2012年からSPOTTED PRODUCTIONが毎年開催している、映画監督とミュージシャンのコラボによる映画の祭典、MOOSIC LAB。
シネ・ウインドでも毎年上映してくれているのですが、今回、MOOSIC LAB 2017は年をまたいで2018年1/20(土)~1/26(金)の開催になりました。
今年は、MOOSIC LAB 2017の全作品を新潟で上映することは出来なかったということですが、短編と長編を1本ずつセットにした5つのプログラムを『MOOSIC LAB 2017 新潟編』として上映することになりました。
一週間で5つのプログラム(短編1本長編1本ずつ)を上映するので、いつ何を上映するのかがちょっと分かりにくいかも知れないかと思い、詳しいことはブログに勝手にまとめました。
MOOSIC LABのことは勝手に応援しているので、このブログを読んで見に行ってくれる人がいたら嬉しいなという気持ちで書きました。よかったら見てみてください。
「1/20から新潟で上映開始するオススメ映画情報!『MOOSIC LAB 2017 新潟編』『ミッドナイト・バス』」
さて、僕は1/20(土)~1/22(月)の最初の3日間で、さっそく全プログラムを観て来ました!
と言う訳で、感想を書いていこうと思います!
Aプログラム【栄冠!】2017年「金の朱鷺賞」の競演
監督:柴野太郎×音楽:井上湧(Churchill)
『KILLER TUNE RADIO』
お昼のラジオ番組「KILLER TUNE RADIO」を巡る、ラジオ局で働く人々の物語と、ラジオを聞こうとする女子高生の物語。
ラジオ局で働く主人公が、いい番組を作るために、いい音楽、「キラーチューン」を求めて奔走する様子が非常にわくわくしました。
MOOSIC LABではダメな主人公が音楽のために頑張る作品がたくさんありますが、逆に音楽の魅力が分からなくなってしまった主人公が音楽の魅力を探し求めるというストーリーは新鮮でした。
最後には音楽と出会う喜びが強く感じるエンディングになっていて、映画を観終わると、新しい音楽を探してみたり昔好きだった音楽を聞き返してみたり、またラジオが聞きたくもなる映画でした。
ラジカセ、カセットテープ、レコードと言ったアナログなアイテムがたくさん登場するのも楽しかったです。
監督:川村清人&飯塚貴士&音楽:The Wisely Brothers
『GREAT ROMANCE Ⅱ』
ある男女の物語を、女性は普通に人間の女優が演じているのですが、男性はまさかの人形で表現するという、異色のラブストーリー映画。
セリフは一切なく、The Wisely Brothersの音楽が一曲流れる5分間で、出会いから別れ、そして再会するまでの年月を、物凄いテンポで表現しています。
男女が愛し合ったりすれ違ったりしていく物語を、様々なたくさんの短いシーンの連続で繋いでいくのですが、何しろ人間と人形が共演しているので、一つ一つのシーンが物凄く面白い。
しかも、どのシーンでも女優さんは本気で演技していて、人形の動きも緻密で、やたら細かいところまでこだわって作り込んでいるので、見どころがすごいです。
いや、はっきり言って人形と人間が本気でラブストーリーを演じているので笑っちゃうんですが、王道のラブストーリーがしっかり丁寧に作り込まれているのと、音楽がカッコいいのとで、謎の感動に包まれます。
実は「MOOSIC LAB 2013」で同じような人間と人形の映画『GREAT ROMANCE』が上映されているのですが、まさかもう一回やるとは!っていうのも笑えます。
B【幻想!】異界とのほとりで描かれる物語
監督:岩切一空×音楽:ボンジュール鈴木
『聖なるもの』
昨年「こんな映画が出来てしまうとは!」と衝撃的な感銘を受けた映画『花に嵐』の岩切一空監督の最新作。
相変わらず、監督の手持ちカメラによるドキュメンタリー映画かと思わせておいて奇妙な世界へと誘われていく不思議な映画です。
また相変わらず、自らのカッコ悪さが全開の童貞感の溢れる作風と、映画を撮ることに対する謎の情熱を余すことなく発揮しているのが素晴らしいのですが、今回はそれがさらに暴走している印象さえ受けました。
そして、登場する女優さんたちがみんな驚くほど美少女ばかりなのですが、それは監督の女の子への憧れから来ているのかも知れないなあと思いますし、童貞と美女の相性の良さは本当に最高ですね!
