あなたのために―いのちを支えるスープ
2002/8なぜ私がこの本を買ってみようかと思ったのかは以下のアマゾンの書評を読んだからです。この本の存在すら知らなかった私がその存在を知ったのは愛読しているレビュアーのwahwahwahさんのアクテブテイ(レビュー一覧)をのぞいたからです。おかげで心打たれるすぐれたお料理の本をもう一冊紹介できそうです。ここまでのレベルになると食文化です、まさに。
アマゾンのレビュアーでこの人はと思う人を持っていて、たまに逆探知をするとすぐれた本を発見できますね。
wahwahwahさんのアマゾンのレビューから
4 人中、3人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
美しい本, 2012/11/11
レビュー対象商品: あなたのために―いのちを支えるスープ (単行本)
格調ある文章と美しく撮影された湯気と香りが立ちそうな写真の数々。どのページを開いても著者の深い洞察と整理された思考と手法、本文に呼応する写真、配慮されたレイアウト、すべてが調和がとれており、ため息が出るほど美しい。これはレシピ本という範疇にはとても収まらない。みすず書房あたりで出版されてもおかしくない思想書、啓蒙書、あるいは講義録といっても過言ではないと私は思う。そして本書を手に取り著者の語りかけをたどるだけでなぜか心が休まり、敬虔で清らかな気持ちになる。著者の言葉の一つ一つに読み手である自分が納得し、「きっとその通りだ」と無意識に承認している、その過程が心地よいのだ。
現代に生きる我々はあまりにも食文化を物質的に扱い、軽んじ過ぎたのだろう。そして、手間のかかる調理という行為を家庭内労働とみなしてしまったのではなかろうか。実際、調理は時間がかかり大変だ。家族や他人に提供するとなると自分の料理が受けいれてもらえるだろうかという心理的な負担も加わる。
滋養のある身体に染み渡るスープを提供すること、それは大切な人への慈愛に満ちた施しであり、崇高な行為であるということを本書は気づかせてくれる。
現代に生きる我々はあまりにも食文化を物質的に扱い、軽んじ過ぎたのだろう。そして、手間のかかる調理という行為を家庭内労働とみなしてしまったのではなかろうか。実際、調理は時間がかかり大変だ。家族や他人に提供するとなると自分の料理が受けいれてもらえるだろうかという心理的な負担も加わる。
滋養のある身体に染み渡るスープを提供すること、それは大切な人への慈愛に満ちた施しであり、崇高な行為であるということを本書は気づかせてくれる。
注文していた本が届き、なかを開いて驚きました。これは本格的に長年料理を修行をしてきた方が、妥協を許さず最善の料理をめざして完成させたものでありましよう。カボチャスープやコーンスープのレシビ本のレベルをはるかに超えたものでした。レベル非常に高い素晴らしい本。紹介されているスープはおいおいに試作してみるとして、私の脳裏には90歳の嚥下能力(えんげのうりょく:食べ物を飲み込む能力)が落ちた母の姿がうかびあがりました。
著者の辰巳芳子さんの言葉にはこうあります。
スープに託す (p4~p5)
「つゆもの、スープ」と人のかかわりの真髄は、と問われましたら、あらゆる理論を越えて、「一口吸って、ほっとする」ところ。いみじくも「おつゆ」と呼ばれている深意と答えたいと思います。
作るべきようにして作られたつゆもの は、一口飲んで、肩がほぐれるようにほっとするものです。
滋養欠乏の限界状態で摂れば、一瞬にして総身にしみわたるかに感じられるそうです。この呼応作用は、いつの日にか解明されますでしょう。
「おつゆー露「いつ、どなたがこの言葉を使いはじめられたか知るよしもありませんが、露が降り、ものみな生き返るさまと重ねてあります。
私たちの先祖方の自然観と表現力をたたえ、この美しい言葉を心深く使ってゆきたいと思うのです。
私は、母の心づくしのおつゆもので守り育てられました。
しかし、おつゆもの、スープの本を書くに至った情熱は、父の八年に及ぶ、言語障害を伴う半身不随の病苦であったと思います。
病苦の中の嚥下困難が、スープと結びつきました。
嚥下困難(えんげこんなん:飲み込みこんなん)は、とろみに欠ける液体、または口中でまとまりにくく散ってしまうものがむせる ことを招き、むせれば食事は中止となります。
病院では、これに対応する食事の配慮は皆無で、特に新設のつもりの刻み食はいかんともなしがたいものでありました。
さらに衰弱は、食事をすることさえ労作であることが見えました。
一椀の中に、魚貝、野菜、穀類、豆を随時組み合わせ、ポタージュ・リエにしたものは、病人も私も安心の源でした。
(p6)ふたつめの願い
●人が生を受け、いのちを全うするまで、特に終わりを安らかにゆかしめる一助となるのは、おつゆものと、スープであると、確信しております。願わくは、日本の病院食にこの本が貢献しうる日がありますように。
なんという心でしょうか。 辰巳さんは自宅等で教室を開き、地域高齢者へのスープサービスも行っているそうです。
本を読んでいるうち辰巳さんが開いているスープ教室に通ってみたいと思うようになり調べてみたらあまりの盛況のためしばらく受付休憩だそうです。3年通わないと実力にならないので3年通える方のみ受け付けという制限があってもこの通り。むべなるかな。物事そう簡単に身につかないのは当たり前です。そこが楽しいところですよね。http://www.tatsumiyoshiko.com/?p=32