以前、百句のユーモア川柳集を掲載したが、最近の世相で感じるのは豊かさに対してで、些(いささ)かの疑問が湧く。
━ 豊かさは 物と心が 反比例 ━ という句をその中の一句としたが、まあ、そういうことである。^^
高校三年の鳥毛(とりげ)暖(だん)は二階の勉強部屋で日課にしている瞑想に耽(ふけ)っていた。これをしないと、どうも受験勉強に熱が入らないのである。
「暖、ご飯よぉ~~!!」
階下から母親の声が祁魂(けたたま)しく響いた。恰(あたか)もその声は雄鶏(おんどり)が朝に鳴く鶏鳴に似ていた。が、この場合は母親である。
『まあ、いいか…』
何がいいのか分からないが、暖は瞑想を一端やめ、夕飯にすることにした。瞑想を続けたとしても、また母親の祁魂しく呼ぶ声が響く危険性があったからである。
夕飯は暖が母親に注文していたオムライスではなく、肉ジャガだった。
「肉ジャガなの?」
「贅沢言っちゃいけませんっ! 母さんが小さい頃は肉ジャガはご馳走だったのよ」
「肉ジャガがっ!?」
暖は信じられず、思わず哂(わら)った。
「そうよ、今の時代とは豊かさが違って生活レベルも低かったから…」
「ふ~~~ん」
暖には豊かさの違いが分からなかった。いや、暖だけではなく、暖の世代の今の若者には分かる訳がない話だった。世相は益々、豊かさのレベルを高めながら餌を突(つつ)くように流れているのです。^^
完