今年の1月から月一で行っていくこにしたトークイベント「月刊おはなし図鑑」。
第二回は、2/18(月)に行い、映画監督の吉田麻希さんをゲストに、「エドワード・ゴーリー」の話を中心に、他にも色々な映画の話などもしました。
詳細は告知に書いてあります。
「【お知らせ】トークイベント「月刊おはなし図鑑」第2回ゲストは映画監督の吉田麻希さん!エドワード・ゴーリーについて話します!(2/18、ちず屋の2階)」
トークの動画は保存してあるので、こちらの記事からご覧になれます。
「トークイベント「月刊おはなし図鑑」第2回、吉田麻希さんエドワード・ゴーリーとコーエン兄弟を語る!終了しました!」
さて、1月にも書きましたが、このトークイベント「月刊おはなし図鑑」の目的は月一で一年間続けることと、一年間続けたら文章にして書籍化することです。
なので、今回もトークの内容を書き起こして、ブログで公開しようと思います!
トークイベント「月刊おはなし図鑑」第2回(2019.02.18 ゲスト:吉田麻希さん)
ちひろ 今年の1から月一で行っているトークイベント「月刊おはなし図鑑」の第2回を始めていきたいと思います。よろしくお願いします。ちひろBLUESです。
よしこ よしこです。
ちひろ で、ゲストが今日は吉田麻希さんに来てもらいました。ありがとうございます。
吉田 ありがとうございます。
(拍手)
ちひろ やった!お客さんからすげえ拍手がきたぞ!やったやった!という訳で、そんな感じでゆるくやっていこうと思います。第1回はバンカラロックフィルムスの千葉仁くんに来てもらって、ドラゴンボールを熱く語ってもらったという。
よしこ あれから我が家はドラゴンボール三昧なんだから。悟空が子供の頃からアニメで。
ちひろ 旦那さんがめっちゃ好きなんでしょ、ドラゴンボール。
よしこ いや、そんなにでもないんだけど、今一番ドラゴンボールに熱くなってるのが子供です。
ちひろ はっちゃんね。6歳、もうすぐ小学校。はい、そんなんやってまして。で、第2回目は、吉田麻希さんに、今、新津美術館でエドワード・ゴーリー展をやっているので、エドワード・ゴーリーについて話そうぜってやっていこうと思います。よろしくお願いします。
吉田 よろしくお願いします。
ちひろ で、始めていくに当たって、吉田さんも出てくれるのが初めてなので、とりあえず吉田さんの自己紹介的なことからやっていって。
吉田 はい。
ちひろ 前半はそんな感じでトークしていって、後半はエドワード・ゴーリーについて、映画監督としての熱い視点で語ってもらおうという。
吉田 ええ!はい!
ちひろ そんな感じでやっていこうと思います!よろしくお願いします!
吉田 お願いします!
(拍手)
ちひろ じゃあ、いいですか?自己紹介。
吉田 あ、分かりました。目線ってどこにやればいいんですか?
ちひろ 目線はお客さんかカメラか、ずっとよしこさん見て話してもらってもいいですけど。
よしこ ハハハハハハ!私、女子慣れしてないんだよね!
ちひろ ハハハハハハ!隣に女子がいるから今日は。
よしこ 隣に女子がいるからね。
ちひろ 緊張しちゃう。
よしこ 髪の毛を下ろす。
吉田 ハハハ!そんな!
ちひろ ガードするっていう。
吉田 じゃあ、自己紹介をします!
ちひろ お願いします!
吉田 吉田麻希と申します。大学生です、一応。ですが休学していて、映画を撮っています。どういう映画かと言うと。
ちひろ こちらです!
吉田 はい、「パンクロックベイビー」です。(チラシ)
ちひろ はい、ありがとうございます!
よしこ 主演女優賞とったの?
吉田 そうなんです。この子(チラシを指さす)、永井樹里さんが、去年の和歌山のKisssh-Kissssssh映画祭で、最優秀主演女優賞をとりました。
ちひろ おめでとうございます。
吉田 ありがとうございます。
ちひろ すごいですよね。一昨年だよね、上映したのは。
吉田 あ、そうですね。新潟で一昨年出来て、シネ・ウインドで上映させていただいて、そこからまたちょっと修正を加えて、去年映画祭に色々と出させてもらって、入選させていただいたりしていました。
ちひろ すごいですよね。
吉田 いや、とんでもないですよ。(ちひろに)出ていただいてますよ。
ちひろ ハハハ!そうでしたね。実は僕出てて、エキストラでね。
吉田 そうです。最初のシーン。
ちひろ あの撮影楽しかったですよね。
吉田 ああ、楽しかったですよね。
ちひろ すごい楽しかったです。
吉田 一番楽しかった撮影でした。
ちひろ ああ、そうなんだ。
吉田 はい、2日目にやったんですけど、新潟の人がいっぱい出てくれたんです。
ちひろ ゴールデンピッグスでね。
吉田 そうです。ゴールデンピッグスで最初と最後のライブのシーンを。という感じで、新潟で映画を撮ってます。
ちひろ はい、という吉田麻希さんです。で、せっかくなんで吉田さんのことを色々聞きたいんですけど。一昨年撮って、去年Kisssh-Kissssssh映画祭に行って、また新しい映画祭に呼ばれるって話をさっきちらっと聞いたんですけど。
吉田 ああ、そうですそうです。こないだ、愛知の大府映画祭に。
ちひろ 大府映画祭。
吉田 はい、大府市っていうところがあって、そこに行かせていただいて、2月末、来週ですね、神奈川の小田原に。
ちひろ へえ、じゃあ結構いっぱい行ってるんですね。
吉田 そうですね。この映画で色々と全国を回らせていただいて。
よしこ 映画祭って、映画祭に出たいです、じゃなくて、映画祭に来てください、なの?
ちひろ 向こうから来るものなの?
吉田 いや、違います。応募です。
ちひろ あ、そっか。
吉田 部門があって、締切があって、それまでに応募してくださいっていう。
ちひろ で、選考があって?
吉田 そうですそうです。(大府映画祭では)あの「百円の恋」の監督が審査委員長。
ちひろ 足立紳さん?あ、その人は脚本家か。
吉田 いや。武(正晴)監督。
ちひろ あ、武監督ですね。
吉田 武監督が愛知出身で。そんな感じで、その地域の出身の監督とかが審査委員長を務めてたりしていて。
ちひろ へえー。
吉田 ちょっと小田原さんは分からないんですけど、2月24日、小田原コロナで上映されるので。
ちひろ お!じゃあこれ見てる人の中に小田原の人、いるかもしれないのでね。
吉田 いるかもしれない!
ちひろ 是非、小田原に観に行ってください!
吉田 よろしくお願いします!
ちひろ 小田原に「パンクロックベイビー」を観に行こう!はい、こういうノリでやっていきましょう。
吉田 はい。
ちひろ ハハハハハハ!
吉田 ハハハハハハ!そんな感じでございます。
ちひろ じゃあ、「パンクロックベイビー」の話もしたところで!
