とおいひのうた いまというひのうた

自分が感じてきたことを、順不同で、ああでもない、こうでもないと、かきつらねていきたいと思っている。

『アラブの春は終わらない』ターハル・ベン=ジェルーン 齋藤加津子訳 河出書房新社  を読了する

2012年03月24日 05時51分14秒 | 読書感想

                                                     アラブの春は終わらない

 

 

  原題:L’Etincelle-Revoltes dans les pays arabes (Gallimard,2011) (火の粉ーアラブの国々の反逆/直訳)

   著者:Tahar Ben Jelloun ターハル・ベン・ジェルーン, 1944年12月1日 – )は、モロッコフェズ出身の詩人小説家。在仏のマグレブ文学の代表者。

 受賞歴

    ・ゴンクール賞 1987年 (La Nuit sacrée(『聖なる夜』)に対して)

 

マグリブ(Maghrib, Maghreb)とは。リビアチュニジアアルジェリアモロッコなど北西アフリカ諸国をフランス語読みでマグレブと呼ぶ。byウィキぺデア)

 

  チュニジア、エジプト、リビアと、独裁者が次々と、丸腰の反体制を叫んでデモをする大衆に倒されていった。この民衆の反逆は、まずチュニジアで、「degagez」(出ていけ、失せろ =partir,s'en aller)というフランス語で始まったことを、この本を読んで知りました。 

アラブ世界を熟知するターハル・ベン・ジェルーンが書かずにはいられなかった本ということで激しく気持ちを揺さぶられました。

アラブ世界とひとくちにいっても国ごとに内情が異なるので、チュニジア、エジプト、アルジェリア、イエメン、モロッコ、リビアとそれぞれ章を分け活写されています。シリアにも触れています。生々しい内容に感動と恐れが交錯し、とても要約できないので帯の引用をいたします。アラブ民衆の苦悩は、日本の民衆の苦悩とも十分に重なる部分があるように思われます。それは、程度の差こそあれ、どちらも個人が個として存在できているか、十分な尊厳、自由があるかという民主化の問題になるからです。一読をおすすめしたい本です。 

 

帯の引用(本書「序」より)

 「いまアラブ世界で起きていることを明らかにするため、私はこの短い本を書き記しておきたい。なぜなら、革命の春が晴天の霹靂(へきれき)だったとしても、実はその前兆はここ数年来はっきりとあらわれていたからだ。私はこの十年間、フランス内外のメディアに数多くの記事を執筆し、2003年にリビアを訪れるなかで、容認しがたい政治支配に苦しむアラブ民衆に激しいいらだちが蔓延しているのを実感した。民衆の忍耐は限界に来ていた。それはいつか爆発するしかなかった.........

アラブの春の勝利は、まず何よりも機が熟したことによってもたらされた。人々は自発的に、そして最後までやり遂げる決意でデモに参加したのであり、政党の指導者など、誰かの指示に従ったのではなく、ましてや宗教運動の指導者に従ったのでもない。そこに勝利がある。ちょうど冬のある日、熟しきった果実がひとりでに落ち、ほかの果実も一緒にばらばらと落とすように、アラブ人は祝祭のときのように踊り出したのだ」

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