの女に
だれもがみんな かなわなかった

月の照る下
硝子の人形のごとく
ひとり立ち尽くす 影よ
おまえが すべてをやった

たったひとりの もろくも小さな
硝子の心の 姫人形が
すべてをやった

愚か者め



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あこがれ

2013-02-27 06:57:28 | 詩集・貝の琴


荒れ野に 虹を描き
あこがれの 火を焚いた

灰の衣に 身を預け
蝋の薔薇を 食い
すべてを 笑い飛ばすために
狂った王の 玉座を作る

黒雲の帳が 星を隠し
水の太陽を 空に呼ぶ
おまえの涙の 太陽を

何が 欲しかった
すべてを 灰にしてまで
骨まで 水に溶けるまで
何を求めて やった

荒れ野に 虹を描き
あこがれの 火を焚いた
あこがれの 火を

つぶれかけた目に
砂をこすりつけ
ヤニに腐った 歯を抜いて
笑いながら おまえは言う

あなたの 白い衣が
欲しかった






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神様

2013-02-26 05:57:06 | 詩集・貝の琴

神様が君に 頬ずりをしに来る
たったひとりの 君のために

神様の心のために 風がざわめく
花が咲く 花が咲く 花が咲く
木々が揺れる
こいぬが転ぶ
猫が見つめる
小鳥が窓辺にやってくる

神様が君の所へ来るための
道をつくるために
世界中のすべてのものが動く
光が君を抱く 青空は澄み渡る
君はまだそれに 気付くことはできない
でも

世界中が 君を愛している
たったひとりの君に 愛を送るために
歌を歌い続けている




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ますらを

2013-02-25 05:41:10 | 歌集・アンタレス


あしたゆく ひとはおのれを かみしめて 苦き血をなむ 痛きますらを




やへがきの かひなをふりて 石を負ふ をのこの道は 厳しともゆく




吹き戻す 風にあらがひ 血を吐きて 骨は裂けても ゆけ阿呆らめ




うつくしと いふことのみの 道ならば おのれをのこの 意味はなきかな



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星の実

2013-02-24 06:54:54 | 薔薇のオルゴール

ふりむかないで
いま きみがふりむいたら
きみはぼくの
ほんとうのすがたを
みてしまう

ぼくはいまから
とりのように空にとんで
落ちそうな星の実を
もぎとってこなければならないんだ

空には 透明な神様の木があってね
星はみんな その木になる実なんだよ
それでときどき
枝から落ちそうになる星があるから
ぼくはその実を とってこなくてはならない
もし 星の実が 地球に落ちてきたら
それは困ることになるからなんだ

ぼくは 空にいって
落ちそうな星の実を
みんなとってくる
そして とった実を神様にお返しするとね
神様はひとつだけ ぼくに星の実を下さる
ぼくは大切に それを持って帰ってくるんだ

星の実は しばらくぼくの心臓の中で
あたためておいて
やさしいことばを 何度もかけてあげると
とてもやわらかくなってね
もういいよと言ってくれる
そのときがきたら ぼくは
静かな海辺か 深い森の奥に行って
誰も知らないところに
そっと星を埋めるんだよ

そうするとね
そこから
新しい世界が生えてくるんだ
本当の美しい世界が

ああ 今はぼくをふりかえらないで
ふりかえって 君がぼくを見てしまえば
君はぼくを忘れられなくなる
ぼくはもう ここに帰ってくることはできないから

忘れていいんだよ
そのほうがずっと 君のためだから
ぼくは ここにいなくても
ずっと 君を愛しているから

星の実は たくさん埋めておいた
いつか君は 夢のように
世界が新しくなっていることに気づく
新しい歌が 世界中に流れていて
君はいつかしら
自分もそれを歌い始めていることに
気づく


(オリヴィエ・ダンジェリク、遺稿より)




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たかゆくや

2013-02-23 06:38:39 | 歌集・アンタレス



たかゆくや はやぶさの羽 風広げ 我知らぬ野に 音もなく去る





いわのとの ひめかみの秘む 血に割れし 胸はぬひても また割るる故




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面影

2013-02-22 04:42:25 | 歌集・アンタレス




なよたけの 影にすがりて さまよへる ひとよおのれの 黒き影掘れ





いわのとに ひとりしづかに まどろみて ときに夢みる ひとの面影





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荒れ野にまよふ

2013-02-21 04:22:38 | 歌集・アンタレス

あはゆきと きゆるかなしき ひとの屋に せめてよりそふ 星くづの鳥





玉を縫ひ 飾りたる衣 身にまとひ わらふ阿呆に やる星はなし





あすはなき かすみの館 かげりゆく 未だあるとて 荒れ野にまよふ




御心の 悲しみは知る 砂山の 砂に倒れる 人は知らずも




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目に痛き

2013-02-20 05:47:36 | 歌集・アンタレス

目に痛き 紅の散り敷く さざんかの 冬の空には 君の星なく




天狼の 燃える夜空は 美しく 昼のとばりに 我はやすらふ




見えぬとも なきにあらずと いふ君よ いづこにひそむ わが胸の空




猫のごと ちひさき君の こころにて われはみいだす 清き流れを



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さらぬだに

2013-02-19 04:48:33 | 歌集・アンタレス


さらぬだに とりのゆくへは たかくして ふりあをぐ身に 降る音のあをさ





鳥の音に 玉を隠して 君が手の かひよりいでて 大空を飛ぶ




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