
7月27日から9月29日まで、新潟市美術館で開催中の山口晃展。

僕は、9月18日(水)に行って来ました。
山口晃さんの絵を初めて見たのは、昨年12月に万代島美術館の「ジパング展」でした。
その時、僕は大きな絵の中に古今東西の面白いものがぎっしり詰まった山口晃さんの世界にすっかり引き込まれました。
なので、今回の山口晃展は非常に楽しみにしていました。
という訳で、感想書いていきます。
今回の展示では、山口晃さんのお得意の巨大な日本画っぽい絵、小説の挿絵、鳥観図、などに分かれていました。
まず最初は日本画っぽい絵なんですが、「っぽい」と言うのは理由があります。
山口晃さんの絵は、ぱっと見ると、戦国時代の絵巻物や、江戸時代の屏風絵みたいに見えます。
が、よく見ると、そこには歴史に出てくるような武士や着物の人々に交じって、昭和風の建物や人々、現代風のサラリーマンや女子高生、ビル、車やパソコンなどの電気製品、近未来SFに出てきそうなロボット、外国人、やたら漫画っぽいキャラ、骸骨などの妖怪などなどが、しれっと描かれているんです。
なんと言いますか、絵巻物と、浮世絵と、屏風絵と、昭和モダンと、現代風刺画と、木造建築と、現代建築と、ロボットアニメやスターウォーズやスタジオジブリなんかに出てきそうなメカ描写と、ギャグ漫画と、そういう古今東西の面白いものが共存する、まさにカオスな世界。
しかも、例えば金髪の現代風の若者が鎧を着ていたり、馬とバイクが一体化していたり、からくり人形風のロボットが出て来たりと、色んな世界、時代のものが融合した独自のキャラクターたちが出て来ます。
そんな奴らが一枚の絵に所狭しとぎゅっと凝縮されていながら、不思議な統一感があるところが、山口晃さんの絵のすごいところ。
探せば探すほど見所ばかりで、一枚の絵だけで何分間も眺めていられるような魅力があります。
次の物語の挿絵では、歴史物語なのに、部屋の柱にはタイムカード、海辺には原発、夜道を自販機が照らす、などの遊び心を盛り込みながらも、ちゃんと物語の雰囲気を保っている、というか寧ろ物語を引き立てているあたりが流石です。
また、その時代の画風と、その時代には絶対に存在しなかったであろう現代アート的な技術を融合させて、古いのに新しい世界を作っていて面白かったです。
その後の鳥観図では、江戸時代の町並みを描くような画風で、現代の日本橋、六本木ヒルズ、大阪、などを描いていました。
ここでも、現代の風景なのに、現代とも江戸時代ともつかない人々、と思いきやビルはどこか近未来的、SF的なメカっぽさを漂わせるという山口晃っぽさが全開でした。
これに加えて、「澱エンナーレ」という、山口晃さんの特別展示もありました。
これはトリエンナーレのパロディで、芸術祭を山口晃さんが一人で行ったというもの。
山口晃さんの心の中に澱のように蓄まっていくちょっとしたアイディアたちを、まとめて作品にしてみたから、澱エンナーレらしいです。
このアイディアというのが、一つ一つを見ると本当に何というか、ふとしたはずみに何とな~く思いついちゃったんだろうなぁ~っていう、ぶっちゃけて言うとバカバカしさ全開のものだったりしました。
しかし、それを大々的に作品にしてしまうという作品作りに対する情熱は本当に尊敬に値します。
そして、そんなバカバカしくも情熱に溢れた作品たちが一堂に集結する様は圧巻でした。
例えば、美術館にもともとある壁の前にモニターが置いてあり、そこには「メイキング」として美術館の人が壁を動かす様子が映っているだけだったり。
また、美術館にもともとあるスイッチや装置が集まっている壁の一角を額縁で囲み、それを作品と言ってみたり。
そう、気付けば美術館までもが山口晃の作品に!
そんな挑戦的とも悪ふざけとも取れる作品などがありました。
中でも面白かったのは、一枚のキャンバスに鉛筆で小さな同じ絵がたくさん描かれているもの。
これ、どうやって描いたのかって言うと、木枠に数十本の鉛筆を取り付け、木枠を一度動かすだけでたくさんの絵を同時に描ける装置を作って描いたのでした。
横にその装置も展示されていたんですが、本当に、そんなバカバカしい装置をしっかり設計し、時間と手間暇かけて計算して真面目に作っちゃうのがすごいです。
しかも、実際その装置を使って絵を描くってかなり高度な技術が必要な訳で、ここまで来るともう激しい執念を感じます!
一枚の巨大な絵の中に、古今東西の様々なアイディアを緻密に一つ一つ丁寧に描いていったり、バカバカしいアイディアをとことん掘り下げて技術と情熱を注ぎ込んだり。
こんな、一つ一つの作品に対する人間離れしたこだわりこそ、山口晃さんの魅力なのかなと思ったりしました。
山口晃展、最高でした!