吉田 したところで!
ちひろ 何を聞いていこうかなって感じなんですけど…今は、大学生をやりながら、映画監督もやっているってことですよね。
吉田 そうですね。
ちひろ 映画を撮りたいって思うきっかけとかはあったんですか?
吉田 ああ、それは、私、新潟大学に通ってるんですけど、映画倶楽部があって、映画を観る部活だと思って入って。
よしこ 映画を観る部活?
吉田 ハハハ!
ちひろ 観る部活だと思って入ったら撮る部活だったってことですか?
吉田 あ、そうですそうです!1年生強制的に4月に最初に撮らされる。
ちひろ へえー。ああ、そんな感じなんですね。
吉田 はい。撮れっていう。それで個人的に撮ったのが、映画を撮るきっかけでしたね。
よしこ へえー。
吉田 嫌々ながら始めたら楽しくて、2年生の時に「にいがた映画塾」の受講生になったり。
ちひろ なるほど。
吉田 3年生の時に、映画部の部長の千葉っていう男が。
ちひろ 千葉っていう男ね。先月出てくれた人ですね。
吉田 そうですね。千葉が、手塚眞監督を、「白痴」の。
ちひろ ああー!「手塚監督とオレたち」ってやつね!
吉田 そうですそうです!手塚監督に映画を教えてくれ!ということで、来ていただいて、教えていただいてっていう。
ちひろ ありましたね。「パンクロックベイビー」の前の年でしたよね。
吉田 そうですね。それが3年生の頃で、そのあたりからちゃんと外に出て撮っていきたいなと思って、4年の時にこの「パンクロックベイビー」を新潟の色んなところでロケしに行って、撮影してっていう感じで。
ちひろ なるほど。
吉田 それまでは、本当に大学の周りで撮ってるみたいな感じの撮り方だったんですけど。そういう変遷を経て、この作品が出来たと。
ちひろ 「パンクロックベイビー」が生まれたと。
吉田 はい、そういう感じでございます。色んな方との出会いのもと。
ちひろ 映画倶楽部に入るってことは、映画はもともと好きだったんですか?
吉田 そうです。映画を毎日1本ずっと観てました。
ちひろ 中高生の頃ですか?
吉田 小中高生ですね。
ちひろ じゃあもう、どっぷりですね。
吉田 小学生の時、一番観てましたね。時間があったので。家で毎日、帰って来てから、友達と遊ばずに映画を観るみたいな。ハハハ。
ちひろ ビデオとか借りてきて観るみたいな。
吉田 すごい田舎町で育ったんですよ。村みたいな。芋が有名な、芋しかないみたいな。
ちひろ 芋しかない町?芋しかない村?で育ったの?
吉田 言い過ぎたか。ハハハ!
ちひろ そんな村があるの?
吉田 メークイン発祥の、厚沢部町ってところで。
ちひろ 北海道の。
吉田 そうです。函館から1時間ちょっと離れたところにある町で育って。そこにまったくGEOとかもないし、インターネットも通ってない家だったので。あ、多分町には通ってるんですけど、家はまだ波に乗れてなくて。
ちひろ 近代化してなかったという。
吉田 そうです。なので、土曜プレミアムとか金曜ロードショーとか、ああいうのでやってるのを事細かく録画して、それで映画を観るみたいな、そういう感じで。
ちひろ 昔って今より結構やってたよね。
吉田 やってました。北海道、もっとやってるんですよ、新潟より。
ちひろ あ、そうなんだ。
吉田 深夜に結構やってて。深夜に「鉄男」とか、塚本(晋也)監督の。
ちひろ そんなんやってんの!?
吉田 「鉄男」とか、「害虫」とか。
ちひろ 塩田(明彦)監督の。
吉田 そうですね。日本のコアな、コアって言うんですかね、やってるんですよ。
ちひろ 北海道、尖ってるね、テレビ。
吉田 そういう感じで映画を観て。子供の頃に「ロード・オブ・ザ・リング」にハマったのが、本当に映画を好きになったきっかけですね。小1の頃に。
ちひろ 小1で「ロード・オブ・ザ・リング」に。
吉田 「ロード・オブ・ザ・リング」を、最終話「王の帰還」が上映されるってことで。
ちひろ あ、「王の帰還」の上映があるから色々やるのか。
吉田 そうですね。テレビで過去作をやってくださったおかげで、私も観ることが出来て。
ちひろ 北海道のテレビに感謝ですね!
吉田 ありがとう!ハハハ!
ちひろ 北海道の人が見てるかもしれないのでね!
吉田 っていう感じなんですね。映画を観てました。毎日観てましたね。毎日、2年間くらい観てました。
よしこ すごいね。
ちひろ 毎日違うのを1本ずつ観ていくみたいな。
吉田 そうですね。でも結局一番「旅の仲間」が好きですね。
ちひろ 1作目の。
吉田 はい、1作目の「ロード・オブ・ザ・リング」が好きで。それを300回くらい観て。
よしこ ええー!?
吉田 ハハハ!
よしこ おかしいんじゃないの!?
ちひろ 300回ってヤバいよね。
吉田 1作目をめちゃくちゃ観てましたね。
よしこ へえー!
ちひろ 「旅の仲間」好きな人はすごい好きですよね。どれが好きって結構分かれる気がするんだけど。
吉田 ああー。「王の帰還」はただただ長すぎる…
ちひろ ハハハ!確かに。
吉田 っていう欠点があるので、なかなか土日じゃないと観れないって考えると、平日は「旅の仲間」を観続ける。で、休日に備えるみたいな。
ちひろ なるほどね。
吉田 それを毎週毎週やってた感じですね。
ちひろ まさに「旅の仲間」で育った。
吉田 そうなんです。当時親友がみんな転校しちゃって、遊ぶ友達がいなくなっていって。
ちひろ 村からどんどん消えていって。村から子供が消えていく。
吉田 あれ、エドワード・ゴーリーっぽいな。
ちひろ ハハハハハハ!中つ国に消えていくわけですね。
吉田 なんかもうそんな感じで友達がいなかったので、人がいっぱい出るっていう、映画の中って。
ちひろ ホビット庄に人がいっぱいいるぞと。
吉田 そうですそうです!映画の中って基本、人がいっぱいいるじゃないですか。それがすごく嬉しかったんですよね。
ちひろ なるほど!映画に人は救われるんですね。
吉田 はい、本当にそういう感じでどんどん映画にどっぷりハマってましたね。
ちひろ 他には何かありますか?これはオススメみたいな。
吉田 ああ、これがオススメ、そうですね、結局は今好きだなって思うのは、ミッシェル・ゴンドリー。「エターナル・サンシャイン」っていう。
ちひろ ああ!はいはい。
吉田 結局そこに行き付きましたね。「エターナル。サンシャイン」がすごく好きです。
ちひろ 「ロード・オブ・ザ・リング」と「エターナル・サンシャイン」で育ったと。
吉田 そういうことですね。単純に、ドアを開けたら違う世界にいるっていうことが、どれだけ面白いかっていう。
ちひろ なるほど。
よしこ わりとファンタジーが好きなんですか?
