今、フランスでは教員組合も含む労働組合が大規模なストライキを実施している。
1月19日は、かつてよりマクロン政権に予告していた「年金制度改革法案」に反対する統一行動日である。
現在、フランスでは年金支給開始年齢はまん62歳であるが、マクロン政権はこれを2030年までに64歳支給開始にしたい意向だ。
日本では段階的に繰り上げられて最終的に65歳に持っていかれるが、マクロンも当初は65歳を定年として年金支給もそれに合わせる持論を示していた。
しかし、中道右派の共和党の主張を受け入れて64歳になった経緯がある。
この改革案に対して、マクロンの一期目の政権時には黄色いベスト運動が真っ盛りの時であり、国鉄労働者の長期ストライキ等もあり改革を断念したのであった。
ちょうどコロナが拡大する時期でもあったため、強引に押し切ることはできなかったのであろう。
仕切り直した今回の提案は、64歳支給のかわりに最低支給額を100€引き上げて1,200€(約17万円)にするというものだが、これも労組は拒否している。
もともとフランスの年金支給額は当該労働者の最高給だった額の半分を支給するというものである。(事実は未確認だが…)だから、日本からすれば、かなり高額の支給額と言える。
それでもストライキを構えて反対するのは何故だろうか…。
フランスの労働者は権利意識も強いようだが、何よりも大事にしたいのは自分の生活を楽しむことである。
高齢になってまで雇用されて働くことを良しとしない雰囲気があるように思える。
現に70歳を超えて働いている人はごくごく僅かで日本とは全く比べるまでもない。それは、安定した年金制度があるからである。
実は、今日のストライキにフランス・ニース在住の孫娘が通っている学校の教員も参加している。
昨日、「私、明日も学校休みなの」って話していて分かったことだ。
因みに彼女は水曜日も休業日なので連続して休みになった。
これで、明日ストが明けてもまた2連休となる。
年末年始のバカンスに続き学校の休みは増えるばかりだ。
ただ、面白い話がある。
「友達の◯◯は明日、学校があるの」って言う彼女に、「えっ、どうして?私立なの?」って聞いたら、友達の担任の先生はストに参加しないので学校は通常通りなのだそうだ。
同じ学校の同じ学年なのに、ストに参加するしないで授業もそれに合わせるというのにはちょっと驚いてしまった。
日本では考えられない現象だ。
もっとも、今朝の報道によるとストに参加する教員は全体の70数%だというから、参加しない教員もいるということである。
まさかフランスにも「教師聖職論」があるとは思わないが、そこで労働者分断が行われているという話は今のところ入ってはいない。
要は、その教員の信念が行動を選択しているだけの話かもしれない。
日本のように保安要員が配置されたり代替えして他の人が授業をすることもないのがフランスらしい。
ストライキというのは労働者の権利として確立しているからであろう。
こういう姿を見て育つ子どもたちはある意味で幸せである。
目の前で社会学習が体験できるからである。
このストライキで何がどう動いていくか予断は許さないが、フランスの今日の状況の一端を見る思いである。
-S.S-