羊日記

大石次郎のさすらい雑記 #このブログはコメントできません

寄生獣~セイの格率~ 1

2015-03-26 20:26:38 | 日記
後藤との戦いを終え、家に帰った新一は平穏な日常に戻って行った。パラサイト達はその個体数を減らし、『掃討』から生き残った者達はより巧妙に潜伏するようになり、中には人肉食を減らし、田村のように人間の食べ物で栄養を補うようになっていった者もいた。少なくとも新一の周りでは何も起きなくなってきた。と、新一は思っていた。
その夜、ミギーは眠る新一の顔を見ていた。そして、いつかのようにミギーは新一の意識の中に入っていった。「今度はどう見える? 新一」「ミギーっぽいよ? 前は、えーと確か、?」「まあいい。今日はな、実はお別れに来たんだ」骨のような姿で現れたミギーは突然言った。「眠りに着こうと思う」困惑する新一。それは長い眠りで、場合によって新一が死ぬまで眠り続けるという。「君にとってただの右手に戻ると思っていい」「何言ってるんだ?」「内部構造が、また少し変化したんだ」後藤の体内で体験した『一人であって一人でないような』感覚。が作用したという。「いきなり膨大な情報を得た上、別々の思索を同時にできるようになった。しばらくここにある材料だけでやってみたくなったんだ」自分の頭? の辺りを指すミギー。「まだ知らないことだって一杯あるだろう?」「そうだな。じゃあこう言おう、今度は別の方角の歩くんだ。君のいる世界とは少し別の方角へ」「わからないよ」頭? のような部位の視線を逸らすミギー。「新一、私のことは一つの夢だと思ってほしい。だから最後に、夢の中で別れを言いに来た」去ろうとするミギー。
「お前と暮らして、一緒に助け合った毎日は夢なんかじゃない!」「確かに、君の周りで起きた辛いこと、多くの人の死は現実だ」
     2に続く

寄生獣~セイの格率~ 2

2015-03-26 20:26:25 | 日記
ミギーの言葉に『死』を連想した新一はこれまで亡くなった身近な死者達の姿を思い浮かべ、その姿は幻像となって現れた。母、加奈、倉森、クラスメート達、他にも数多くいた。「どれも私が自分の脳で見たのと違う。私を出してみろ」いつもの戦いの時のミギーの像を作り出す新一。「へぇ」「へぇって、ミギー」ミギーの像と加奈の像が少し触れ合っていた。「つまり、そういうことだな。お互いを理解し合えるのは殆ど点なんだ。同じ構造を持つ筈の人間同士でさえ、魂を交換できたとしたらそれぞれ想像を絶する世界が見え、聴こえる筈だ」全ての像は光に集約された。「さ、そろそろ行く。スイッチを切るぞ」骨のようなミギーは新一に背を向けた。「待てよ、もし寄生生物が出たら俺一人でどう戦えばいいんだよ!」「君なら大丈夫だ。それより交通事故に気を付けろ」手を振るミギー。「もうお前と話すことができないってのか? 一生!」「あるいわな。でもまあ、お互い直ぐ死ぬ訳じゃない。大体、自分の手と会話する人間がいること自体おかしいんだぜ?」ミギーは去ってゆく。「ひどいよ、こんないきなり」「いつものように、目を覚ましたら、この夢のことも粗方忘れているんだろう。だから、その時私のことも一緒に忘れてほしい。いや、きっと忘れることはできる」徐々に暗くなるイメージの世界。ミギーはもう遠い。「いいかい? 朝、そこにあるのはただの君の右手だ。それが本来の姿なんだよ」「ミギー」「今までありがとう、新一」イメージは暗転した。
朝、新一は目覚めた。窓の外で桜が散っている。新一はベットに座り、自分の両手を見た。「忘れる訳ないだろう! 馬鹿野郎ッ!!」新一は右手に怒鳴った。
     3に続く

