舞い上がる。

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書き下ろし特別短編「続・彼女 NEVER SAY GOODBYE」第四話!

2012-02-14 22:00:05 | 小説
熊谷千尋・書き下ろし特別短編


続・彼女 NEVER SAY GOODBYE」


今夜は第四話!!



(この物語は、先日再会した、僕の友人Nの体験談に着想を得て僕が書き下ろしたものです。)



前編である「彼女」はこちらから。

あの時こうしていれば。あの日に戻れれば。あの頃の僕にはもう戻れないよ。

その続編(つまり本作品)「続・彼女 NEVER SAY GOODBYE」の第一話はこちら。
書き下ろし特別短編「彼女」、続編開始。連載小説にはいままでのあらすじが欠かせない。

第二話はこちらから。
書き下ろし特別短編「続・彼女 NEVER SAY GOODBYE」第二話!

第三話はこちらから。
書き下ろし特別短編「続・彼女 NEVER SAY GOODBYE」第三話!



うわーい、まだだ、まだ終わらんよ……
張り切ってどうぞ!






三年振りの日本だった。

ラジオの収録を終えると、その翌日にロスを経った。
次の収録までに帰ってくる予定だ。
バーでのアルバイトは一週間の休みをもらった。

関西国際空港に降り立ち、そこから友人Tの結婚式会場である京都に向かう。
京都駅を出てバスに乗ると、見慣れた街並みが続く。

学生だった僕は、この街でTという親友と出会い、そして彼女と出会った。
Tや彼女と入った店の前を通る時には、思わず懐かしさがこみ上げてきた。



そんなTが、これから結婚式を挙げる。
考えれば考えるほど不思議な感じがする。

この結婚式には、彼女もやってくるのだ。
そんな彼女は、三年前に結婚した。

あれ以来、僕は彼女と連絡を取ってはいない。
どんな顔で会えばいいのだろうか。



そんなことを考えているうちに、バスは町はずれの結婚式場へと到着した。
フロントで名前を告げて荷物を預け、指定された部屋へと向かう。

司会ということで他の出席者よりも早めに到着したのだが、部屋の前には親族が集まり始めていた。
受付で名前を名乗ると、部屋へと通された。

数年振りのTとの再開だった。
再会したTは、緊張を浮かべた表情こそ昔のままでだったが、正装したその姿には、一人前の社会人らしい凛々しさがあった。



僕が部屋に入ると、Tは言った。



T「おおー!よく来たなー!」

僕「我ながらよく来たと思うよ。あ、改めまして、結婚おめでとうございます」

T「ははあ、ありがとうございます。いやー、よく来てくれたよ!本当ありがとな」

僕「いやいや、これは断れないっしょ。しっかし、Tが結婚かあ、なんか考えられないよなあ」

T「俺はアメリカ行ってラジオDJやってる奴の方が信じられねえよ」

僕「それもそうか」



僕らは三年振りの挨拶もそこそこに笑い合うと、さっそく今日の段取りに入った。



T「これが今日の日程。この前メールでも送ったけど読んでくれた?」

僕「ああ、一通り目は通したよ。一応使いたい音源は全部持ってきたんだけど、それも俺がやればいいの?」

T「それは、ちょっと待って、式場の人に聞いてくるわ。ちょっと待っててくれ!」



慌てて立ち上がるTに、僕は言った。



僕「あ、それとついでに……流して欲しい映像があるんだけど、それも出来るか聞いておいてもらっていいか?」

T「映像?何だよ聞いてないぞ。何流すつもりだよ」

僕「へへ、サプライズってやつだよ」

T「何だよそれ。まあ、分かった、聞いておくわ」



そう言って慌てて部屋を出ていくTの後ろ姿を見て、ああ、いつものTだなと思った。
数分後、Tは戻ってきた。



T「聞いてみたんだけど、段取りは決まってるから、どのタイミングで流すか言ってくれれば音楽は式場の人が流してくれるってさ。あと、映像もいいって。余興の時間でいいよな」

僕「ああ、それでいいよ」

T「それとさ、紹介が遅くなったけど、俺の婚約者の・・・」



そう言って彼が部屋の戸を開けると、美しい衣装に身を包んだ女性が入ってきた。
彼女こそ、Tの奥さんになる女性なのだ。

初対面のTの奥さんと、軽く挨拶を交わした。
並んで立つ二人はとても幸せそうに見えた。

Tの奥さんと会ったことで、急にこれから司会をするという実感が沸いてきた。
慣れてきたラジオ収録よりずっと小規模だけれど、久々に味わう緊張感だった。



その後、TとTの奥さん、式場の人と打ち合わせをし、会場へと入った。
僕が司会席にスタンバイし、開場の時間となる。

僕が選んだBGMが流れる中、親族や友人達が式場に入ってくる。
中には大学時代の友人もいて、おお久し振りじゃんなんて声をかけてくる友人もいた。



そんな中、僕は彼女が入ってくるのを見逃さなかった。
婚約者であろう男性と並んで席に着く彼女。
その腕には、まだ幼い赤ん坊が抱かれていたのだった。





つづく。
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2 コメント

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現在=過去 (七色仮面)
2012-02-19 13:07:47
友人の結婚式というのは感慨深いものがあるよな。
ちひろもいつか呼んでくれると信じてるよ
返信する
予定も無いのにマリッジブルー (ローメン)
2012-02-20 00:15:47
>七色仮面

俺ほど結婚が似合わない人間もいないとよく言われるんだよね。
自分でも思うんだけど。

因みにこの文章を書くに当たって、俺が昨年出席した友人の結婚式での思い出を参考にさせてもらった。
初めて出た結婚式だけど、本当に素晴らしいものだと思った。
それこそ、アメリカにいても日本までかけつけたくなるような。
返信する

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