蔵書目録

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『梅蘭芳一行支那劇解説及筋書』 宝塚少女歌劇団 (1924.11)

2020年07月09日 | 中国戯曲 京劇 梅蘭芳東渡

 

寶塚グラフ 

梅蘭芳一行支那劇解説及筋書  第五號

  寶塚少女歌劇團發行

〔口絵写真〕

・「洛神」 

   洛川の神女密妃に扮した梅蘭芳(靑衣)

・梅蘭芳

・「虹霓關頭本」と「紅線傳」 

   虹霓關の守將辛文禮の夫人東方氏に扮した梅蘭芳(武旦)

   小間使紅線(實は劒俠仙女)に扮した梅蘭芳(旦)

・「廉錦楓」

   君子國の孝行娘廉錦楓に扮した梅蘭芳(靑衣)

 梅蘭芳一行

   支那劇解説及筋書

 ・梅蘭芳一座宝塚公演劇目及び役割

 七日。   
   一、戰太平
      花雲    明の太祖の將(老生)    札金奎    陳友諒    当時江西に覇を稱へた將(淨)  霍仲三
   二、定計化緣
      道士(丑)               羅文奎    和尚(丑)  賈多方
   三、紅線傳
      薛嵩    潞州節度使(老生)     陳喜星    紅線     薛嵩の小間使実は剣俠仙女(旦) 梅蘭芳
      田承嗣   魏博節度使(淨)      霍仲三    趙通     田承嗣部下の將(武生)     朱桂芳
      李固    同前(武生)        喬玉林          
   四、轅門射戟
      呂布    時に徐州城主(小生)    姜妙香    劉備     時に小沛城主(老生)      喬玉林
      紀靈    袁術の將(淨)       王斌方             
 
 八日。   
   一、風雲會
      宋太祖   時に天下未だ統一せず東征西 李春林    呼延贊    太祖の功臣呼延壽廷の子(生)  札金奎  
            剿の際に在り(紅面生)
    二、岳家莊
      岳夫人   飛の夫人(靑衣)      姚玉芙    岳雲     岳飛の長子(小生)       姜妙香
      牛皐    岳飛の将(淨)       王斌方    岳飛の母   (老旦)            孫輔庭
      銀瓶小姐  飛の娘(武旦)       朱桂芳
   三、審頭刺湯 〔「貴妃醉酒」に曲目変更〕
      雪雁    莫懐古の愛妾(靑衣)    梅蘭芳    湯勤     莫懐古の門下生(丑)      羅文奎
      陸炳    近衛の武官(老生)     札金奎    戚繼光    薊州總兵(老生)        陳少伍
   四、空城計
      諸葛孔明  蜀の元帥(老生)      陳喜星    司馬懿    魏の元帥(淨)         霍仲三
                       
 九日。
   一、御林軍
      馬芳    大同總兵(老生)      陳少伍    楊波     兵部尚書(老生)        喬玉林
   二、瞎子逛燈
      賣卜者   (丑)           羅文奎    和尚     (丑)             賈多方
   三、洛神

          

      〔上の写真は、「寶塚へ来た梅蘭芳劇の三日目に出た「洛神」の舞臺面で、梅蘭芳の密妃、洛川仙女〔左〕、その舞臺面〔中〕、朱桂芳の仙女〔右〕」:『芝居とキネマ』十二月号 第一年 第四号 より〕  

      曹植    魏の雍邱王(小生)     姜妙香    呉可銘    洛川驛々亟(老生)       陳少伍
      密妃    洛川神女(靑衣)      梅蘭芳    漢濱遊女   仙女(旦)           姚玉芙
      湘水神妃  仙女(旦)         朱桂芳
      
   四、撃鼓罵曹
      彌衡    三國有名の處士(老生)   陳喜星    曹操     漢献帝の宰相(淨)       霍仲三
       
 十日。
   一、戰馬超
      馬超    西涼太守馬騰の子、當時蜀の 陳少伍    張飛     劉備の義弟(武淨)       霍仲三
            劉備に屬す(老武生)
   二、連陞三級
      王明芳   書生(小生)        韓金福    店主人    (丑)             羅文奎
   三、虹霓關頭本
      辛文禮   紅霓関を守る隋の將(武浄) 霍仲三    東方氏    辛の夫人(武旦)        梅蘭芳
      侍女    (旦)           姚玉芙    秦瓊     瓦崗寨の賊徒の首領(老生)   札金奎
      王伯黨   瓦崗寨の賊將の一人(小生) 姜妙香    家將     (老生)            羅文奎
   四、馬鞍山
      兪伯牙   晋の太夫(老生)      陳喜星    鐘元甫    鐘子期の父(外)        喬玉林
 
