舞い上がる。

日々を笑い、日々を愛す。
ちひろBLUESこと熊谷千尋のブログです。

書き下ろし特別短編「続・彼女 NEVER SAY GOODBYE」第六話!

2012-02-16 23:50:55 | 小説
熊谷千尋・書き下ろし特別短編

続・彼女 NEVER SAY GOODBYE」

第六話!!



(この物語は、先日再会した、僕の友人Nの体験談に着想を得て僕が書き下ろしたものです。)




前編である「彼女」はこちらから。
あの時こうしていれば。あの日に戻れれば。あの頃の僕にはもう戻れないよ。

その続編(つまり本作品)の第一話はこちら。
書き下ろし特別短編「彼女」、続編開始。連載小説にはいままでのあらすじが欠かせない。

第二話はこちらから。
書き下ろし特別短編「続・彼女 NEVER SAY GOODBYE」第二話!

第三話はこちらから。
書き下ろし特別短編「続・彼女 NEVER SAY GOODBYE」第三話!

第四話はこちらから。
書き下ろし特別短編「続・彼女 NEVER SAY GOODBYE」第四話!

第五話はこちらから。
書き下ろし特別短編「続・彼女 NEVER SAY GOODBYE」第五話!



もうちょっとだけ続くんじゃ・・・・・・






友人Tの結婚式で、僕が用意したサプライズ。
それは、ボン・ジョヴィのヴォーカル、ジョン・ボン・ジョヴィ本人からのメッセージ映像だった。



ジョン・ボン・ジョヴィ「急に僕が現れたからびっくりした人もいるかもしれない。何故僕がここにいるのか、それは今日の結婚式で司会をしているNから頼まれたからなんだ。彼とは同じラジオ番組に出させてもらったんだけど、Nとはその時仲良くなった。その時、Nが急に僕に頼んできたんだ」



そう、半年前のあの日、ロスのバーでスティーブは僕に大きな仕事を頼みたいと言ってきた。
それは、僕のラジオ番組へのジョン・ボン・ジョヴィの出演だった。

ちょうどその時、全米ツアー中だったボン・ジョヴィが、ロスでのライブを控えていた。
予想もしていなかった大物ミュージシャンの登場に最初は戸惑ったが、こんなチャンスは滅多にないと思い、引き受けることにした。

収録前の打ち合わせで初めてジョン・ボン・ジョヴィ本人に会った時、これは夢じゃないかと思った。
気付いたら僕は、今まで自分がどれだけアメリカの音楽が好きか、中でもボン・ジョヴィをどれだけ聞いてきたかを、熱く語り続けていた。

そんな僕に対するジョン・ボン・ジョヴィの返答は言葉の一つ一つが丁寧で、自分の音楽を、そして僕を冷静に見つめているようだった。
収録では、緊張していた僕をトークで和ませてくれるような寛大さも見せていた。



ジョン・ボン・ジョヴィ「最初は冗談かと思った。けれどNは真剣だった。NはDJの世界ではまだまだ素人だ。けれどNの音楽に対する強い想い、そして良い番組を作ろうという向上心は、本物だと思った。だから最後にはNの熱意に負けたよ」



映像の中のジョンは、あの日と同じ話し方で、会場のみんなに語りかける。
日本語字幕は、僕が編集ソフトを使って一ケ月かけて作った。



ジョン・ボン・ジョヴィ「Nは言った。これは僕の大切な親友の結婚式だから、誰も真似できないようなサプライズをやりたいんだってね。けれど僕は、Nのことは知っていても、結婚するNの親友のTくんや、その奥さんのことは何も知らない。だから僕は、会場にいるみんなに、僕の考えを聞いてもらおうと思う」



気付けば会場の誰もが、ジョン・ボン・ジョヴィを黙って見つめている。
もちろん、僕もその一人だ。



ジョン・ボン・ジョヴィ「結婚おめでとう。結婚は人生でとても大切な出来事だ。結婚する時は、誰もが不安になるだろう。けれど思い出して欲しい。今までだって君達はいくつもの不安を乗り越えてきたはずだ。失敗するかもしれない不安と戦いながら誰もが生きている。けれど失敗を恐れていたら何も出来ない。失敗を恐れずに新しい一歩を踏み出して欲しい。人生に迷った時は、自分の心に聞いてみて欲しい。本当に正しい道は何か。きっと答えは君達の中にあるはずだ。今日結婚した二人も、きっと正しい道を進んでいると僕は信じている」



ジョン・ボン・ジョヴィの話を聞きながら、僕は不思議な感覚に襲われていた。
まるでジョンが、僕に向かって話しかけているような気がしてきたのだ。

映像を編集しながら、何度となく聞いてきたジョンの言葉。
それは、三年間思い悩んできた僕に向けられている言葉にしか聞こえなくなっていた。



ジョン・ボン・ジョヴィ「幸せな二人の未来に、そして会場にいるみんなのために、僕から一曲、歌わせてもらってもいいかな」



そう言うと、スクリーンの中のジョン・ボン・ジョヴィはギターを取り出した。
会場にどよめきが起こる。



ジョン・ボン・ジョヴィ「聞いてくれ。NEVER SAY GOODBYE」



ジョンが歌いだすと、会場は歓声に包まれた。
式場が、さながらライブハウスになったようだった。



T「いやー、最高の式だったよ!最後のあれはびっくりしたよ!まさかジョン・ボン・ジョヴィが出てくるとはな!」



結婚式が終わり、ようやく自由の身となった僕に、Tが話しかけてきた。



僕「いやー、みんな楽しんでくれて嬉しいよ。頑張った甲斐があるよ」



周りのみんなも、口々に僕に話しかけてくる。
僕は言った。



僕「ところで、この後みんなどうするの?」

T「ああ、この後はそれぞれ希望者ごとに分かれて二次会だな。大学のメンバーで予約してあるから来てくれよな」



大学のメンバーと聞いて、はっと我に返る。
いつの前にか、さっきまで席についていた彼女の姿が見えない。



僕「なあ、アイツはどこ行った?」

T「ああ、アイツなら子供いるから先に帰るって……」



そこまで聞くと、僕は会場を飛び出していた。





つづく。
コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 書き下ろし特別短編「続・彼... | トップ | 書き下ろし特別短編「続・彼... »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
その人を知りたくば、その友を見よ (七色仮面)
2012-02-19 13:25:34
実際のジョン氏がどんな方なのかわからないが、N氏のプロ魂が彼にも伝わったのだと思うとなぜか俺が嬉しい。
いつかおれも「あのBLUESのちひろ」から祝電が来ますように……
返信する
Always (ローメン)
2012-02-20 00:26:13
>七色仮面

ジョン・ボン・ジョヴィは実在の人物だからな。
モデルのNくん曰く、「アメリカのロックミュージシャンでラブソングを歌わせたら彼の右に出る者はいない」そうだ。
そして私、結婚式での余興、承ります!!
返信する

小説」カテゴリの最新記事