蔵書目録

明治・大正・昭和:音楽、演劇、舞踊、軍事、医学、教習、中共、文化大革命、目録:蓄音器、風琴、煙火、音譜、絵葉書

日本歌劇 『お夏狂乱』 楽譜 (1935.11)

2020年06月29日 | 声楽家 三浦環、関谷敏子他
     

   NIPPON GRAND OPERA
ONATSU KYORAN (Libretto dal Sig.R.Kawaji)
Compost dalla Sig NA TOSHIKO SEKIYA

 日本歌劇(グランドオペラ)
  關屋敏子作曲
   於夏狂乱
     川路柳虹詩
   
   日本に於て
    初上演 木挽町
      歌舞伎座     

            日本初演 東京木挽町歌舞伎座及び大阪朝日會館
                 昭和九年六月下旬ー七月初旬
      川路柳虹作詞
      關屋敏子作曲
  日本歌劇 グランドオペラ お夏狂亂 一幕 (上、下)

 時   元祿時代
 配役
 お夏 關屋敏子
  里の娘 關屋喜美子 
  同   井上道子 
  同   藤原欣子 
      其他
  飛脚  中島ゆり子
 コーラス 其他 大勢

  舞台監督     歌舞伎座
  衣裳         三越衣装部 根岸
 脚色及び振付   關屋敏子
 衣裳及び背景考案 小村雪岱
 オーケストラ指揮  山田耕筰(東京) 
           高木和夫(大阪)

      梗概

 「向ふ通るは淸十郎ぢやないか、笠がよう似た菅笠が」‥‥‥‥悲戀に苦しみ血を吐く思ひのお夏が可憐な狂亂、歌ふて、舞ふて、戀人の幻影を追ふ件
    
                   昭和十年十二月一日  ー  十日迄 日本劇場
  日本に於ける第三回長期上演          東京・大阪
                   昭和十年十二月十三日 ー 廿二日迄 大阪劇場

    川路柳虹作詞
    關屋敏子作曲
 日本歌劇 グランドオペラ お夏狂亂 一幕 (上、下)
  
   時   元祿時代
   人物
    お夏     關屋敏子
    清十郎    早川雪洲
    女馬子    若柳吉美津
    里の子大勢  杉浦眞美子 
           若柳光子
    飛脚     のぶ子、ひろ子 
           其他

   オーケストラ指揮        小松平五郎
    女馬子及び里の子振付      若柳吉三郎
   舞台監督            (高峯明)

