2017年、東部労組大久保製壜支部は高温・暑熱、粉じん、騒音という過酷な職場環境における一日13時間・15時間という労働者の命と健康にも関わる長時間労働を是正させるため、労働基準法(労基法)第36条の但し書きを武器に闘い、事実上、この長時間労働を撤廃させました。
今回はこの闘いと労基法36条但し書きの意義について紹介します。
ガラスびん製造を主な業務とする大久保製壜では2017年当時、「追い通し勤務」と称して、本来は三交替制の労働者を交替させることなく通し勤務を行わせ、その結果、13時間以上という長時間労働が行われていました。
ガラスびんの製造は過酷な労働をともないます。
原料を溶解炉へ投入、約1500℃の熱で溶かし、ガラスびんに成形します。この過程で職場は非常に高温となります。文字通り「灼熱地獄」です。
このような過酷な職場環境に長時間労働が加われば、労働者の命と健康に関わるリスクは非常に高くなります。
東部労組・大久保製壜支部は闘いを始めました。
その武器となったのが労基法第36条但し書きです。
労基法第36条の但し書きはこう規定しています。
「坑内労働その他厚生労働省令で定める健康上特に有害な業務の労働時間の延長は、一日について二時間を超えてはならない。」
ここでいう「坑内労働その他厚生労働省令で定める健康上特に有害な業務」については労基法施行規則第18条において以下の通りとされています。
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一 多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務
二 多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務
三 ラジウム放射線、エックス線その他の有害放射線にさらされる業務
四 土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務
五 異常気圧下における業務
六 削岩機、鋲打機等の使用によつて身体に著しい振動を与える業務
七 重量物の取扱い等重激なる業務
八 ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務
九 鉛、水銀、クロム、砒素、黄りん、弗素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリン、その他これに準ずる有害物の粉じん、蒸気又はガスを発散
する場所における業務
十 前各号のほか、厚生労働大臣の指定する業務
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さらに、上記一・十の業務については、基発(昭43.7.24第427号、昭46.3.18第223号、昭63.3.14第150号、平11.3.31第168号)においてその詳細が規定されています。
この基発では、施行規則18条1号関係につき、「衛生上有害な業務」として取り扱うよう定めている中には以下の業務が挙げられています。
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(1)鉱物又は金属を精錬する平炉、転炉、電気炉、溶鉱炉等について、原料を装入し、鉱さい若しくは溶融金属を取り出し、又は炉の状況を監視する作業
(2)鉱物、ガラス又は金属を溶解するキュポラ、るつぼ、電気炉等について、原料を装入し、溶融物を取り出し、若しくは攪拌し、又は炉の状況を監視する作業
(3)鉱物、ガラス又は金属を加熱する焼鈍炉、灼熱炉、焼入炉、加熱炉等について、被加熱物を装入し、取り出し、又は炉の状況を監視する作業
(中略)
(8)溶融ガラスからガラス製品を成型する作業
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大久保製壜におけるガラスびん製造工程は、上記「(1)」ないし「(3)」及び「(8)」そのものの業務であることが明らかです。
従って、それが労基法施行規則第18条1号に該当する「坑内労働その他厚生労働省令で定める健康上特に有害な業務」であることは火を見るよりも明らかであって、労働時間の延長は、36協定が締結されているとしても1日について2時間を超えてはならないこととなります。
また、昭和24年10月4日基収第1484号は、「坑内労働その他厚生労働省令で定める健康上特に有害な業務」につき、36条但書の趣旨から、休日については10時間を超えて労働させてはならない、としているところ、当時の大久保製壜のガラスびん製造現場では1日15時間の休日労働が行われていました。
「違反者は、36条但書に違反し、労働基準法施行規則第18条1号に該当する職場の労働者につき1日につき2時間を超えて労働時間を延長し、労働をさせている。また、休日について10時間を超えて労働させている」。東部労組・大久保製壜支部は2017年3月、所轄の向島労働基準監督署に労基法第36条但し書き違反で申告を行いました。
この申告をうけ向島労基署は同年5月・10月に大久保製壜に対し、「強烈な騒音を発する場所」、「著しく暑熱な場所における業務」につき、「労働者を一日2時間を超えて時間外労働に従事させている」として労基法36条・同施行規則第18条違反で是正勧告を発しました。
東部労組・大久保製壜支部はこの是正勧告を背景に、会社に対し健康上有害な業務における長時間労働(一日2時間を超える残業)である「追い通し勤務」、休日労働をただちにやめるよう強く求めました。
その結果、現在は危険な「追い通し勤務」は職場からなくなり、長時間労働は一定の改善が図られています。
法律という根拠を武器に、労働組合で闘った大きな成果です。
労基法第36条但し書き・同施行規則第18条、関連する基発では、「健康上有害な業務」として「溶融ガラスからガラス製品を成型する作業」と、ガラス製品の製造そのものが労働者の健康にかかわる業務、とされています。
また、溶解炉等へのガラスびん原料の投入、取り出しなど、ガラスびん製造にかかわる業務も「健康上有害な業務」とされています。
つまり、「ガラスびん製造過程における一連の業務そのもの」が「健康上有害な業務」と言えるのではないでしょうか。
だとすれば、ガラスびん製造の現場で働く労働者に一日2時間以上の残業・10時間以上の休日労働は許されないことになります。
全国のガラスびん製造現場で働くみなさん!
過酷な環境での長時間労働で苦しんではいませんか?声をあげ、労働組合で闘って改善させましょう!
ガラスびん製造のほかにも、労基法第36条但し書き・同施行規則第18条、関連する基発には、「健康上有害な業務」として様々な業務が上げられています。
それらの業務も一日2時間以上の残業・10時間以上の休日労働は許されません。
「健康上有害な業務」の過酷な職場環境で働くみなさん!
声をあげ、命と健康を守るため、労働組合で闘いましょう!
東部労組にぜひご相談ください。
【連絡先】
電話03-3604-5983/03-3604-1294
mail:info@toburoso.org