JULIUS CAESAR 文藝協会演劇 絵本筋書 帝国劇場
沙翁劇 ジユリヤス、シーザー(六幕)坪内逍遥訳
大正二年 六月廿六日ヨリ七月二日マデ 午後五時開演
第一幕
第一場 羅馬街頭
第二場 羅馬大通
シーザー 加藤精一氏
アントニー 東儀季治氏
ブルータス 土肥庸元氏
カシヤス 森英治郎氏
カスカ 佐々木積氏
フレーヰ゛ 戸田猿仁氏
マラゝス 川井源藏氏
靴直し 横川唯治氏
預言者 金井謹之助氏
カルパアニヤ 大浦雅子氏
ポオシャ 秋元千代子氏
其他従者、侍女、市民大勢
第二幕 羅馬大通
カシヤス 森英治郎氏
カスカ 佐々木積氏
シンナ 河野伸介氏
第三幕
第一場 ブルータスの庭園
第二場 シーザーの館
第三場 羅馬街頭
シーザー 加藤精一氏
ブルータス 土肥庸元氏
アントニー 東儀季治氏
カシヤス 森英治郎氏
カスカ 佐々木積氏
シンナ 河野伸介氏
ツレボニヤス 戸田猿仁氏
リゲーリヤス 横川唯治氏
デシヤス、ブルータス 上田榮氏
メテラス、シンバア 宮島文雄氏
預言者 金井謹之助氏
ルシヤス 林千歳氏
ポオシヤ 秋元千代子氏
カルパニヤ 大浦雅子氏
第四幕 議事堂
シーザー 加藤精一氏
ブルータス 土肥庸元氏
アントニー 東儀季治氏
カシヤス 森英治郎氏
カスカ 佐々木積氏
シンナ 河野伸介氏
ツレボニヤス 戸田猿仁氏
デシヤス、ブルータス 上田榮氏
メテラス、シンバア 宮島文雄氏
アーテミドーラス 川井源蔵氏
預言者 金井謹之助氏
アントニーの従者 金井謹之助氏
第五幕 市場
アントニー 東儀季治氏
ブルータス 土肥庸元氏
カシヤス 森英治郎氏
詩人シンナ 横川唯治氏
アントニーの従者 金井謹之助氏
市民 佐々木積氏
市民 戸田猿仁氏
市民 上田榮氏
市民 宮島文雄氏
其他市民大勢
第六幕 ブルータスの陣営
ブルータス 土肥庸元氏
カシヤス 森英治郎氏
ルシリヤス 河野伸介氏
詩人 宮島文雄氏
メッサラ 川井源蔵氏
クローディヤス 金井謹之助氏
ルシヤス 林千歳氏
シーザーの亡霊 加藤精一氏
其他兵士数名
序幕
第一場 羅馬。街頭。 現代から二千年も前のことである、羅馬共和国が天下を一統して、その隆盛を極めた頃、その執政官でもあり将軍でもあつたジユリヤス・シーザーの威権名望は他に並ぶ者なく、その競争者であつたポンペーも戦ひ負 まけ て滅びてしまつた、多年内乱と外征に疲れ果てゝゐた羅馬市民は、平和を希望するの余り、シーザーを王にしようとすらも願つた、ところが国内にはポンペーの残党もあり、自由共和の国体を維持したいと望む理想家もあり、シーザーに私怨を抱く者もあり、旁 かたゞ シーザー がポンペーを滅ぼして凱旋した当日のごときは羅馬市は騒ぎであつた、無智な定見のない平民等は唯もう景気の好い方へ雷同する。この凱旋の際もお祭り騒ぎをしてシーザーを迎へようとする、でポンペー党のものが腹を立てゝ、それを罵 のゝし つて追払 おつぱら ひ、シーザーの為に設けた凱旋祝ひの飾り物なぞを破壊する。
〔以下省略〕
第四幕
羅馬。議事堂。 徒党の面々はシーザーが議事堂に着席したので、互に目交 めま ぜをして手筈を定め、先づメテラス、シンバーが請願があると云つてシーザーの前に跪 ひざま づき、追放された兄の赦免を乞ふ、シーザーは断然それを拒む、ブルータス、カシヤス、その他声を揃へて哀願する、シーザー頑然としてそれを拒み、大喝して退けといふ、「もうこの上は腕力だ」とカスカが真先に剣を揮 ふる ふ、これを合図に皆々切つて掛 かゝ る、シーザー善く防ぐ、その中 うち にブルータスが一撃を下す、これを見てシーザーは、「ブルータス汝までが!」と叫んで倒れる、子の如く愛したブルータスまでが我に叛 そむ くかと世をはかなんで、最早 もう 抵抗しようとも思はなかつたのである。
〔以下省略〕
また、奥付頁には、次のリストがある。
帝国劇場洋楽部員 樂長 竹内平吉
第一ヴァイオリン 山崎榮二郎 同 小松三樹三 同 荻田十八三
第二ヴァイオリン 吉田盛孝 同 佐燕忠恕 同 吉野俊夫
ヴイオラ 蛯子正純 同 紣川藤喜知
セロ 小林武彦 同 内藤常吉 同 村上彦三
ダブルベース 荒木茂次郎 同 内藤彦太郎
フリユート 横山國太郎
オーボエ 八屋五郎
クラリネツト 横須賀薫三
トロンペツト 小田越男 同 吉田民雄
トロンボーン 木村仙吾
チンパニー 渡邊金治
大正二年六月二十七日發行