 十一日。

   一、遇龍封官
      永樂帝   (老生)          喬玉林    宮臣     (小生)            韓金福
   二、定軍山
     黄忠    蜀の將(武老生)      札金奎    張郃     魏の將(淨)                王斌方
   三、廉錦楓
      廉錦楓   君子国の孝行娘(靑衣)   梅蘭芳    梁氏     その母(老旦)         孫甫庭
      林之洋   嶺南の商人(老生)     李春林    唐以亭    その妹婿(小生)        姜妙香
      多九公   林の親友(外)       札金奎    呉士公    青邱國の惡漁翁(丑)      羅文奎
   四、上天臺
     光武帝   (老生)          陳喜星    姚期     帝の功臣(淨)         霍仲三

     姚剛    期の子(淨)       王斌方

支那劇解説

 ・舞臺
 ・劇の仕組
 ・音樂
 ・俳優
 ・道具
 ・衣裳

梅蘭芳一行小傳

梅蘭芳一行 『附』小傳

 ・梅蘭芳(靑衣)

 ・姜妙香(小生)
 ・姚玉芙(靑衣)
 ・陳喜星(老生)
 ・朱桂芳(武旦)
 ・李春林(老生)
 ・札金奎(老生)
 ・陳少五(老生)

 ・喬玉林(崑曲老生)
 ・孫輔庭(老旦)
 ・李裴叔(花旦)
 ・羅文奎(丑)
 ・霍仲三(浄)
 ・韓金福(小生)
 ・賈多才(丑)
 ・孫小山(老生)
 ・朱斌仙(旦)
 ・董玉林(旦)
    外數名
 樂員
 ・除蘭元
 ・何斌奎
 ・孫惠亭
    外數名
     (以上順序不同) 

  -波多野乾一氏による-

演唱曲目 筋書

 十一月七日演唱曲目解説

  戰太平(一名 花雲帯箭

  紅線傳(西皮二簧)

  轅門射戟(一名 奪小沛)

 十一月八日演唱曲目解説

  風雲會一名 龍虎鬪

  岳家莊

  審頭刺湯二黄

  空城計一名 扶琴退兵

 十一月九日演唱曲目解説

  御林軍(一名 馬芳困城)

  洛神西皮二黄

  人

曹植   魏の雍邱王(小生) (姜妙香)

呉可銘  洛川驛驛丞(老生) (陳少五)

密妃   洛川神女 (靑衣) (梅蘭芳)

漢濱遊女 仙女   (旦)  (姚玉芙)

湘水神妃 仙女   (旦)  (朱桂芳)

  時

 三國時代

  處

 魏の洛川のほとり。

第一場〕魏の雍邱王曹植は、朝觀も終つたこと故、これから自分の領地へ歸らうとその途に就く。洛陽を發して日の暮れがたに、洛川驛に着く。驛丞呉可銘といふが出迎へ、先づ館へと案内する。

第二場〕蕭條たる寒驛の夕べである。曹植は孤燈に對して無聊で寝られない。恩賜の玉鏤金帶枕を取出し、それを枕にして眠つてしまふ。洛川の神女、四仙女を隨へて登場。曹植と未了の緣あるにより、今夜洛川驛に現はれ、わが誠を通じたいと獨白しつゝ、館に入り來り、曹植のすでに熟睡せるを見て、そのまゝ植の夢に入り、明日洛川のほとりで會はうと告げる。植は容華絶世の神女に會ひ、語らんとして夢さめたるが、明日洛川のほとりで會はうといふ言葉だけは耳に殘つてゐる。彼は約を踐んで洛川に行かうと思ふ。

第三場〕漢濱遊女湘水神妃の二仙女は、洛川神女に會つて何事かと聞くと、神女は今日曹植と會ふことになつてゐるが、二仙妹は自分の後から洛川へ來て呉れと云ふ。二仙女は承諾する。軈 やが て曹植がやつて來る。愈々神女と交談の場となる。神女は曹植に前世未了の緣があると云ふが、植は之を思ひ出さないと云ふ。たまりかねて神女の名を聞くと、神女は、それならば自分に隨いて來いと云つて這入つてしまふ。取り殘された植は、侍従に洛川の神の名を尋ね、密妃だといふ答へを得る。植、彼女こそ密妃に相違なしと喜び勇んで神女の跡を遂ふ。そこで神女のみならず、他の二仙女にも會ひ更に神女がむかし宮中にあつて、植と相思の間柄であった宮女の仙果を得たものだとわかる。乃ち神女は耳かざりの珠、植は玉佩を取出して交換したとふ間に、神女は二仙女を隨へて洛川の朝霧にかくれてしまひ、植の手には耳かざりのみが殘つた。

