幽霊パッション 第三章 水本爽涼
第九十六回
「おお! 君か…。見えんと、なんか不便だな」
『いいじゃないですか。電話してるかラジオを聴いてると思えば…』
「電話にラジオか。ははは…上手いこというな、君は。それよか、別状ないようで、よかったよ」
『ええ、お蔭様で…。案ずるよりナントカでした』
「産むが易(やす)し、か…。そうだな。私も変化なかったしな」
二人(一人と一霊)は、お互い、陰陽の差こそあれ、ニンマリとした。
「ははは…。そう落ち込むなよ。また人間界へ戻れるんじゃないか、目出度いことだ」
『はあ、それは、まあ…』
「私の方は、その時点で君の幽霊以降の記憶は、完璧に消えてるんだろうがな…」
今度は上山の方が少しテンションを下げた。
『課長! そう肩を落とさず…。生前の僕の記憶は残ってるんでしょうから…』
「ああ、そりゃそうだが…。ははは…、お互い、慰め合ってりゃ世話ねえや」
二人(一人と一霊)は、ふたたび陰陽の差こそあれ、ニンマリと笑った。
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