吉田 あ、そうですね。物語自体のファンタジーに憧れて、今度は作り方のファンタジーに憧れたっていうか。
よしこ ふーん。
吉田 ファンタジーという点では共通してますよね。面白いですよね、一つの装置みたいなものが出来上がってて、「エターナル・サンシャイン」では。私が一番好きなシーンは、奥の扉の方から出て来て、奥の方が過去の記憶の話で、手前の空間が現実、現在で。それを、奥から人が手前に移動したってことで、過去を振り返って現実に戻ったっていう、その映像の空間を利用して、歩くごとに後ろからどんどん照明が消えていくっていう、そういうやり方が出来るんだっていう。そういう面白さを教えてくれたのが、ミッシェル・ゴンドリーですね。それで自分も撮る上で参考にさせていただいてる監督です。
ちひろ それが「パンクロックベイビー」に繋がったと。
吉田 繋がったかな?ハハハ!
ちひろ ハハハハハハ!「パンクロックベイビー」はファンタジーじゃないけどね。
吉田 青春ものなんですけど。で、最近観たのが、「ファースト・マン」デイミアン・チャゼルの。
ちひろ 今上映中ですよね。まだ観てないんですけど。
吉田 まだ観てないですか。
よしこ うん。
吉田 (カメラに向かって)「ファースト・マン」は、絶対観ろ!
ちひろ どのへんがいいんですか?「ファースト・マン」は。俺も観ようと思ってるんですけど。
吉田 えっと、この話って、アポロ11号で、アメリカが初めて月面に着陸して、第一歩を踏み出したっていう、そこのお話なんですけど。主人公が船長さんで。
ちひろ アームストロング船長。
吉田 その、(月面に)着面した時に、「この一歩は一人の人間にとってはとても小さな一歩だが、アメリカという国にとってはとても大きな一歩だ」っていう台詞が、映画の中でも言うんですけど、まったく映画の流れとしては逆なんですね。流れと言うか、映画が伝えたいことは逆だなって私は思いました。どれだけ、アメリカっていう大きい国が、宇宙計画に多大なお金をつぎ込んで、主人公もそれに乗っかって必死にやっていくわけなんですけど、でもこの一歩って、主人公の彼にとっては、物凄く取るに足らない一歩だった。
ちひろ なるほど。
吉田 大きく報道されて、テレビも「大きな一歩だ」って言って、彼の行動は私達の大きな一歩を作ったって言うんですけど、その一歩っていうものがどれだけ彼にとって小さな小さな一歩だったかっていう。宇宙のスケール感で、人間の小さな一歩を描いたっていうところが、とても素晴らしかったですね。で、それを、ウェルメイドな作品っていっぱいあると思うんですけど、そうではない、本当に小さな一歩をちゃんと、ハリウッドの大きな映画で、しかもIMAXの映画で描いてくれたっていうのが、私はすごく嬉しかったですね。
ちひろ なるほどねえ。IMAXで観たの?
吉田 はい、ニセIMAXなんですけど…大阪の。
ちひろ へえー。俺IMAXまだ観たことないんだよね。
吉田 ああそうなんですか。でも私も大阪っていうか、日本のIMAXって、ニセIMAXらしくて。
よしこ IMAXって何?
ちひろ ばかでかい3D映画。
吉田 で、音響がすごい鮮明で。
ちひろ 二階建ての家くらいどーんってスクリーンがあって。3D映画ってここ10年くらいでばーっと流行ってきたけど、今のところ一番いい3DはIMAXだって言われてる。
よしこ ふーん。
ちひろ でも俺は新潟にないので観たことない。
よしこ 4DXは観たけどねえ。
ちひろ 4DXは一緒に行きましたね。
吉田 そうなんですね。
よしこ 「雨女」とかね。
ちひろ ハハハハハハ!「雨女」はなんかすごい変なホラー映画だったよ。
吉田 4DXって揺れるやつですよね。
ちひろ 揺れるやつ。ユナイテッド・シネマ(新潟)にあるやつ。
吉田 あ、そうなんですか。まだ、逆にないっす。
よしこ 超楽しいよ。
吉田 本当ですか。楽しいんだ。
よしこ あの、映画本編は楽しめないかも知れないけど、アトラクションに乗ってるような。
ちひろ 何観たんだっけ。
よしこ 「パシフィック・リム」
吉田 それは面白そうですね。
ちひろ 4DXがやってくるぞって言って、過去の色んな映画を4DX版で上映した時の中の一つに「パシフィック・リム」があって。
吉田 へえー。
ちひろ 面白かったよね。
よしこ 面白かった。
ちひろ ただ映画よりもそっちに気がいっちゃうのはあったけど。
吉田 あ、なんか逆かもしれないですね。画面があってこっちが揺れるわけじゃないですか、4DXって。IMAXは、あまりにもでかすぎて、画面の振動が揺れないのにこっちに伝わってくるみたいな。画面からめちゃくちゃ伝わってくるのが、IMAXですね。
ちひろ なるほど。
吉田 で、それを最大限に活かしてるのが、「ファースト・マン」ですね。宇宙に行くまで、すごく揺れるわけですよ。もうとんでもない揺れなんですよ。
ちひろ ロケットが揺れてる感じを。
吉田 そうです。ロケット発射を、本当に体感させてくれた、っていうのが素晴らしい。
ちひろ へえー。
よしこ へえー。楽しそう。
ちひろ 自分が揺れてるわけではないのに。
吉田 ないのに、もう揺れてるっていう。
ちひろ すごい。行きたいけど、新潟にはないけど。でもやっぱり3Dで観た方がいいのかな。3Dはやってるんですよ、新潟の映画館。
吉田 ああー、そっか。まあでも、それぞれに面白さがあると思うんです。全部観てほしい、色んな形で。
ちひろ なるほど!2Dで観て、3Dで観て…
吉田 で、4DXで観て、IMAXで観て、どれが一番楽しいか。
ちひろ なるほどなるほど。全部制覇しようぜという。
吉田 はい、是非是非。
ちひろ それを一番体験できるのが「ファースト・マン」だと。
吉田 そうですね。そう思いました。で、泣きますね、最初のシーンで。
ちひろ へえー。
よしこ 最初で。
ちひろ 最後ではなく。
吉田 最初で泣く。怖いんですよ。あ、ネタバレになっちゃうけど。
ちひろ あ、じゃあギリのラインで。
吉田 その、宇宙の景色が一瞬見えるんですよ。でもそれって物凄く怖いことなんですよ。装備が全然宇宙用になってないシャトルでの、最初のシーンなので。どんどん物が浮いてって浮いてって浮いてってヤバいヤバいヤバい!っていう、その宇宙への恐怖をまず味わうっていう、最初のシーンで。そして、どうにか戻って、着陸した地球の地面が、なんと美しいことかっていう。
ちひろ あれ、「グラビティ」みたいだね。日本題は「ゼロ・グラビティ」
吉田 あ、そうですね。
ちひろ あれも確か3Dで。あれも宇宙怖い!ってなって。
吉田 そう!宇宙の恐怖!