 本劇は曹植の有名なる「洛神賦」を劇化したもので、古裝歌舞劇の最新作である。梅蘭芳は最もこれを得意としてゐる。梅蘭芳は洛川神女に扮するのである。

  撃鼓罵曹(一名 群臣宴)

 十一月十日演唱曲目解説

  戰馬超

  連陞三級

  虹霓關頭本

  人

辛文禮  紅霓関を守る隋の將。    (武淨) (霍仲三)

東方氏  辛の夫人。         (武旦) (梅蘭芳)

侍女   東方氏の腰元。       (旦)  (姚玉芙)

秦瓊   瓦崗寨の賊徒の首領。    (老生) (札金奎)

王伯黨  瓦崗寨に立籠る賊將の一人。 (小生) (姜妙香)

家將                 (老生) (羅文奎)

  時

 隋の末。

  處

 虹霓關(山西省と傳ふ。)

第一場〕虹霓關の城内で、辛文禮は、瓦崗寨から戰を挑んで來たとの注進を聞いて、夫人東方氏を呼んで出陣の用意をする。辛は東方氏に自分が死んだ後は他家に嫁に行くのだらうと厭味を云ふ。東方氏は決してそんなことないと誓を立てる。

第二場〕瓦崗寨の賊徒の首領秦瓊以下の諸將と辛文禮との對戰。辛の鋒先鋭く、諸將敗戰する。

第三場〕王伯黨は秦の命を受け、糧食を護送して來る。辛の軍が強いのを聞いて、それは大變だと自ら出陣して、一箭の下に辛を射殺す。辛の家臣をそれを見て、其報告の爲め急いで去つて行く。

第四場〕東方氏は夫の死を聞いて、非常に嘆き悲しんだが、彼女も武藝に達してゐるので「夫に替つて仇を報ず」といふ旗を立ゝ、白の喪服のまゝで、王伯黨を征伐しに出て行く。

第五場〕瓦崗寨の諸將、東方氏に打敗され愈々東方氏と王伯黨との對戰となる。然るに東方氏は夫の仇とは知りながら、王伯黨の美貌を見て戀慕の念を起し、戰場で思ひの丈けをかき口説く。腰元はあきれて「替夫報仇」の旗を折つてしまふ。然し東方氏の武藝優れ、遂に王伯黨を生捕りにして歸城する。

  馬鞍山(一名 扶琴訪友)

 十一月十一日演唱曲目解説

  遇龍封官

  定軍山

  廉錦楓西皮、二黄

  人

廉錦楓  君子国の孝行娘 (靑衣) (梅蘭芳)

梁氏   その母     (老旦) (孫輔庭)

林之洋  嶺南の商人   (老生) (李春林)

唐以亭  その妹婿    (小生) (姜妙香)

多九公  林の親友    (外)  (札金奎)

呉士公  靑邱國の惡漁翁 (丑)  (羅文奎)

  處

 君子國 假想國なり

第一場〕林之洋は嶺南で貿易を業として居る。唐以亭、多九公と一緒に商賣に赴き、丁度、君子國まで來たので連れ立つてそこに上陸をする。

第二場〕廉錦楓の父廉禮は早く此世を去つて母の梁氏が殘つて居る。錦楓は母によく事へ孝行娘として評判が高い。時に、母は気鬱の病を得て藥を飲んでもすぐ吐き出したが、唯、海參だけは好物で食べる。錦楓は今日も海に入つて海參を取りに行かなくてはならないが、丁度、弟の學校に行く時間なので弟を出してやつてから海へ行く事にする。

第三場〕梁氏は娘を呼んで、今日は胸の具合が惡いから、海參を取つて來てくれと吩咐ける。

第四場〕漁翁呉士公夫婦が船に乗つて來る。彼等は靑邱國の人間であるが、君子國の人間が魚を捕るのに網を用ゐないのをよい事にし、いつも君子國の海に入つて魚を捕る。今日もこれから出掛ける處である。

