12/27(月)、シネ・ウインドで「幕が下りたら会いましょう」を観てきました。
家業の美容院をなんとなく手伝いながら売れない劇団をダラダラ続けている麻奈美は、過去のある出来事を理由に気まずい関係のまま疎遠になっていた妹・尚の突然の死を知る。
やり直せない過去への後悔を抱えたまま、それでも先に進むために数年ぶりに演劇をやろうと決めた麻奈美の、迷いながらも生きていく姿を描いたドラマ。
冒頭、実家の美容院を手伝っている麻奈美と、上京していく尚の別れの場面からして、この2人、絶対過去に何かあったな…という気まずい雰囲気が漂っている。
そこから時間が飛んで、尚の訃報、葬儀の場面と続くのですが、時系列を微妙に前後させて登場する、尚が死の直前にかけてきた電話を麻奈美が無視していたエピソードが、さらに後悔を強める。
しかも麻奈美は、尚が死んだ日に、劇団員達との飲み会で実際は何年も演劇をやってないのに酔っ払って口ばかりデカいことを言っていた。
その場面が、麻奈美が尚の死後にその日を思い出すかのように登場するので、なんてダメな奴なんだ…という麻奈美の後悔と自己嫌悪と痛々しさが、まるで自分のことのように伝わってくる。
また、麻奈美の様々な回想シーンの中で、過去に行った演劇にまつわるある出来事がきっかけで、麻奈美と尚が気まずくなっていたことが次第に浮かび上がってきます。
そして、尚の遺品整理で上京した麻奈美は、尚の死の意外な真相を知らされたり、同時に思いがけない出会いがあったりしたことがきっかけで、妹の死を乗り越えるために演劇をすることを決意するのだが…
…と思いきや、そのままストレートに「演劇をやろう!」という風に物語は進んでいかないところがこの映画の面白いところ。
ここも詳しくは書かないけど、誰かから決められた道ではなく、迷いながらも自分の気持ちや過去の後悔と一つ一つ向き合いながら、自分の意志で生きていこうとする姿を描いた物語になっていて、そこに人間らしさを感じました。
少しずつ過去の回想や、当時を知る人達の真相が描かれることで、次第に麻奈美の気持ちや尚への気持ちを浮かび上がらせ、だからこそ最後に登場する「戻りたい夜が多すぎる」という台詞が胸に刺さりました。
それでも前に進むために行動を起こす必要がある時が人にはあって、麻奈美の場合はそれが演劇だったし、そこに至るまでの途中の行動の一つ一つはとてもカッコ悪いけれど、すごく大切なことだと思うし、そうしないと先に進めないという気持ちも凄く分かりました。
周りからしたら「そんなことやって何の意味があるの?」と思われそうな非効率な行動の一つ一つが、その時の麻奈美にとってはすごく必要なこと、というのがすごく理解できる。
そして、そんな麻奈美を決して甘やかすわけではなく自然に受け止める母親や友人の存在も、とても温かった。
主演の松井玲奈さん、うだつの上がらないアラサー演劇人の雰囲気が出ていて良かったです。
実際演劇が好きらしいし、元SKE48の方だけど、当時から10年近く経って、年齢的にもちょうどぴったりの役だったのかも知れません。
そして何より、そんな彼女の友人役の日高七海さん、素晴らしすぎないですか。
あの、ドライだけど一番近くで支えてくれてる感じ、絶妙でしたね。
余談ですが、松井玲奈さんは「はらはらなのか。」、日高七海さんは「無限ファンデーション」という、どちらも演劇を題材にした映画に出演していて、その2本が好きな自分はこの2人が同じ劇団員という役で共演していたのにはぐっとくるものがありました。
演劇で起こる人間ドラマを描いた映画、好きなんですよね。