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書き下ろし特別短編「続・彼女 NEVER SAY GOODBYE」第五話!

2012-02-15 23:37:36 | 小説
熊谷千尋・書き下ろし特別短編


続・彼女 NEVER SAY GOODBYE」


今夜は第五話!!



(この物語は、先日再会した、僕の友人Nの体験談に着想を得て僕が書き下ろしたものです。)




前編である「彼女」はこちらから。
あの時こうしていれば。あの日に戻れれば。あの頃の僕にはもう戻れないよ。

その続編(つまり本作品)「続・彼女 NEVER SAY GOODBYE」の第一話はこちら。
書き下ろし特別短編「彼女」、続編開始。連載小説にはいままでのあらすじが欠かせない。

第二話はこちらから。
書き下ろし特別短編「続・彼女 NEVER SAY GOODBYE」第二話!

第三話はこちらから。
書き下ろし特別短編「続・彼女 NEVER SAY GOODBYE」第三話!

第四話はこちらから。
書き下ろし特別短編「続・彼女 NEVER SAY GOODBYE」第四話!




それでは、どうぞ。






結婚式の開始が近づく中、僕は彼女が式場に入ってくるのを見逃さなかった。
彼女と並んで席に着いた男性こそ、彼女の夫に違いなかった。

初めて見る彼女の夫は、僕よりも年上で、いかにも真面目そうな風格を漂わせていた。
そして彼女の手には、まだ産まれたばかりの赤ん坊が抱かれていたのだ。



ふと、彼女と僕の目が合った。
思わず視線をそらし、手元に置かれた進行表にもう一度目を通す。

彼女の周りにいるのは、同じ大学時代の友人達だ。
彼女に話しかけたり、子供を可愛がったりしている。

どさくさにまぎれて話してしまいたいとも思ったけれど、今日の僕は司会者。
開始までの数分間、今日の段取りを何度も頭の中で繰り返して過ごした。



ついに結婚式が始まった。
僕は軽く自己紹介をすると、新郎新婦の二人が登場し、会場に拍手が起こった。

Tから「ラジオ番組みたいな結婚式にして欲しい」と言われた通り、僕が選曲したBGMをかける時も、一曲ずつ紹介した。
祝電は、まるで番組に届いたリクエストを紹介するように読み上げたし、友人代表の挨拶も番組にゲストが登場したように演出した。

僕が新郎新婦に結婚に至るまでの経緯をインタビューするトークコーナーや、質問のコーナーもあった。
二人の発言に、会場は笑いに包まれる。
彼女も笑ってくれているのだろうか。



その後、お色直しの時間となった。
二人が会場を出ていくと、僕はDJらしくBGMを流した。

二人が戻ってきたら、いよいよ余興の時間だ。
僕が一番力を入れて準備した時間だ。

みんなは談笑しているが、僕一人だけが司会席で緊張していた。
落ち着くために、ペットボトルの水を一口飲む。



しばらくして、予定通りお色直しの時間となった。
先程よりもいっそうきらびやかな衣装に身を包んだ二人に、拍手が起こる。

僕はそんな二人の登場を実況しながら、次の余興に向けて心の準備をしていた。
新郎新婦が着席すると、二人はあらためて挨拶をし、写真撮影の時間が終われば、いよいよ余興の時間だ。



T「突然だけど、今日は素敵な二人の結婚を祝福するために、スペシャルゲストからのメッセージが届いています。みなさん、スクリーンをご覧ください!」



僕がそう言うと、段取り通りにスクリーンに映像が投影された。
その瞬間、何人かの出席者から驚きの歓声が上がった。

そこに映し出されていたのは、日本でもよく知られているアメリカを代表する世界的ミュージシャンだった。
すると、その男はゆっくりと言った。



「結婚式にお集まりの皆さん、こんにちは。ジョン・ボン・ジョヴィです」





つづく。
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2 コメント

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遠く、儚く、愛しいもの (七色仮面)
2012-02-19 13:15:59
彼女と目が合い、進行表に目を落とす、
そして一旦式の本番になれば、彼女に目もくれず、そこにいるのに遠い彼女へ思いを馳せる。。。
プロ魂みたいなものを感じるね。
返信する
ビジネスと色恋を一緒になさらぬよう (ローメン)
2012-02-20 00:21:50
>七色仮面

あ、本当だ!
あらためて読み直して、Nくんは式が始まる前は彼女のことを気にしているのに、式の最中はほとんど気にしてない!
自分で書いてて気づかなかった。
やっぱりプロだなコイツは。

そして途中でペットボトルの水を飲む下り。
読んだNくん本人に言わせると、「これ、絶対いろはすだよね」
返信する

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