第五場〕君子國の町である。林、唐、多の三人が、方々見廻つて居る。呉服屋へ小役人が布を買ひに來る。賣る方は價を安くいひ、買う方ではそれを高く買ふ。まるで商賣の原則に外れた事をやつて居る。林等は大いに感服して船に乗り、嶺南を指して歸る。

第六場〕廉錦楓は海の中に跳び込んで海參を探す。

第七場〕漁翁呉士公夫婦が、網を投げて魚をとつて居ると、廉錦楓がその網に掛る。呉夫婦はこの花のような少女を見ると忽ち惡心を起し、彼女を捕らへて賣り飛ばさうとする。そこへ丁度、林之洋等三人の船が來て、廉錦楓の泣いて居るのを見て可愛想像に思ひ、漁翁に放してやれといふが聽かない。三人は怒つて漁翁夫婦を追ひ拂つて錦楓を助け出す。錦楓は三人に助命の恩を謝し、そしてまた海に入つて海參を取る。三人は惡人がまた來てはいけないと見張をする。

第八場〕錦楓は海中で大きな貝を見、その中に屹度珠があるだらうから、それを取つて三人に贈らうと思ふ。

第九場〕船の上では未だ三人が錦楓の事を気遺つて居る。そして水夫に吩咐けて海中に入らせ、錦楓の行方を探させる。

第十場〕錦楓と貝との戰ひ。

第十一場〕水夫は海から上つて來て、廉楓が貝を刺殺したから、もう上つて來るだらうと云ふ。果して錦楓は間もなく上つて來て、貝の中から取つた大きな珠を三人の恩人に贈る。

 此劇は梅蘭芳の最新作で、梅は錦楓に扮する。本劇の藍本は有名な「鏡花緣」といふ小説である。

梅蘭芳劇と諸名家

 ・私の「茨木」と梅蘭芳       ‥ 尾上梅幸
 ・支那劇と梅蘭芳          ‥ 市川佐團次
 ・塲代宣伝             ‥ 米田祐太郎
 ・梅蘭芳の芸  彼は昔の福助の樣だ ‥ 池田大伍
 ・支那劇の性質と構造        ‥ 吉川操
 ・梅蘭芳と海老  井上正夫と好一對の話  

  大正十三年十一月七日發行

  著作権 寶塚少女歌劇団

  發行所 阪神急行電鐵株式會社

 なお、この小冊子には、下の紙片が挟まれていた。〔後半部分は、貴妃醉酒の梗概〕

 十一月八日梅蘭芳氏

 演唱戯目變更に就て

 梅蘭芳氏が演唱する戯目「審頭刺頭」を急に「貴妃醉酒」に改めることになつた。別に大した仔細があつた譯ではないのであるが、「審頭刺頭」は、實は、甚だ事件の内容が錯輳してゐて、而も一時半餘の長丁場に動が少く、殊にこの劇の折角の面白味が支那語を解せぬときには半減されてしまふ恐れがあり、邦人には些か不適當と思はれるので、それよりも、最も梅氏が艶麗絢爛無比の得意藝にして帝劇上演の際も各方面の稱賛を博し、邦人に最も理解され易き「貴妃醉酒」を選む方が支那劇を理解して頂く上にも、鑑賞して頂く上にも最も好都合であることを信じ遽に斯く曲目が變更されることになつたのである。幸ひにこの微衷を掬むで頂き度い。が既に筋書が出來上つて了つた後なので、改版することが出來ず、以下その梗概を書くことにした。

 なお、この宝塚公演では、「支那劇 梅蘭芳 繪端書」が発行されたようである。

 

 寶塚大歌劇場上演 支那劇 梅蘭芳 繪端書 寶塚新温泉發行

      

 ・「紅線傳」   小間使紅線實は劒俠仙女 梅蘭芳
 ・「虹霓關頭本」 東方氏         梅蘭芳
 ・「廉錦楓」   廉錦楓         梅蘭芳 
 ・「廉錦楓」   廉錦楓         梅蘭芳
 ・「洛神」    神女密妃        梅蘭芳

 なお、絵葉書の表面の記載は、「寶塚少女歌劇團發行」である。
 また、袋の裏面には、次の記載がある。

  支那劇には馴染の淺い皆樣の手引にと存じまして、支那劇の成立や上演曲目の筋を解り易く書いたもので御座います。

 宝塚グラフ 第五集
  梅蘭芳一行支那劇解説及筋書

  是非御一覧の上、梅蘭芳の芸術を、より深く御観賞下さい。
      場内売店に備へてをります。
                    〔特価三十銭〕



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