最後まで見ると、どこまでがフィクションなのか、どこまでが劇中劇なのか、その境界線がよく分からなくなっていく不思議な映画なんですが、僕は監督が映画を撮影する自分自身を映画にした映画だと解釈しました。
これからも頑張って活躍して欲しい映画監督の一人です。
監督:村田唯×音楽:円庭鈴子
『デゾレ』
まばゆい光の中で繰り広げられる、三人の女の子の三角関係。
監督の村田唯さんも、音楽の円庭鈴子さんも役者として出演しています。
女の子が奏でるギターに合わせて、もう一人の女の子が歌うというシーンは音楽も歌声も映像も非常に美しいのですが、そんな二人を視ているもう一人の女の子の存在があることで、同時にとても切なくもある、というシーンが印象に残りました。
C【今泉!】役者・今泉力哉の存在感に浸れ
監督:吉川鮎太×音楽:ベントラーカオル
『Groovy』
「サッドティー」「退屈な日々にさようならを」の今泉力哉監督が、怪しい音楽研究家として登場する異色のフェイクドキュメンタリー。
人間を自殺から救うものは音楽であるという考えのもと、究極の音楽を作ろうとする男が行き着いたのは、妻の感じるエクスタシーを音楽に変換するという驚異の方法だった。
そこで、妻の裸体から音楽を引き出すシーンのぶっ飛んだ映像もさることながら、自分には妻を感じさせるのは無理だと気付いてしまった男は、たまたま出会ったストリートミュージシャンに妻を抱いてくれと頼む…という、驚愕のストーリーが展開してしまう、はっきり言ってカルトムービーだと思います。
どういう頭をしていたらこんな物語を思い付いてしまうのだろうかと思いますが、こういう実験的な作品が生まれるのも、MOOSIC LABらしさだと思います。
監督:破れタイツ×音楽:マチーデフ
『破れタイツのビリビリラップ』
ラッパーのマチーデフさん演じるラップが得意なタクシー運転手のタクシーに、映画監督コンビの破れタイツの二人が乗り込んできて巻き起こるドタバタコメディ。
タクシーの中で繰り広げられる3人の会話がどんどんラップみたいになっていき、最終的には破れタイツのラップのMVへと繋がっていくのもMOOSIC LABならではの遊び心で楽しかったです。
それにしても、「101回目のベッドイン」の監督の破れタイツの二人ばかりでなく、マチーデフさん主演「ライブハウスレクイエム」の松本卓也監督、「サッドティー」「退屈な日々にさようならを」の今泉力哉監督、「あんこまん」の中村祐太郎監督、さらには小林勇貴監督、西村喜廣監督、鈴木太一監督まで登場するという、色んなMOOSIC LABに縁のある映画監督たちが大集合していて、ファンにはたまらないお祭り映画みたいなところも本当に楽しかったですね。
D【躍動!】密やかに、強く刻まれるビート
監督:小川紗良×音楽:黒さき海斗×E TICKET PRODUCTION
『BEATOPIA』
海の美しい田舎町、鹿児島県阿久根市を舞台にした、ラッパーを夢見る二人の高校生男子と、阿久根市を舞台にした映画を撮るためにやってきた女性監督の出会いを描く。
ラッパーの黒さき海斗さんがラッパーの高校生を演じ、また、小川紗良監督が映画に登場する映画監督を(おそらく本人役で)自ら演じています。
家業を継ぐべきかどうかに迷う高校生と、引きこもりで不登校の高校生が、ラップによって仲良くなっていき、さらにそれが女の子の映画監督との出会いによって、さらに物語が魅力的になっていくという、人間と人間の出会いを感動的に描いているのがすごく素敵だなと思いました。
小川紗良監督がカメラを町の風景や人々の暮らしを手持ちカメラで撮っていくシーンは、ちょっとドキュメンタリー映画っぽくもあって、それが二人の高校生が登場する物語と出会うという面白さもあり、人間の出会いばかりではなく、映画と音楽の出会いを魅力的に描いているのは、MOOSIC LABならではだと思いました。
映画全体に夏休みの爽やかな雰囲気がいっぱいに広がり、真冬にこの映画を観たにもかかわらず、映画を観ている時だけは夏休みの気持ちになれたことも、とても素敵でした。
監督:阪元裕吾&辻凪子×音楽:フライデイフライデー
『ぱん。』
主人公の女の子が働くパン屋には、個性的なお客さんが次々とやってくる。
ある日、パワハラな店主と喧嘩して逃げ込んだパン屋の地下室では、なんと奴隷たちが歌いながらパンを作らされていた!
