3/27(火)、シネ・ウインドで『BADDREAM』を観て来ました。
主演は新潟の脳性マヒのお笑いコンビ「脳性マヒブラザーズ」、監督は新潟映画塾のMXUさんという、新潟から生まれた映画です。
予告編はこんな感じ。
個人的に、脳性マヒブラザーズは「こわれ者の祭典」などで5年くらいの付き合いがあるし、MXU監督(宇佐美監督)も以前大西暁美さんの演劇のスタッフをした時に脚本を書いていたのが宇佐美監督だったりしたので、かなり気になる映画でした。
それに加えて、MXU監督はやまゆり園の障害者連続殺人事件など、日本の障害者を巡る問題に危機感を覚えてこの映画を撮ったということで、そういう意味でも非常に気になっていました。
さて、そんな映画ですが、開始早々、障害者が連行されていき、親族が泣き叫ぶという、いきなりショッキングな映像からスタート。
要するに、この映画では障害者は政府によって強制的に排除されているという、タイトルの通りまさしく悪夢のような世界なのです。
面白いと思ったのは、この映画に登場する脳性マヒブラザーズは、現実の脳性マヒブラザーズと同じ、もともと脳性マヒのお笑いコンビをしていたという設定です。
つまり、あくまで我々の生きている現実と同じ世界が突然悪夢のような世界になってしまったという設定であり、今の現実はいつこうなってもおかしくないという危機感のメッセージなのかなと思いました。
そんな脳性マヒブラザーズは、ある隠れ家みたいな建物の2階にかくまわれたまま、何日もそこで過ごしているというところから物語が始まります。
見つかってしまっては殺されてしまうから隠れて生きる、という設定は、そのままナチスのホロコーストから隠れているユダヤ人のような閉塞感と恐ろしさがありました。
と思いきや、脳性マヒブラザーズの隠れながらの日々の生活は、意外なことにユーモラスでちょっと楽しそうだったりするのです。
脳性マヒブラザーズを匿っているのは、小林へろさん演じる男性と、新潟映画塾の荒木夏実さん演じる女性の二人なのですが、この二人の存在が非常に大きいと思いました。
この二人がとても献身的に脳性マヒブラザースを守ってくれるので、この二人がいると観ていてすごく安心できるし、4人でささやかなパーティをしたりして過ごす日々はとても楽しそうなのです。(そして荒木夏実さんがやたらと妖艶)
やっぱり人間、信用し合える人の存在はすごく大きいし、絶望の中でも希望を感じられるってことなのかも知れません。「世の中がこのままよくなっていったらいいなあ…」みたいなことを4人が語り合うシーンはすごく良かったです。
しかし、そんな日々にも終わりがやってきます…なんと、脳性マヒブラザーズの周佐さんが病気になるも、存在を隠しているために病院にも行けずに、そのまま亡くなってしまうのです。
国民として認めてもらえないこと、日本という国から排除されることは、そのまま命にかかわる問題なのだという怖さがありました。
さらに、脳性マヒブラザーズを匿っていた小林へろさんが政府に見つかり、どこかへ連行されていってしまうではないか!
(連行される直前に声には出さずに口の動きだけでDAIGOさんに「逃げろ」と伝える小林へろさんの迫真の演技が素晴らしい)
残されたDAIGOさんピンチ!という訳で、ここからはDAIGOさんの逃走劇が始まり、物語は二転三転していくのです。
最初は障害者として生きていくことが出来ずに街中で嘆き悲しんでいるDAIGOさんですが、そのうち障害者たちが身を寄せ合って暮らすシェルターのような場所を見つけ、そこをオアシスのように感じて一緒に暮らし始めるのですが、そこには大きな秘密が…
そして、結末のネタバレになるので細かいことまでは書きませんが、障害者=絶対的な正義と描かないところがとても良かったです。
感動ポルノなんて言葉があるように、障害者を天使のように理想化された存在と描く作品もありますが、そうではなく、障害者にもあくまで他の人間と同じ不完全な存在として描いたことはとても意味のあったことだと思います・
という訳で、障害者が社会的に排除される世界を舞台にした、想像以上にハードかつスリリングな内容の映画でしたし、その中で障害者として自分の生きる道を模索する主演のDAIGOさんは、そのままDAIGOさんのここまでの人生と重なるようで非常にカッコよかったです。
欲を言えば、前半に比べて後半の盛り上がりがちょっと物足りない感じがしましたが、でも見られて良かったです。
あと障害者手帳所持者なので500円で映画が観られてラッキーでした。
脳性マヒブラザーズをはじめ出演者の皆さん、MXU監督をはじめスタッフの皆さん、お疲れ様でした!