熊谷千尋・書き下ろし特別短編
「続・彼女 NEVER SAY GOODBYE」
今夜は第二話です!!
(この物語は、先日再会した、僕の友人Nの体験談に着想を得て僕が書き下ろしたものです。)
前編である「彼女」はこちらから。
『あの時こうしていれば。あの日に戻れれば。あの頃の僕にはもう戻れないよ。』
その続編(つまり本作品)「続・彼女 NEVER SAY GOODBYE」の第一話はこちら。
『書き下ろし特別短編「彼女」、続編開始。連載小説にはいままでのあらすじが欠かせない。』
それでは、張り切ってどうぞ……
ロサンゼルスでの生活も三年が過ぎた。
今、僕はロサンゼルスでラジオDJをしている。
ラジオと言っても、小さなローカルラジオ局だ。
けれど、珍しい日本のDJとして少しずつであるがリスナーも増えているようだ。
僕の出演しているラジオ番組は、よくある音楽番組だ。
音楽を紹介したり、ロスでのライブ情報を告知したりするのが、主な内容だ。
放送は週に一回、出演者は、基本的に僕一人だけ。
極まれにロスでライブを行うミュージシャンにゲストとして出演してもらうこともあるくらいだ。
ラジオDJになった理由は、偶然の出会いだった。
ロスに来たばかりの僕は取り敢えず、学生時代に留学した時の知り合いを端から訪ねて回ることにした。
その時、ホームステイ先の家の主人の友達で、バーのマスターをしている男がいた。
留学中、何度か連れて行ってもらったバーだ。
アパートを決めた日の夜、そのバーを訪れた僕は、アルバイト募集の張り紙を見つけ、そこで働くことを決めた。
働きたいと頼み込むと、気のいいマスターは、翌日から僕をアルバイトとして雇ってくれた。
そのバーは近くにライブハウスがあることもあり、よくライブ帰りのミュージシャンが客として訪れていた。
もともとアメリカのロックが好きだった僕にとって、ミュージシャンとの会話を楽しめるこの職場は楽しい場だった。
そんな常連客の中に、ラジオ局の経営をしている男がいた。
もともとラジオの仕事に興味があった僕は、すぐに彼と意気投合した。
彼は僕が想像する以上に音楽に対する知識が豊富だった。
けれど彼は、立ち上げたばかりのラジオ局の経営に苦労しているようだった。
そんなある日、彼が新しい番組を作りたいと言った。
面白そうな話に思わず僕は、ラジオDJをするのがずっと夢だったと語った。
最初は冗談と笑い飛ばしていた彼だったが、次の日、僕をスタジオの見学に呼んでくれた。
初めて生でラジオのスタジオを目にした僕は、本気で彼にラジオのDJになりたいと頼み込んだ。
それから、DJとしての技術を一から勉強した僕は、番組スタッフという経歴を経て、昨年、ようやく念願のDJという職に就くことが出来た。
番組を始めてもうすぐ一年、今ではバーでアルバイトをしながら、週に一度、ラジオDJとして働く毎日だ。
学生時代、初めての留学でここに来た時は、慣れない英語にとまどったものだ。
今ではマイクに向かってジョークまじりにトークを披露するのも慣れたものだ。
毎日が刺激に溢れていて、充実した日々だった。
僕にとってロサンゼルスは、祖母の住む新潟の大江山に続く心の故郷だ。
そんなある日、日本から一通のエアメールが届いた。
宛名を見てみると、大学時代の友人、Tからだった。
さっそく封筒を開けてみると、それは結婚の知らせだった。
就職先で知り合った女性と、結婚が決まったのだと言う。
大学時代、よく一緒に過ごした友人が、遠く離れた日本で家庭を築くと思うと、感慨深いものがあった。
すぐさま祝福の返事を書いた。
するとその数日後、今度は僕のPCのメールアドレスに、Tからメールが来ていた。
読んでみると、Tは半年後に決まった結婚式で、僕に司会を頼みたいのだと言う。
「ラジオのDJしてるんだって聞いたよ。だったらこういうの得意だろ?交通費は出すからさ」
そんな言葉が並んでいた。
よくも日本から5000マイルも離れた場所に住む友人に、こんなに軽い言葉でものが頼めるものだ。
そう思ったが、一番の親友の結婚となると、やはり心が動く。
思えばこの三年間、一度も帰国していなかった。
散々迷った挙句、僕はTに一言、
「高くつくぜ」
と冗談交じりに返信を送った。
するとその翌日、Tから返信が来ていた。
そこにはこう書かれていた。
「実は言おうかどうか迷ってて言ってなかったんだけど、俺の結婚式の参加者にな……」
そこに続いていたのは、見覚えのある一人の女性の名前だった。
それは、かつて僕がずっと追い駆けていた彼女だった。
彼女と最後に電話で話したあの夜。
結婚すると決めた彼女を素直に祝福することも出来ずに電話を切った記憶が蘇ってきた。
「続・彼女 NEVER SAY GOODBYE」
今夜は第二話です!!