ちひろ ああー、地球安心するー!っていう映画じゃないですか。
よしこ へえー。
吉田 やっぱり美しさを感じましたね、地球の。それを本当にすごく体感できるのが、「ファースト・マン」なんで是非、観てみてください!
ちひろ リアル寄りの宇宙SFは本当怖いよね。「2001年宇宙の旅」にしろ。
吉田 音でもすごく分かるんですよ。一気に鮮明な無音みたいなものを感じる。なんかもう、鮮明な無音って難しいですね。基本的に何か音鳴ってるじゃないですか。でも鳴ってないっていうものまでを、表現できるんですよ。
よしこ へえー。
ちひろ すごいね。
吉田 それがなおさら宇宙の怖さを表現してくれてましたね。
ちひろ 映画館で観ないとそれは体感できないね。
吉田 そう、家でガタガタ鳴られちゃ困るから。
ちひろ 映画館っていういい環境でやっぱり体感したいですね。
吉田 そうですね。
ちひろ 「ファースト・マン」を観て下さい!
吉田 「ファースト・マン」を!
ちひろ あ、そうだ。話が急に変わっちゃうんですけど、吉田さんの自己紹介つながりで、海外に行って来たっていう話も。
吉田 あ、そうだ!
ちひろ さっきちらっと聞いてて、それを聞くの忘れちゃってたんですけど。
吉田 そうだそうだ!フィリピンに行って来ました!これ(ジュースの粉の袋)見てフィリピン何で?って思うと思うんですけど。
ちひろ フィリピンには映画の関係で?
吉田 あ、いえ、映像の仕事で、お仕事で行って来たんですけど。
ちひろ 仕事してますねえ。
吉田 はい、ありがたいことに。もっとください!
ちひろ 是非!吉田さんに仕事を!
吉田 吉田麻希に仕事を!頑張りますんで!
ちひろ 新潟のパンクロックベイビーに仕事を!
吉田 で、さっき飲んだんですよ。フィリピンでは家庭でこの粉のジュースを飲むんですけど、めちゃくちゃ美味い。
ちひろ めちゃくちゃ美味かったです。
よしこ 美味い。
ちひろ 水に溶かして飲むんだよね。
吉田 そうです。1リットルの水にこの一袋を入れて飲むと、100%ジュースみたいに美味しい。
ちひろ めちゃくちゃ美味かったです。さっき僕らはパイナップルのジュースをね、始まる前に飲んだんですけど。
吉田 これ、60円とかそのくらいで買えちゃうんですけど、フィリピンだと。でもさっきAmazonで調べたら400円するんですよ。
ちひろ 日本だと400円する!
吉田 そうなんですよ!びっくりですよね、この一袋が。なので、是非フィリピンに行って買うとお得です。
ちひろ すごいね、フィリピンの思い出の一番が粉のジュース。
吉田 粉のジュースが美味しかったのと、あとこのピーナッツのお菓子がとても美味しいのと。アドモンマリ。向こうではこれおやつとして食べるそうなんですけど、ニンニクで炒めて、焼いて。すごい美味しいので、是非フィリピンに行ってみてはいかがでしょうか。
ちひろ そういう仕事もしてるんですね。映像のスタッフ?撮影班みたいな?
吉田 いやいやいや、そんな、そこまでは。留学のプランを体験しながら、映像を撮るみたいな。8月にまた行く予定です。ドキュメンタリーを撮る予定でまた行くので、また何かお土産を。
ちひろ あ、是非是非。
よしこ ハハハ!
ちひろ またこの番組にも遊びに来てください。
吉田 はい。そんな感じです。フィリピンにもIMAXありましたね。
ちひろ あ、そうなんだ!
吉田 はい。
ちひろ チクショウ!新潟フィリピンに負けてるじゃないか!
吉田 負けてるんですよ!
よしこ ハハハハハハ!
吉田 是非作ってほしい。
ちひろ そんなこんなやってるうちに、あと1分くらいかな?あと2分くらいですね、前半。あと2分くらいあるんで、後半はエドワード・ゴーリーの話をしていくんですけど、もうちょっと雑談でもしますか。何かありますか?話しておきたいこと。まあ後半で話してもいいけど。
吉田 ええと、すごいキリスト教文化でしたね。
ちひろ ああ、フィリピン。
吉田 本当にもう、ベニヤ板で作ったような家の横に、すごくきれいな協会が建ってるっていう。なんかちょっとアンバランスな。
ちひろ 色んな文化がこう、混沌としてるというか。
吉田 それほど宗教って大きいんだなあって。
ちひろ 日本にいると確かにあんまり感じないことですよね。
よしこ 最近ね、周りで、結婚生活10年くらいだけど離婚したっていう友達がいてね、宗教観の違いが原因だったの。
ちひろ へえー。新興宗教とか?
よしこ うん、まあそうだね。
ちひろ 意外なところに話が着地してしまったね。
よしこ そんな話を年に2回くらいは聞くんだけど。
ちひろ 同じ人から?
よしこ うん。でもそんな時しか宗教ってあんまり気にならない。
ちひろ 確かに日本に住んでるとね。
よしこ 日曜日に教会に行きますみたいなの、あんまりないじゃない。
吉田 宗教勧誘ぐらいでしか、私も認識しないですね。
ちひろ 宗教に詳しい人をいつか呼んで宗教トーク。
よしこ フフフ!
ちひろ 言ってるうちにもう時間かな。あと10秒ですね。そんな感じで、吉田さんと話してきましたけど、後半はエドワード・ゴーリーについてやっていこうと思います。
ちひろ はい、という訳で後半。この企画は毎回面白いテーマについて話していきたいなと思ってるんですけど、今ちょうど新津美術館で、エドワード・ゴーリー展をやっていて、エドワード・ゴーリー展のポスターもよしこさんが持って来てくれたんですけど、エドワード・ゴーリー、いいんじゃないかと思って、テーマにしたんですよ。実は同じ日に見に行ったんですけど。
吉田 あ、そうですね。
ちひろ オファーした時にエドワード・ゴーリーやりたいんで、一緒に見に行きましょうって言って、見に行ったんですけど。
よしこ 一人で行ったんだけど。
吉田 ハハハ!
