蔵書目録

明治・大正・昭和:音楽、演劇、舞踊、軍事、医学、教習、中共、文化大革命、目録:蓄音器、風琴、煙火、音譜、絵葉書

「ファウスト」 帝国劇場 (1913.3)

2011年10月04日 | 帝国劇場 総合、和、洋

 「ギヨウテ作 森林太郎訳 近代劇協会劇 ファウスト 五幕 十四場 帝国劇場 大正二年 〔一九一三年〕 三月二十七日より 同三十一日まで五日間 毎夕五時開演」などとある。22.8センチ、八面〔裏面四面が、広告〕。
 
 三月二十七日より三十一日迄毎夕五時開演 
 近代劇協会劇 ファウスト 五幕 十四場

            

   場割

   序曲(管絃楽)
 第壹幕 第一場 ファウストの書斎(独白の場)
              (幕合五分)
         
         『基督甦りぬ』の調 クリスト、イスト、エルシュタンデン (管絃楽)
 第貳幕 第一場   ファウストノ書斎(フアストの夢)
              (幕合五分)
     第二場   ファウストの書斎(学生の場)
              (幕合五分)          
          凱旋行進曲(管絃楽)
 第三幕 第一場   アウエルバッハの窖 あなぐら 〔上の写真:左から1枚目〕
              (幕合五分)
     第ニ場   魔女の厨 〔2枚目〕
            (休憩廿分御食事時間)
          ワルツ(管絃楽)
 第四幕 第一場   往来(グレエトヘンとの邂逅)
              (幕合二分) 
     第ニ場   グレエトヘンの部屋(ツウレの王の歌) 〔3枚目〕
              (幕合五分)
     第三場   往来(メフィストォとファウストとの散歩) 〔4枚目〕
              (幕合三分)
     第四場   マルテの部屋
              (幕合三分)
         『離したまへの調』 ラツセ、ミツヒ (管絃楽)
     第五場   マルテの庭(花の場) 〔5枚目〕
              (幕合五分)
         『既に暮れたり』の調べ エス、イスト、シヨオン、シユペエト (管絃楽)
     第六場   マルテの庭(信仰質問の場)     
 第五幕 第一場   往来(グレエトヘンの祈、ワレンチンの争闘)
              (幕合五分)
     第ニ場   教会堂(悪霊の場)
              (幕合五分)
          牢獄の場の曲(管絃楽) 〔6枚目〕
     第三場   牢屋

 
   役割(登場順)

 ファウスト             上山草人 
 地の精               南部邦彦 
 ワグネル   (ファウストの学僕) 原田潤 
 メフィストオ (悪魔)       伊庭孝 
 学生                野添愛孝 
 フロツシユ             清水金太郎 
 ブランデル             原田潤 
 ジイベル              奥村博 
 アルトマイエル           高井至 
 牡猿             女優 波川千草 
 牝猿             女優 若山椿 
 魔女             女優 山川浦路 
 グレエトヘン         女優 衣川孔雀 
 マルテ            女優 山川浦路 
 リイスヘン          女優 玉村歌路 
 ワレンチン             高井至 
 悪霊                南部邦彦 
   合唱、舞踏 帝国劇場歌劇部員
   其他町の人大ぜい
 
 背景図案  石井柏亭
 管絃楽指揮 竹内平吉
 小歌作曲  清水金太郎
 幕内指揮  塚田左一 
         村田實

 舞台監督  伊庭孝

 協会顧問  文学博士        坪内雄藏
         医学博士 文学博士 森林太郎

 協会代表者 上山草人

 観劇料 特等 二圓 一等 一圓五十銭 二等 一圓 三等 七十銭 四等 二十五銭

 筋書

  此劇の時代は十五世紀頃。場所は独逸の或る町。

 第一幕

  ファウストは宇宙人生の深秘を探らうとして、あらゆる学問を研究したが、五十歳を超えて猶煩悶してゐる。遂に魔法の書を開いて咒文 じゆもん によつて地の精を呼び出して見たが、その恐ろしい姿には寄り附けもせぬ。死なうと思つてゐると、学僕のワグネルが這入つて来て、お目出たい学生気質を表白して往く。ファウストは一切の努力に絶望して遂に毒を仰がうとする。その時復活祭の鐘と歌とが聞えるので、子供の時の楽しい係恋 あこがれ を想ひ起して、死を止 とど まる。
 
 第二幕

  復活祭の鐘の音で生の喜びに引き戻されたファウストの処へ、犬の姿になつて悪魔メフィストオが入り込んで来た。メフィストオは魔術でファウストに美しい女の幻を見せた。其間に悪魔は魔除の印を取り去つて、翌日も亦やつて来て、遂にファウストの供をして実世間を見て歩くといふ約束をした。そこへ新入の学生がファウストの説を聞きに来るので、メフィストォはファウストの代理をして、悪魔一流の気焔を吐く。其間にファウストは支度をしてメフィストォと出立する事になる。

 第三幕

  アウエルバツハの酒窖 さかぐら に学生が四人で乱酔してゐる。メフィストォとファウストとは此中へ交つて、メフィストォは魔法で学生をたぶらかす。それからファウストを魔女の厨 くりや へ連れてゆき若くなる薬を吞ませてファウストを二十代の青年にしてしまふ。ファウストは魔法の鏡に映る美女の姿を見て、情欲の人になつてしまふ。

 第四幕

  (是 これ から先を特にグレエトヘン悲劇といふ)町の娘グレエトヘンはファウストに見初 みそ められた。堅気な育ちで、淫らな事をする娘ではない。ファウストはメフィストォにせがんで、宝石類を潜 ひそ かにグレエトヘンの戸棚に入れて置く。グレエトヘンは之を見て一寸動かされたが、教会の坊さんが取上げてしまふので、誘惑せられなかつた。メフィストォはグレエトヘンの隣の女房マルテを手に入れて、之に取持ちをさせる。遂にグレエトヘンは花をむしり乍 なが ら、ファウストと恋を語るやうになつた。そして母の目褄 めつま を忍んで逢ふ為にファウストに眠り薬を貰つて母に之を呑ませる事になる。

 第五幕

  グレエトヘンは堕落した。私生児を殺し、母を殺すに至つた。兄のワレンチンは之を憤 いきどほ つて、或晩ファウストを待伏したが、却つて殺されてしまふ。グレエトヘンは良心に咎められて、教会堂へ行つても、悪霊に悩まされるばかりである。遂に罪は顕 あらは れて牢屋に繋がれるやうな事になつた。ファウストは之を聞いて焦立 いらだ ち、メフィストォを詰問するけれども、メフィストォは人に同情は持たぬ。遂に夜に乗じて牢獄へ救ひに行くと、グレエトヘンは死を決してゐて、遁 のが れやうとしない。もう死ぬばかりに悩んでゐる。メフィストォは『あれが処刑 しおき だ』といふ、天から声があつて『救ひだ』といふ。既に夜が明けるのでファウストォは去る。牢屋の中からは、ファウストの名を呼ぶ声がひゞく。

                  帝国劇場

 掲載の写真は、すべて絵葉書のもので、4枚目が矢吹高尚堂製であるほかは、全て銀座上方屋製である。

 なお、広告は、「今日は帝劇 明日は三越へ」とある三越呉服店・日本蓄音器商会・西洋料理の中央亭・ライラックのエメラ化粧品などである。



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