 お夏狂亂

  Preludio より Introduzione になり、鳴子の音がして音樂がアレグレツトに移つた時に、木頭が入つて開幕される。
  舞臺、夏の終り頃の思ひ入れにて、草木よろしくありて、正面は杉林になり、下手は地像になりてが見へる。
  黄昏は舞臺を赤く染めて美しい上手奥から里の子の唄が聞へて來る。
 〽夕燒け小焼け あした天気になれ
             (音樂が入って)
  夕燒け小焼け あした天気になれ 
      上手から里の子出る。音樂は二度繰返す、二度目に子供が一緒に唄ふ。
      音樂變つて、
   ソロ〽向ふ通るは誰れぢやいな、
 コーラス〽向ふ通るは他人のひと、
   ソロ〽向ふに立つのは誰れぢやいな、
 コーラス〽そねの田甫のやれかゞし、
   ソロ〽向ふから來るのは誰れぢやいな、
 コーラス〽お山の小狐 化け狐
        ホーレ、ホーレ、ホーレ。
   ソロ〽いつもの いつものお姫樣、
 コーラス〽いつもの いつもの狂人ぢや、
       アツハツ ハアツハツハ (と二度笑ふ)
 コーラス〽かへるが泣くから歸ろ、
       歸ろ、歸ろ、歸ろ。
        下手に歸りかける。
 コーラス〽かへるが泣くから歸ろ、
       歸ろ、歸ろ、歸ろ。
        子供達去る、
        音樂につれて、お夏の悲しい聲が聞える。
        お夏、上手より出ると電気夕燒けを足元にやる。
 お 夏〽飾磨津 シカマズ の 茜の空の
     夕あかりさす渚邊に、
     かの船の戻らざりせば、
     もどらざりせば、
        音樂はなやかになる
 お 夏〽(靜かに)我れが思ひは美しき
     あの人ならで覺い得じ
     ないしよ話も 眞實も
     あの人ならでしよんがいな、
        恐ろしい音樂
 お 夏〽悲し悲し かの時ぞ 辛き追手にこの世のありとあらゆる悲しさの針よりも、はげしくおそいけりしな
 お 夏〽おゝ、愛しのひと 淸十郎
     そなたは、そなたは、どこにゐやるぞ、どこにゐやるぞ、
 お 夏〽たそがれは風の音 秘めて
     かの日 かの夜の憶ひ出の
     とりとめもなきものゝ隈
     いとあざやかに眼に見ゆる。
       電気前より段々暗くして、此處で月を登らせる、上手松の蔭より、
 お 夏〽あれ、あの山の端の宵月の
     狂へる如く 燃へ立つは
 お 夏〽黄い金 臙脂の薄明り、
     樹の間洩れさし添ふごとし
     わが胸の秘密たづぬる心地して
     光りいでぬ 光りいでぬ。
        お夏上手に去る、
        音樂あり
        月光ありて人なし
        電気此の場合松の木を浮び出す樣に注意する事。
        お夏以外はほとんど暗く、その時櫻を出す事根元は草。
        お夏は上手奥の方から出る、時は深夜になつてゐる。
 お 夏〽夢に現に いつもおふ
     わがいとほしの戀人よ
     櫻もあでに(櫻に電気をあてゝ)匂ひさく
     かの渚邊の たそがれよ(淸十郎の幻影現る)たそがれよ、
     おゝそなたは淸十郎、淸十郎。
        お夏かけ寄る
     おゝ いとほしの いとほしの戀人よ、
        淸十郎を前につれて來る
 淸十郎〽ゆるせお夏よ、つれなくて
     君と別れし 吾れならで
     身をそがれたる 縛めの
     鐵鎖にこそ へだてられ へだてられ
     想ふ心も通はじな
 お 夏〽姿 昔と變らねど
     なにか憂いの面ちは
     苦しき心 あればにや
     語らはせ 語らはせ
     今宵もしのぶ その昔の
     かの渚邊の 黄昏よ、黄昏よ、
 お 夏〽蟲齒いたみて うたゝねの
     かの幔幕の靑褥
     小袖かいやり わが見しは
     いかなる末の夢なりし
        獅子舞の太鼓の音が入り、その中に淸十郎が消へる。
        櫻の花散りて、去り行く淸十郎を追はんとするお夏をさへぎる樣である、櫻の木はのこる。
     いかなる果の夢なりし
 お 夏〽踊り狂ひて 立ち去りし
     かの獅子舞のあと追ひて
     わく抱きしめし 彼の人は あの人は、
     あゝあの人は。
        お夏地に横になる、
        電気は顔だけ照す、
        櫻の花散る。
        音樂終ると同時に電気を消す。
        暗闇に飛脚は下手松の蔭に寝そべる、
        文箱持参の事、
        櫻の木を取る、
        一寸の間ありて音樂と共に電気FJする夜明け近い。
        インデルメツゾが入る、華れやかになると現實の情景になる。
        これが終ると飛脚の音樂ありて飛脚現れる
        彼れはお夏を見ずに上手に去る。
        里の子の聲が下手より聞へる。
 コーラス〽淸十郎殺さば お夏も殺せ
      殺せお夏も 懐し戀路の二人連れ。
        くりかへす、
        里の子、ニ三人が淸十郎、淸十郎とさゝやく
        此の間にお夏が起きる。
 お 夏〽なにとや淸十郎殺さばお夏も殺せ
     さては罪着し 愛しの人
     いかなる罪科のあらうとも
     この燃ゆる胸の炎の消ゆべしや
        女馬子、里の子現はれてお夏をからかふ。
        里の子が女馬子を躍らせる爲に舞臺につき出す。
        女馬子歌に合せて踊る。
   唄〽坂は照る照る 鈴鹿は曇る
     合の土山 雨が降る。
        尚も踊れと云ふので音樂に合せてお夏、淸十郎をコシツプした樣なものを踊る。
 里の子〽ヤンヤ ヤンヤ ササ(踊り出す)
        踊りよろしくありて、今度は、お夏を中にして困らせる。
 お 夏〽童べよ わらんべよ、
     語らへよ、こゝな娘も
     そなたの群にまじりて
     歌はなん 歌はなん、
     わが戀の いやはてを いやはてを
 里の子〽向ふ通るは淸十郎ぢやないか
     笠がよう似た ずげ笠が
        女馬子及び里の子等上手に去る
 お 夏〽笠がよう似たすげ笠が すげ笠が
        狂的にお夏は歌ひ乍ら中央に來る。お夏の笑ひにて‥‥‥‥‥
                             ー 幕 ー
 ・写真

 〔上の写真:左から二枚目〕
   お夏 關屋敏子  ONATSU (TOSHIKO SEKIYA)

 〔同  三枚目〕  
   Compositrice e cantatrice SigNA TOSHIKO SEKIYA 
               (Lilic coloratura Soprano)
   Miss,Sekiya awarded a diploma (5206)by Royal Phihamonic,
   Italy a very rare and great Honor. (May 1928)  

   關屋敏子は世界最高の伊太利ボロニア音樂大學よりデプロマを授與さる。同大學は一六六六年の設立にて、デプロマ番號は五二〇六番なり。ベトウベン、モツアルトの樂聖も同大學よりデプロマを授與さる。
   
  ・英文筋書  牛山充
 
  ・献呈サイン 〔同  五枚目〕

 (三渓莊關屋樂譜)
  昭和十年十一月廿五日發行
  定價金参圓
  發行者 關屋敏子


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