ちひろ ハハハ!俺2回行ってるからね。そのあともう1回一人で。
吉田 すごい。
ちひろ という訳で、エドワード・ゴーリーについて話していこうと思います。
吉田 はい。
ちひろ エドワード・ゴーリー、軽く調べてきたんですけど、1925年から2000年まで生きていた、アメリカの絵本作家ですね。もともとは挿絵を描いたりしていたらしいんですけど、1953年の「弦のないハープ」という作品でデビューしてから、すごい不思議な絵本をたくさん描いていて。作風は、ちょっと残酷な描写が出てきたりとか。
よしこ 大人向けのダークな絵本ですよね。
ちひろ そう、大人向けのダークな絵本。黒いペンですごく緻密に書かれた絵が魅力的だったり、でも残酷なんだけどちょっと中毒性があったり。そんな絵本を描いてる人です。
よしこ うん。
ちひろ で、それについて話していこうぜという。
吉田 はい。
ちひろ と言うのが、この時間でございます。
よしこ 学生時代の、ちょっと病んでる時に、ゴーリーの絵本に出会ったので、すんなり入れたのかな。ゴーリー知ってる人はすごい好きだけど、知らない人は全然知らないじゃん。
ちひろ 人気ではあるんですよね。だって俺、こないだヴィレッジヴァンガード、新潟万代の、に行ったら、エドワード・ゴーリーコーナーがあるんだよね。あんな雑然とした店内に。
よしこ フフフフフフ!
吉田 マジすか。
ちひろ あと、今日このトークライブやるために、ちょっと会場にエドワード・ゴーリーの本があったらいいかなと思って、図書館で借りて来ようと思ったら、もうほとんど借りられてるの。
吉田 ええー!
ちひろ で、2冊くらいしか借りられなくて、中央図書館で。
吉田 ええー、すごい。
ちひろ マジか!人気だ!まあこれ(エドワード・ゴーリー展)やってるからもあると思うけど。結構人行ってるみたいですね。僕2回行ったんですけど、2回とも結構お客さんが多くてびっくりしましたね。
よしこ (エドワード・ゴーリー展に)開店待ちして行ったからさ、パチンコ屋みたいに。
ちひろ ガチのファンじゃん!
吉田 え、すごい!1日目ですか?
よしこ ううん、1日目じゃないですけど。私と、もう一人すごく熱心に絵を一枚一枚見る人が。
ちひろ ガチファン。エドワード・ゴーリーのガチファンが。
吉田 そうなんだ。
ちひろ (エドワード・ゴーリーには)学生時代に出会ったの?
よしこ うん。高校くらいかな?
ちひろ 早い!ゴーリーデビュー早いね。
吉田 漫画に行きがちじゃないですか、高校時代って。絵本に行くってなかなかないんじゃないかなって思うんですけど。
よしこ ああ。でも吉田ちゃんもさ、現代の子供じゃない感じじゃないですか。毎日映画観たり。
吉田 ああ、そうですね。
ちひろ 確かに、小学生の時に最初にハマったのが「ロード・オブ・ザ・リング」と「エターナル・サンシャイン」。
よしこ 帰ってきたら取り敢えずWiiやってとかじゃないじゃないですか。
吉田 ああ、確かに、そうですね。そっかそっか。ハマるものはハマりますもんね。
ちひろ しかもさっき聞き忘れたけど、今二十代の前半ですよね。
吉田 23です。
ちひろ なのに、ナンバーガールの復活にめっちゃ熱狂していたという。
吉田 ああ!そうだ!本当におめでとうございます!(拍手)
ちひろ おめでとうございます!(拍手)
よしこ イエーイ!(拍手)
ちひろ 何でナンバーガールを今祝ってんだって感じだけどね。
吉田 ハハハ!本当に、ライジング・サン、故郷ですけど、北海道で、8月に。
ちひろ 行くんですか?
吉田 ああいや、行けないです。フィリピンがあるから。
ちひろ ああそっか。フィリピンがあるから。
吉田 フィリピンより愛を込めて、本当に楽しみにしてますんで、頑張ってください!
ちひろ もし見てたら、頑張ってください。見てるってどういうこと?って思うけどね。
吉田 本当に楽しみにしてます。
ちひろ (よしこさんが)学生時代にゴーリーにハマったって話から。
吉田 そうですね。ナンバーガールの世代じゃないのに。
ちひろ そういうものはありますよね。後追いで好きになっていくものはありますよ全然。そういう感じですけど、じゃあゴーリーの話に。
吉田 まず初めて読んだのは何だったんですか?
よしこ うんとね、初めては…(資料を手にする)
ちひろ あ、これ、日本じゃなくて、アメリカで出版された順になってる。
よしこ ああ~。
ちひろ 日本では、2000年くらいまで、ゴーリーって出版されてなかったみたいで。
吉田 ああ、そうなんですか。
ちひろ 翻訳されて、2000年くらいから売り出され始めたみたいですね。エドワード・ゴーリーの日本版のWikipediaを調べると、日本で出版した本しか載ってなくて、ほとんど2000年入ってからで。
よしこ はあ~。
ちひろ で、エドワード・ゴーリー亡くなったのが2000年じゃないかな。
吉田 えっ!?
ちひろ だから亡くなってから日本では流行り始めたらしいんですけど。
吉田 そうなんだ。
ちひろ でもアメリカとかでは、50年代から2000年くらいにかけてずっと売れてた。
よしこ へえー。
ちひろ でも死んだあと出た本もあるらしいですよ、アメリカで。
よしこ ああ、そうだね。何冊か置いてあって、立ち読みをその時バーっと本屋さんで。「うろんな客」とか「蟲の神」、「不幸な子供」、あと自転車のやつと。
ちひろ ああ、「優雅に叱責する自転車」でしょ。
よしこ 「華々しき鼻血」、「おぞましい二人」とかを。
ちひろ めっちゃ読んでるじゃんね。
よしこ 取り敢えず、一冊どれにしようかなって迷った時に、「おぞましい二人」を買った。
ちひろ 一番ヤバいやつだ。
よしこ フフフ!
吉田 え、何がヤバいんですか?
よしこ 実話を元に描いてる。
ちひろ 基本的に、ゴーリーって残酷なこと起きるけど、まあフィクションなんですよ。子供が死んだりとか不幸になったりする話があるけど、現実からちょっと距離を置いてというか、ちょっと一歩引いた視点から、何ていうか…
よしこ 淡々とね。
ちひろ 淡々と描いてるんだけど、でも「おぞましい二人」だけは本当に起きた事件を元にしているから。
よしこ 子供がどんどん消えたりっていう。
ちひろ そうそう、夫婦が連続殺人鬼だったっていう。で、「おぞましい二人」は、それをその夫婦の視点で描く。
吉田 夫婦の視点で!
よしこ お互いの子供の頃から描いてて。
ちひろ 子供時代から、こんな子供達が大人になって…
吉田 え、それめっちゃ面白そう。
よしこ めっちゃ面白いよ。
ちひろ どういう大人になって。出会って結婚して、でも子供が出来なくて、よし、子供を殺そうって何故かなって、殺しまくるっていう。それが淡々と。
よしこ 捕まったあとも淡々と描かれていたり。
ちひろ そう、捕まって、どういう死を迎えるかまでを、そういう何十年の出来事を、一冊の小さな本にまとめてる。
よしこ うん。
ちひろ で、物議を醸したらしいですよ、アメリカで発売された時に。こんな残酷な絵本を出版していいのかって。
吉田 ああ…
ちひろ それを買ったわけね。いちなり一番ディープなところから入ったみたいな。
よしこ なんか私それがね、その時立ち読みした中で一番きたね。
ちひろ ああ…なるほどね。
よしこ フフフ!