寄生獣~セイの格率~ 3

2015-03-26 20:26:10 | 日記
その年の夏、新一は浪人生で髪型を変えた村野は大学生だった。立川と鈴木も大学生になっており、二人とも元気だった。宇田とジョーも変わらず島で暮らしていた。村野の話しでは「犯罪が増えてる」というが新一の周囲は平和で、新一はパラサイト達のことも何かに『寄』り添い『生』きた。者達と、自分の中で理解するようになっていた。
しかし、新一は浦上に遭遇した! 浦上は「ヤッホー」と村野を拐い、ビルの屋上に上がり、たまたま居合わせた会社員二人を躊躇無く殺した!! 「もう時間の問題だ。俺が吊るされるのもなぁ。その前に人間とは違う答えを聞きてぇと思ってよぉ。この俺は何だ? いや、たぶんお前には解ってる筈だ。俺こそが人間だとな! バケモンなんて必要ねぇ!!」浦上は人間は元々共食いするようにできているという。「何千年もそうして来たんだ! それをいきなり止めようとするから増えちまう、世界がパンクしちまうぜ!!」「お前は一体?」「とぼけんなよ、解ってるんだろバケモンがッ、最初に見た時から解ってら。ただし頭じゃねぇ、体のどこかだ」新一は事実を隠したまま説得することを諦めた。「言葉で済むなら何だって答える。その子は離せ」無言でさらに促す浦上。「ああそうだよ! 俺は」「泉君! 警察、呼んできて。こんなヤツ付き合う必要無い。あんた何てバケモン以上にバケモンじゃない!!」浦上は面白がった。「アンちゃん警察呼んできなよ。こっちの子の方が面白そうだ」腹を決めた新一が状況を確認していると「新一君。あたし、いつだって君のいる場所に行こうとしていたんだよ。でも君は足が速いから、どんどん知らない世界に行っちゃって」
     4に続く

寄生獣~セイの格率~ 4 完

2015-03-26 20:25:48 | 日記
「置いてけぼりはあたしの方だった。でも、今やっと追い付いて、何だか、ちょっと追い抜いちゃったみたい」村野は泣いた。浦上がナイフを構えた。「止めろぉッ!!」新一は駆け出した! 浦上は笑って、村野を突き飛ばし応戦しようとした。新一はナイフを払おうとしたが予想を超えた動きで左腕を刺された。新一は止まらず、「ウォオッ!」刺された左手で浦上の顎を砕き吹っ飛ばした。さらにビルから落ちようとする村野に『右手』を差し出した! 間に、合あわない!! 落ちてゆく村野。「ああああぁッ!!!!」絶叫する新一!! 泣き崩れる新一。
イメージの中で、先に木のある道を村野と進むと、子犬が出て来た。「道で会った生き物がふと見ると死んでいた。そんな時、何で悲しくなるんだろう?」村野は子犬を抱えた。「人間が暇な動物だからさ」ミギーも出て来た。「だが、心に暇のある生物。何と素晴らしい。だからなぁ、いつまでもメソメソしてるんじゃない。疲れるから自分で持ちな」ミギーは自分の小さな右手をプラプラさせた。
気が付くと、新一は落ちた筈の村野を『右手』で持っていた。村野を引き上げた新一、二人で倒れ込む。(ありがとうミギー。やっぱりお前は生きてる!)新一は『右手』を握り締めた。
倒れたままでいると丁度、空が青い。「綺麗な空だ。君はいつかの仔犬を覚えてる? ずっと忘れてだけど、あの後、木の根本に埋め直したんだ」「知ってるよ。それは新一君が、君が新一君だから」新一は、村野の背に右手を添えた。
・・・終わったぁ。ちと淡々としているような気もしたが、キッチリ終わった。ミギーは思索もあるだろうけど、自分が起きてると新一が普通に暮らせなくなるもんな。いいヤツだよ、ミギー。