奴隷たちとともにパン屋を脱出した彼らに未来はあるのか?パン屋の運命は?という、何もかもがぶっ飛んだストーリーが超ハイテンポ、ハイテンションで展開していく。
ストーリーだけでなく、登場人物もセリフも映像も演出も何もかもがぶっ飛んでいて、めちゃくちゃなことが次々起こるのに最終的にみんなでパンを食べて幸せになるという、何が何やら意味が分からないけど、ひたすら楽しい映画、笑えます!
また、こんなにもぶっ飛びハイテンション映画なのに、音楽だけは癒し系というのも変なバランスで面白いですね。
E【少女!】永遠のシティガールたちの想い
監督:首藤凜×音楽:POLTA
『なっちゃんはまだ新宿』
高校生の秋乃、同級生の岡田くんに恋をしているが、岡田には他校に「なっちゃん」という彼女がいる、そんな秋乃の日常の中に、まだ一度も会ったこともないはずのなっちゃんは何度も不意に現れては消えていく、そして時は流れ大人になった秋乃の前に、もう一度なっちゃんが現れる…
なっちゃんを巡るストーリーは、一見すると矛盾してるようにも見えるけど、主人公の秋乃の中では、というか監督の中では、矛盾も何もないんだろうなあ…というか、矛盾したまま生きている人間の頭の中をそのまま映画にしたんだろうなあ…という印象を受けました。
なっちゃんは何者なのか?という一番大事な部分が、どこまで妄想でどこまで現実かがはっきりしていない映画なんですが、おそらく意図的にはっきりさせていないのでしょう。
そこが好き嫌い分かれる部分だと思うんだけど、僕は「昔の出来事にいつまでもこだわってしまう時のあの切なさ」に「あー分かる!」って共感してしまいました。
あと、なっちゃんを巡るどんでん返し的展開が2回あるのですが、どちらも不意を突かれる感じで感動しました。
全体的に、心の中に隠していた部分を不意に突かれてしまうような気持ちになる映画だと思います。
監督:篠田知典×音楽:Homecomings
『左京区ガールズブラボー』
京都を舞台に描かれる、二人の女の子の毎日。
川沿いの美しい風景や、レコード屋やライブハウスなど、自然や文化の溢れる京都ならではの魅力が、画面全体から漂っています。
特に二人が京都のライブハウスへHomecomingsを観に行くシーンは、ライブを見に行くワクワク感が伝わってきて、MOOSIC LABならではの魅力だと思いました。
また、二人の女の子のことは基本的にすごく可愛らしく描いているのですが、短い上映時間の中で、二人の気持ちや関係性の微妙な変化がしっかり描かれていたのは良かったです。
一度すれ違った二人がもう一度向き合うまでをさりげなく描き、余韻を持たせて終わるラストカットも切なさと爽やかさが同居していて良かったです。
以上、『MOOSIC LAB 2017 新潟編』10作品の僕なりの感想でした。
今年も面白い作品にたくさん出会えて良かったです。
新潟では観られなかった作品も、いつか観られる機会があればいいなあと思います。
今後もMOOSIC LABを楽しみにしています。