ちひろ 大学生の時に友達がいきなりエドワード・ゴーリーの絵本をヴィレヴァンで買って来たんですよ。
よしこ まずヴェレヴァンで買ってくることが、リアルが充実してそうな。
ちひろ ヴィレヴァンで買う人はリアルが充実してるんですか?どっちなんですか?
よしこ してそうじゃない?まずあんま病んでるとヴィレヴァン行かなくない?
ちひろ 何て言うか、お洒落サブカルのイメージですよね。
よしこ そうそうそう。
吉田 あ、そうなんですね。ヴィレッジヴァンガード。
ちひろ 雑貨屋さんと本屋さんが一体化したみたいなね。
よしこ 「不幸な子供」も結構好きだね。
ちひろ その友達は「不幸な子供」を買ってましたね。
よしこ ああ、いいね。
吉田 「不幸な子供」は…
ちひろ 女の子がいるんですよ。
吉田 ああ、この子か!(チラシを指さす)
ちひろ この子です。
よしこ 最初は裕福な。
ちひろ 裕福な家に生まれた子供が、家族が亡くなったりして、宿舎みたいなところに預けられて、そこでいじめられて抜け出した先で誘拐されて、どんどん体が衰えていって。
よしこ 真っ暗なところに閉じ込められて、視力が弱くなっていって、見えなくなって、そこからなんとか抜け出すんだけど、視力もないし体力もないから手さぐりで彷徨ってたら、自分の父親が乗る馬車に轢かれて死ぬ。
ちひろ そうそう、そういう身も蓋もない話。ネタバレもクソもないんで言うと、結構不思議なのが、絵本の冒頭で、お父さんが戦争で死んだという報せを聞いて、みたいなのが出てきて。
よしこ そうそうそう。
ちひろ でもそれが誤報なんだよね。実は生きてたお父さんが帰って来て、子供を探し回ってたら、轢いてしまうっていう。
よしこ でもあまりに変わっていたから姿が、自分の子供だって気付かない。
ちひろ それが、「不幸な子供」。
吉田 なるほど…なんか、なるほどですね。なんか、不幸って、結果的にそうなったから思うけど、そういう色んな一つ一つの誤差みたいなものの色んな積み重ねでなってたってことは、今、現時点で、不幸に私達が向かってる可能性もあるわけじゃないですか。
ちひろ 確かに。本当だ。
吉田 そういうものを感じさせてくれる素敵な作品ですね。
よしこ フフフ!
ちひろ いい視点!いい感想だ!すげえいい感想だ!
よしこ おお~。
吉田 本当ですか?
ちひろ そうだよ。そうだわ。不安にさせるみたいなことをさっきちらっと言ってたけど。
吉田 そうですね。美術展の壁にも、「不安にさせたい」みたいなことが書いてあったじゃないですか。そんなこと言う人に私、出会ったことがなかったんで、マジかと思って、どれもこれもやっぱり、そういう不幸な出来事ばかりが描かれてる。
ちひろ 大体そうですね。あの、猫が出てくる話とかは、大体猫を可愛く描いてるだけの本だったりするけど。猫が好きだったらしいんですけど。それ以外は大体そういう話ですね。あと不条理だったり。
よしこ ゴーリーは生涯独身?
ちひろ 独身。
よしこ ああ~…フフフ、ああ~って言ってしまった。
ちひろ 一説によると、「うろんな客」って話があるじゃないですか。変な奴が家にやって来て荒らし回ったけど、そいつがずっと住んでるっていうのは、子供に対する気持ちなんじゃないかって説もあるらしくて。
吉田 ゴーリーの?
ちひろ ゴーリーの、子供観があれなんじゃないかって説もあるって、「うろんな客」のあとがきに書いてありました。
よしこ ほおー。
吉田 そうなんだ。私、逆にあの黒い生き物。これですかね?(チラシを指さす)
ちひろ これですね。
吉田 これがゴーリー自身かなって思ってました。
ちひろ ああ~、なるほどね。
吉田 子供時代にそういう扱いをされたのかなゴーリーが、って思って見てました。疎外感とか、そういう風に思って。
ちひろ それも面白いですね。
吉田 何でこんなに不安な気持ちを共有したがっているんだろうっていう謎を、ずっと見てて感じましたね。
ちひろ なるほどね…結構よく言われるのが、ゴーリーは、マジで色んなものを怖がってる。世の中は不幸で満ちてる、みたいなのを、本当に怖がってるから、その気持ちで本を描いてたんじゃないかっていうことを、結構言われるらしいけど。
よしこ ふーん。
ちひろ それは解釈の一つなんですけど。だから、俺の不安をみんなに味わわせたいってのがあるのかなあとか思いながら僕は見てたんですけど。
よしこ フフフフフフ!
吉田 ふーん、なるほど…
ちひろ あ、じゃあせっかくなので。吉田さんが美術館に行って感想を言い合った時に、これはコーエン兄弟っぽいって言ったじゃないですか。
吉田 はい。言いました…本当に直感で。
ちひろ コーエン兄弟っていう、兄弟の映画監督がアメリカにいるわけですけど、エドワード・ゴーリーがコーエン兄弟っぽいっていう話をしてたから、気になって僕コーエン兄弟全然観たことなかったから、4本くらい観たんですよ。ぞしたら、あ、確かに分かる!って思って。
よしこ これ(資料)借りていい?
ちひろ どうぞどうぞ。コーエン兄弟メモってきました。
吉田 コーエン兄弟っぽいって思ったのは、それこそ、今Netflixで配信されてる「バスターのバラード」。
ちひろ 最近のやつですよね。
吉田 そうです。今回のアカデミー賞の賞レースで、狙えるかどうか。
ちひろ いいところまでいってるやつ。
吉田 で、これが、どんな話かって言うと、オムニバス形式で、色んな人間の死ぬ瞬間が描かれてるっていう。
ちひろ 悪趣味ですね。
吉田 どうやってこの主人公が死ぬかの過程が、一つ一つ章立てで描かれてて、それが、時代が、それこそゴールドラッシュの時代というか、そのぐらいの時代の人間の、この時代に人間はどういう死に方をしていたかっていう視点で、歴史がすごく学べるっていうお話になってるんですよね。
よしこ ふうーん。
ちひろ ああー、なるほどね。面白そう。
吉田 で、なんか、その子供がいっぱい色んな形で死ぬお話。
ちひろ ああ、どれだっけな…これだ、「ギャシュリークラムのちびっ子たち」。ABCで、Aの子供はこうやって死んだ、Bの子供はこうやって死んだ、みたいな、ただ単に子供が死んでいくっていう。不条理に、ドラマ性もなく、ページをめくるとただ子供が一人ずつ死んでいくっていう。それに通じるっていう。
吉田 そうですね。色んな死に方を見せてくれるっていう、そういう人ってあんまりいないような気がして。その点がすごく似てるなって。不条理なことにすごく関心があるって言うんですかね。っていう部分でエドワード・ゴーリーとコーエン兄弟がすごく似てるなって思ったんですよね。で、淡々と描かれるっていう。あと決してウェルメイドではない。主人公の感情に沿った物語では決してなくて、少し引いた視点で、淡々と死に向かっていくみたいな。
ちひろ そうですよね。だからなんか、どう可哀想でしょう、みたいな感じではないんですよね。
吉田 そうですそうです。
ちひろ こういうことが起きました、はい、死にました、みたいな。
吉田 そうですね。
ちひろ 病気になりました、誘拐されました、で、はい、死にました。
よしこ フフフフフフ!