(この物語は、先日再会した、僕の友人Nの体験談に着想を得て僕が書き下ろしたものです。)
前編である「彼女」はこちらから。
『あの時こうしていれば。あの日に戻れれば。あの頃の僕にはもう戻れないよ。』
その続編(つまり本作品)「続・彼女 NEVER SAY GOODBYE」の第一話はこちら。
『書き下ろし特別短編「彼女」、続編開始。連載小説にはいままでのあらすじが欠かせない。』
それでは、張り切ってどうぞ……
ロサンゼルスでの生活も三年が過ぎた。
今、僕はロサンゼルスでラジオDJをしている。
ラジオと言っても、小さなローカルラジオ局だ。
けれど、珍しい日本のDJとして少しずつであるがリスナーも増えているようだ。
僕の出演しているラジオ番組は、よくある音楽番組だ。
音楽を紹介したり、ロスでのライブ情報を告知したりするのが、主な内容だ。
放送は週に一回、出演者は、基本的に僕一人だけ。
極まれにロスでライブを行うミュージシャンにゲストとして出演してもらうこともあるくらいだ。
ラジオDJになった理由は、偶然の出会いだった。
ロスに来たばかりの僕は取り敢えず、学生時代に留学した時の知り合いを端から訪ねて回ることにした。
その時、ホームステイ先の家の主人の友達で、バーのマスターをしている男がいた。
留学中、何度か連れて行ってもらったバーだ。
アパートを決めた日の夜、そのバーを訪れた僕は、アルバイト募集の張り紙を見つけ、そこで働くことを決めた。
働きたいと頼み込むと、気のいいマスターは、翌日から僕をアルバイトとして雇ってくれた。
そのバーは近くにライブハウスがあることもあり、よくライブ帰りのミュージシャンが客として訪れていた。
もともとアメリカのロックが好きだった僕にとって、ミュージシャンとの会話を楽しめるこの職場は楽しい場だった。
そんな常連客の中に、ラジオ局の経営をしている男がいた。
もともとラジオの仕事に興味があった僕は、すぐに彼と意気投合した。
彼は僕が想像する以上に音楽に対する知識が豊富だった。
けれど彼は、立ち上げたばかりのラジオ局の経営に苦労しているようだった。
そんなある日、彼が新しい番組を作りたいと言った。
面白そうな話に思わず僕は、ラジオDJをするのがずっと夢だったと語った。
最初は冗談と笑い飛ばしていた彼だったが、次の日、僕をスタジオの見学に呼んでくれた。
初めて生でラジオのスタジオを目にした僕は、本気で彼にラジオのDJになりたいと頼み込んだ。
それから、DJとしての技術を一から勉強した僕は、番組スタッフという経歴を経て、昨年、ようやく念願のDJという職に就くことが出来た。
番組を始めてもうすぐ一年、今ではバーでアルバイトをしながら、週に一度、ラジオDJとして働く毎日だ。
学生時代、初めての留学でここに来た時は、慣れない英語にとまどったものだ。
今ではマイクに向かってジョークまじりにトークを披露するのも慣れたものだ。
毎日が刺激に溢れていて、充実した日々だった。
僕にとってロサンゼルスは、祖母の住む新潟の大江山に続く心の故郷だ。
そんなある日、日本から一通のエアメールが届いた。
宛名を見てみると、大学時代の友人、Tからだった。
さっそく封筒を開けてみると、それは結婚の知らせだった。
就職先で知り合った女性と、結婚が決まったのだと言う。
大学時代、よく一緒に過ごした友人が、遠く離れた日本で家庭を築くと思うと、感慨深いものがあった。
すぐさま祝福の返事を書いた。
するとその数日後、今度は僕のPCのメールアドレスに、Tからメールが来ていた。
読んでみると、Tは半年後に決まった結婚式で、僕に司会を頼みたいのだと言う。
「ラジオのDJしてるんだって聞いたよ。だったらこういうの得意だろ?交通費は出すからさ」
そんな言葉が並んでいた。
よくも日本から5000マイルも離れた場所に住む友人に、こんなに軽い言葉でものが頼めるものだ。
そう思ったが、一番の親友の結婚となると、やはり心が動く。
思えばこの三年間、一度も帰国していなかった。
散々迷った挙句、僕はTに一言、
「高くつくぜ」
と冗談交じりに返信を送った。
するとその翌日、Tから返信が来ていた。
そこにはこう書かれていた。
「実は言おうかどうか迷ってて言ってなかったんだけど、俺の結婚式の参加者にな……」
そこに続いていたのは、見覚えのある一人の女性の名前だった。
それは、かつて僕がずっと追い駆けていた彼女だった。
彼女と最後に電話で話したあの夜。
結婚すると決めた彼女を素直に祝福することも出来ずに電話を切った記憶が蘇ってきた。
選曲や話が悪いと客から普通に罵られたり物投げつけられたりするらしい。
ギャラは安いし、いつ首になるか恐怖の日々。
それでも居座り続けてその人はやっと認められたそうな。
その人も、三年かかったという。
多分三年というのはちひろの創作だろうけど、そういうところが慧眼だと思う。
そうか、やっぱりアメリカでDJやるのはそんなにキツいのか。
三年もかかって……
……って本当に三年でDJになった人いるのかよ!
俺は「三年でDJになんかなれないだろうけど、小説だしそのくらい夢見ていいだろ」って感じでその設定にしたんだけど……
まさか本当に三年でDJになった人がいたとは!
小説の中じゃなくても、ちゃんと夢見て叶えてる人はいるんだな。
そっちの方が感動です。