一人でも留守番ができると言うので
私は用足しに 外へ出た
その間 わずか15分足らず
帰宅しても 彼からは何もなかった
実は 出かける前に こう言っておいた
「ピンポンが鳴っても 出なくていいからね!」と
最近 近辺で不審者情報が頻発
学校も家庭も 神経過敏になっている
登下校のみならず 普段から気をつけようと…
「電話は留守電になってるし 鍵もかけておくからね」
外部との接触は 一切断ってしまう
まるで子どもを信頼していない状況づくり
数日経過したある日 彼は言った
「ピンポンがずっと鳴っていて うるさかったよ!」
「それで どうしたの?」
「ずっと 見ていた」
モニターに映る宅配業者の様子を 見ていたのだ
でも 応答はしなかった
諦めて業者は帰ったらしい
しかし 彼はその時の状況が頭から離れなかったようだ
さらに 数日後の夕食中
家族で宅配が話題になった
「あの日の宅配 の不在票って入っていた?」
「うん あったよ 日本郵便だったかな…」
それを聞いていた彼は言った
先日とは違ったニュアンスだった
「ずっと待っていて かわいそうだった…」
目頭を押さえて 黙ってしまった
居留守を使った自分のために…
と考えたからではないだろう
ただ モニター越しに見えるおじさんの顔を
思い出して 感じたのだろう
何と優しい感性なのか!
それなのに 一人前に扱っていなかった私
過保護というより 罪ではないか!
人として 確実に成長していたのだ
-s.s-