ちひろ それを淡々とページめくりながら、あ、そうなんだ、そうなんだ…っていうあの感じが。
吉田 はいはいはい。そうですね。
ちひろ コーエン兄弟の、僕「ファーゴ」って映画観たんですけど、一つの誘拐事件がきっかけで、どんどん事件が広がっていっちゃって、関係ない人がどんどん死んでいっちゃうっていうみたいな。そういう映画じゃないですか。96年の映画なんですけど。
吉田 フフフ…!ありましたね。
ちひろ 僕、個人的に「ファーゴ」が一番好きだったんですけど、なんか似てるなあと思って。
吉田 なんか、一つの小さな冴えない中年男性の欲が、色んな人の死に繋がっていってるっていう。
ちひろ そうそう。あの救いのない感じ。
吉田 救いのない感じ。結局これだけ死んで、何が原因だったかって言うと、中年男性の少し儲けたいっていう欲だったっていう。人間の。すっげえ分かるっていう。
ちひろ しょうもな!っていうね。
吉田 それを描いてくれる。
よしこ ふうーん。
ちひろ だからちょっと似てるんだよね、ゴーリーのあの、淡々と不幸なことが起きていく感じと。
吉田 一つ一つを見れば、そんな大したことじゃないはずだったのに、それがすごく、ああでも人生ってそうかもな、って、こっちまで達観させる気分に仕立て上げてくれるみたいな。
ちひろ 面白いんですよ、それが。
吉田 そこが似てますよね。
ちひろ 似てる似てる。って思った。
吉田 (よしこに)もし好きだったら楽しめると思います。
ちひろ うん、好きだと思う。
よしこ フフフフフフ!
ちひろ 「ブラッド・シンプル」も同じ日に観たじゃないですか。
吉田 あ、はい。
ちひろ 「ブラッド・シンプル」デビュー作なんですけど。
吉田 デビュー作からしょうもない!
ちひろ しょうもない、っていうか、まあ、ちょっとした不倫というか、三角関係がきっかけで、しょうもなく人が死んでいく映画なんですよ。
よしこ うん。
ちひろ でも、ゴーリーを見てると、コーエン兄弟にゴーリーを探しながら観ちゃうんだけど、例えばその、ただ人が死んで、別な奴がそれを見つけてとか、そういう出来事が淡々と描かれていくだけで、例えば死ぬ瞬間にすごくドラマティックな音楽が流れてギャー!って死んでいくとかじゃなくて、ただ、バン!って撃たれて死ぬとか。
吉田 ああ、そうですね。
ちひろ だけど、映像はめっちゃカッコいいみたいな。例えば暗いところに光が差し込んでくる中で死ぬとかが、画としては美しいみたいな。
よしこ でも文字で書くと一文だよね。
ちひろ 一文で「死にました」みたいな。その感じが、ゴーリーも、しょうもなく人が淡々と死んでいくんだけど、絵はすごく緻密に描き込まれてたりするわけじゃん。
よしこ 大好きこの絵。
ちひろ あの感じが、なんかちょっと近いんじゃないって。
吉田 なんかこう、作り上げられ過ぎてるじゃないですか、どっちも。ちゃんと作り上げられてる中で、起きてることってすごくしょうもない。めちゃくちゃ緻密だったり、作り込まれてる中で、殺したあとの血を拭いてるみたいな。なんかこう、よりしょうもなさ、人間の小ささ、ただ起きてしまった出来事が、客観性を持って訴えかけてくるっていう部分が似てますよね。で、私「バスターのバラード」、やっぱり一番通じたんですよ。「バスターのバラード」って、本を読むようにお話が進んでいくんですよ。ページをめくるように不幸が。
ちひろ ゴーリー感がありますね!
吉田 まさに「バスターのバラード」って、その当時の歴史を振り返りましょうねみたいな感じでページをめくる、そのテンポ感が本当に。
ちひろ なるほどね、ページをめくるように不幸が訪れていく、淡々と。
よしこ 私、今観たい映画が、淡々と暗い出来事が起きていく映画じゃないんだよね。
ちひろ どういうのが観たいの?
よしこ あの、躁鬱病じゃん。
ちひろ はいはい。
よしこ 冬場は主に落ちてるんで。
ちひろ 日照時間が落ちてると鬱になるっていうね。
よしこ 明るい気持ちになれるのが観たい。
ちひろ エンタメ寄りの映画ってこと?
よしこ 今日、日中、仕事休みだったんだけど、ヒーロー戦隊ものを見てたの。
吉田 ああ~。
ちひろ ハハハ!日曜の朝にやってるようなやつを。
よしこ うん。それを録画して見てたんだけど。
ちひろ 子供もいるしね。
よしこ うん。それを一人で見てた。あ、犬と見てた。
吉田 なるほど。
ちひろ 映画でもさ、色々あって、不幸が起きてるけど楽しい映画とかもあるんですよ、世の中には。
よしこ うんうんうん。
ちひろ タランティーノ的な。
よしこ 「TED2」とか観たりとか。
吉田 なんか寧ろ私、不幸な作品を観がちかも知れないです最近。
よしこ それ自分が幸せなんじゃないかな。
吉田 ああ~。かも知れないですね。
よしこ おおっ!フフフフフフ!
ちひろ あららららら?
よしこ いいねー!いいねいいね。
ちひろ 絶対何か変な想像をしてる。
よしこ してないよ。
ちひろ アハハハハハ!
吉田 あ、でも単純に、相対的にそうなのかも知れないですね。
ちひろ 「パンクロックベイビー」は、めっちゃ明るかったですけどね。超明るい青春映画。
吉田 ああ~。
よしこ その時はどん底だったんですか?
吉田 そうですね。
ちひろ ああ、そうなの?
吉田 はい。
よしこ ウフフフフフ!
ちひろ じゃあ、それを求めるんですかね、人は。
よしこ 逆を。
吉田 多分、今話聞いてるとそんな感じがしてきましたね。
よしこ へえー。
ちひろ 本当に戦争の真っただ中みたいな時代だと、例えばホラー映画とかが笑えないから、需要がなくなるとかいうのを聞いたことがあって。
よしこ うん。
ちひろ 逆に平和な時代だと、そういうギャグで人が死ぬ映画とかもやれちゃったりとか。そういうのはあるらしいですね。傾向だけどね。
よしこ うん。
吉田 どん底だなって思った時に作った作品だったのが。
ちひろ 「パンクロックベイビー」なんですか?
