来られたお客さんAさんはその後数回訪れ、契約の運びとなったが
説明した契約金の半分を持ってきたのだった。
こちらとすれば契約金はいくらでもいいと思っているが、契約とは
その人を信頼し、契約内容にしたがってこそ正立するが、最初から
試されているようで、半信半疑のまま打ち合わせは進んでいった。
契約後何ヶ月か進んだ折、想像した通りうまく歯車がかみ合わなくなり
自分の思ったとおりの順序で進まないと気に食わないのか、ロフトを先に設計して欲しいと言い、全体が見えないとロフトは作れないとこちらは説明するが、Aさんは聞き入れようとはしなかった。
Aさんの夢は良く分かるが、家は住むために建てるものであり、キッチンやその他の生活空間を煮詰めた上で、構造を考え骨組みが出来、ロフトの位置が決まり 、外観を描く事が出来る。
メールを書き、話をしたが理解してもらえず、結局このまま進むと、お互い納得できる建物は無理だと判断し、どうやって事を終わらせようかと考え、相手のプライドの高さからすればこちらから断るわけには行かないだろうと考えたのが間違いの始まりだったのかもしれない。