吉田 あ、はい。なので、求めてたのかも知れないですね、そう伝わってるんだったら。
よしこ へえ~。
ちひろ 分かんないけどね。今勝手にそう思ってるだけだけど。
吉田 ああ、いやいやいや。そう考えると、あの時よりも私は平静を保ててる気がしてる。
ちひろ 不幸を楽しめる余裕が出てきたみたいな。不幸な作品を。
吉田 ああ、そういうことですね。
ちひろ コーエン兄弟なり、ゴーリーなり。
吉田 かも知れない。
ちひろ 何かありますか?ゴーリーについて。
よしこ ゴーリーについて。あのさあ、アメリカ人っぽくない名前だよね。
ちひろ あ、それはね、本当にイギリス人だってよく間違われるって書いてあったよ。
よしこ 私、オバチャンが邪魔であんま見れんかったんだよね。
ちひろ ああ、新津美術館で。
よしこ オバチャンがゼロ距離で絵を見てるっていう。
ちひろ アハハハハハ!ゴーリーにかぶりついて。
よしこ そうそう。
吉田 やりにくいですね。
ちひろ 美術館あるあるだよね。近くにいる人と歩幅が微妙に合っちゃうみたいな。
吉田 あー、はいはい。
ちひろ あるある。
よしこ だからTシャツ展示してるコーナーでこう、ちょっとぼーっとしてから見に行くんだけど、オバチャンが長時間かけて一枚の絵をすっげえ見てるから。
ちひろ ガチ勢だよ。ゴーリーガチ勢。
吉田 二人しかいなかったんですか?
よしこ うん。
ちひろ 二人いるんだったら、ちょっと待ってから行けば、ちょうどよく行ったんじゃないの、後ろから。
よしこ 一回トイレに行ったり、お土産のコーナーを見たりして、戻るんだけど、オバチャンのスピードが遅いんじゃ!
吉田 ハハハ!
ちひろ じゃあ、先行っちゃえば良かったのかもね。今考えればね。
よしこ いや、先に行きたいんだけど、順序立てて行きたいのよね。
ちひろ はいはいはいはい。分かる分かる。
吉田 そこまで行くと、エドワード・ゴーリーを見ているオバチャンの展示みたいになってますね。
よしこ そうそう。
ちひろ 不幸な子供ですね。
よしこ ウフフフフフ!
ちひろ 美術館あるあるですね。あ、そうだ、俺がちょっと思ったのはさ、水木しげるが俺すごい好きで、エドワード・ゴーリー終わったら今度、水木しげるやるんですよ、新津美術館。
よしこ そうだよね。それも楽しみ。
ちひろ たまたまここに「総員玉砕せよ」って漫画があったりするんですけど、そんなガッツリ話さないけど、いずれここでも水木しげるやりたいなあとか思ってて、それでまたちょっと水木しげる読み返したりしてるんだけど、水木しげるも死に方が淡々としてるんですよ。
よしこ そうだよね。
吉田 あ、そうなんですか?
ちひろ ポンポンと人が死ぬの、戦争の話とかやっても。あ、死んだ、みたいな感じ。
よしこ うん。
ちひろ で、人間はすごく、ひょろーっとした、のぺーっとした、漫画って感じの絵なんだけど、背景はもう、葉っぱの一枚一枚まですごく描き込んであって、ある意味、日本のゴーリーなんじゃないかという、水木しげるが。
よしこ でも、水木先生の時代の漫画家さんって、そういうタッチの人が何人か思い浮かぶ。
ちひろ 劇画タッチというか。
よしこ うん。もうなんか、トーンなんて知らねえよみたいな。
ちひろ はいはい。そうだよね。漫画家だったらトーンを使うようなところを、ゴーリーは全部ペンで描いてるもんね。
吉田 ああ~。
よしこ 私「釣りキチ三平」好きなんだけど、あの人(矢口高雄)もそうだよね。
ちひろ ああ、そうなんだ。そういう手描きの良さってあるよね。
よしこ 手描きって言うと、漫☆画太郎先生も。
ちひろ ハハハハハハ!!
吉田 ああ~!
ちひろ 漫☆画太郎先生のあのワ―!っていう。(漫☆画太郎「星の王子さま」を取り出して)日本のゴーリーかも知れないですよ。
よしこ ウフフフフフ!
吉田 画太郎さん!
ちひろ 画太郎さんかも知れないですよ!日本のゴーリー!
よしこ 私はちゃんと買っているんです。
ちひろ 偉い!立ち読みじゃなくて。
よしこ うん。
ちひろ あ、もうあと2分くらいなので、あとはもう雑談みたいな感じでやっていこうと思います。あ、ちょっと逸れたんで最後に真面目な話だけしておくと、新津美術館の「エドワード・ゴーリーの優雅な秘密」は、3月10日までやっているので、皆さん行ってください!
よしこ ウフフフフフ!
ちひろ って、僕が全然お金も何ももらってないのに、新津美術館の宣伝をしている横で、ずっと吉田さんは漫☆画太郎を今読み始めた。
吉田 たまんないっすね!
よしこ たまんない。
ちひろ ハハハハハハ!まあ、それはおいおい話しましょう。漫☆画太郎もやりたいですね。このトークショーで。
よしこ やりたい。だってすごい久し振りにまともに漫画連載してるの。
ちひろ あ、今だと!漫☆画太朗やるなら今だと!2019年の今だと!
吉田 あ、そうですね。次、打ち切りになる前に!
よしこ 連載とかしてる最中に死ぬんじゃないかと思って、年齢的にね。
吉田 今、おいくつくらいなんですか?漫☆画太郎先生って。
よしこ 結構じいさんだよね。
ちひろ だって長いもん。俺が小学生の頃からずっとやってるし。だから30年くらいやってるんじゃないですか。って考えると結構やってるよね。(調べたら1990年から活動していました。年齢は不明)
よしこ うん、やってるやってる。
吉田 で、最近、セルフオマージュみたいな。自分の過去の作品を振り返り始めてる。
よしこ そうそう。やってるやってる。
吉田 ヤバい!本当に死ぬかも知れない!
よしこ たまに体調不良で休載したりするの。
吉田 しますよね。あれ、体調不良なんですか?
よしこ 理由ちゃんと書いてあるんですけど、休載するたびに、この前休載した時は、十年ぶりに、重版がかかって、テンションが上がり過ぎて、体調を崩しましたって言って。
ちひろ へえー。言ってるうちに、あと15秒になりました。
よしこ ウフフフフフ!
ちひろ そんなわけで、今日は吉田麻希さんありがとうございました。
吉田 はい!
ちひろ 最後、エドワード・ゴーリーとかコーエン兄弟とかやって、漫☆画太郎で落ち着くっていうまさかの展開ですが。
吉田 いやー!
よしこ 「パンクロックベイビー」よろしくお願いします。
吉田 「パンクロックベイビー」よろしくお願いします!
ちひろ はい、ありがとうございました!
以上です!