■シャーク・ナイト■ 爽快です。私これ、大満足です。ちょこっと揉めただけで地元青年、この執拗かつ大掛かりな報復はやりすぎでねえの、と引きながら白けてたら、なんだスナッフビデオだったか、目的は。常習犯ね、それなら一応わかる。むしろ非現実的なのは被害者サイドか。優等生がフィジカル面でもスーパーマン過ぎるのがどうも御都合主義過剰(たとえば海底に腕発見あっぱれシーンはさすがに不必要だったでしょ、しかも間一髪のおまけ付きとは。どうせ本体はまもなく自決しちゃって腕は二度と出番なかったんだからさ)。でもとにかく鮫の種類と出現様式の多彩さで私ゃ基本大満足と。細かいとこ全部許しちゃう。全力逃走中に真ん前から巨大鮫ジャーンプ、バクーッ、なんて「こうなればいいな」的欲求をそのつど満たしてくれるサービス精神が嬉しかったのなんの。ただし片腕男の恋人とか、ただ悲鳴と水没のみだったでしょ、食われるシーンはひとりひとり全部映せと文句言っときたい。で、真っ先に食われるかと予想されたイヌだけど、いやはや受難を生き延びて、ラスト、芸が生きましたね。ヒロインの手をしっかりくわえて協力したのは緊迫の中だけにほのぼの度倍増。でもラストのラストがねえ。ああいうお決まり象徴表現で締めくくるなら、あゆふに雑にやるんじゃなくて、ほんとに食われた的リアリズムで締めてほしかったっけな。ま、なんだかんだでいろんな鮫が観れてよかった。ダルマ鮫なんてミニモンスターがほんとにいるんだなあ!
■スペイン一家監禁事件■ おなじみ『ファニー・ゲーム』と同じパターン、一家全滅モノだが、こっちは犯人側も相当のダメージを受けちまったところがなんというか、犯人サイドの人間くささを際だたせて、不条理風リアルドラマになっていると。しかし『ファニー・ゲーム』と違って家族を殺すつもりなんぞなかったと思うのだがな、あいつらには。なんであんな大騒ぎになっちまっただかや? 家族を人質に取っての連れ回しって、もともと強引すぎなのでは? 時間軸ぴったり一致のマルチビジョンは、最後にぴたっと名人芸的に融合する瞬間以外どうにも集中力が削がれたが、まあありかな。犯人サイドの分裂というか何というか、粗暴一点張り役とおまえ何やってんだむちゃすんな役とのコントラストが絡んで全体ぐぐっと引き込んでくれた装置の一部かな。ラストのバトルは明らかに被害者側圧勝パターンがなんで系。ともかくみんな言ってるように『ファニー・ゲーム』ととことん比較するとこの種の映画の手法から効果から全部解明できそうな。というか解明すべきものなどない、何やってもこのテのなら映画になる、ってバラしてしまいそうなこの映画。『ファニー・ゲーム』ではそんなこと感じなかったのにこれのとき感じたってことは、こっちの方を後から観たからか、それともあっちに比べて騒々しいこっちの犯人らの言動が<何事も見え透いてる感>をもたらしたからか。
■マザーズデイ■ 『スペイン一家監禁事件』の犯人らにもまして手際悪すぎのスットコ犯人らでしたねえ。そりゃあ無理ないか。自分の家だと思ってたんだもんね。監禁する予定なんてなかったんだもんね。ってよけい間抜けでしょうが。直前の強盗も失敗したらしいし、何ヶ月も前に家を手放した情報がママから伝わってないまんま強盗やるってどうゆう家族? だいたい死んでるの確かめてから捨てるのは基本でしょ。いや観てる方もあの女が顔に穴ぼこあけられたまま生きてたのは意外だったけど。犯人サイド、あんなんでよく三人も生き残れたもんだよ。被害者サイドで無傷だったのは一人だけですかね。生き残り人数多すぎなのはどうだったかな。あの騒々しさからして被害者ら全員まとめて死亡フラグが立ったものと思ってたんだが。連れ回しシーンの金引き出しのところ、『スペイン一家監禁事件』のコピーみたいだったしな。つかどっちが先なのかな? 終わってみりゃなんとまあ、始めっから重傷状態で登場して死亡確実と見られた童貞君がちゃっかり復帰、次の赤ん坊さらいで大活躍するわけね。まあ途中からどう転んでもいいようなシリアスドタバタ劇だったけど、なんというかな、いくら不倫されてたからってあれっぽっちの不確実な理由で他人の金を隠し通すかよ。てめえらの命がかかってるってのに。ありゃあ無理だよ……。無理に子どもに掛けようかつ賭けようとしてたけど、ちょっと的を外してたかな。あんだけ密につながってたっぽいサイコ親子が実はみんな血のつながりないんですよってのがミソらしいけど。
■ノーカントリー■ おっかないねこのサイコパスは。人間的感情ゼロだね。すべての映画のサイコパスん中でいちばんおっかないかもなこの男。風景のせいかな。店に入って意味もなく店主に生死の選択を穏やかに迫る低音のナチュラルさ。けっこうコワモテ系の店主が無表情でおびえる様子がちょっとあれ、微妙におっかなすぎて、他の場面みんな飛んじゃったよ。映画にとっては生きても死んでもどうでもいい端役だからこそ、おっさん結局生きられることになってホッとしましたねえ全く。あんな末端のワンカットのおかげであとのシーン全然覚えてねえや。
■冷酷処刑人■ もうちょっと頭冷やしたら。と言いたくなる。直接殺されたわけじゃないらしいし、もともとはあんたのイケイケ娘が自らまいたタネいうか、ああいう事故は予想の範囲内なわけでは? てな正論は置いといて、最初のあれ、問屋でビデオ全部買い取ろうとしたときのあれね、次第次第に壊れっぷりというか怒りが顕わになっていくスペクトル表現はみものでした。しかし真っ正面からベタにブッ刺すとはな。とにかく戦いまくって捕らえられては逃げて戦って、満身創痍の勝利。冷静さ失いっぱなしの復讐劇ならではの痛快さ。やっぱ頭冷やさなくてよかったよ。しかしあれだけの苦労に値する人間だったのかよ、あんたの娘って。
■ドリーム・ホーム■ チョイ珍しい女性サイコパス。たかだかあの目的のためにあんなことまでしてました、てのが一応オチってことになるんかいな。強引だけど、よしとするか。そこがサイコたるゆえんってことで。トンデモサイコ系ね。室内バトルが漫画チックいうかいちいちスラップスティックで笑えたなあ、たしか床上に転がった目玉に滑って転倒、みたいなシーンあるんじゃなかったっけか、よく覚えてないけど。子どもの頃のしみじみシーンとか余計なの省いて、スプラッターだけで通してもらいたかったような。いや、あれ省くとトンデモ動機の説得力がなくなってただのキチガイナンセンス映画になっちゃうか。ともあれレアな単独犯連続殺人鬼女登場させてくれたお手柄映画です。
■アニマル・キングダム■ よくわかんなかったんだけど、おばあちゃんが警察に対して影響力持ってるらしいあれって、一体何なの? 事情どっかで説明されてる? それにしてもぽんぽんと簡単に殺しまくってるねえ、どっちサイドも負けず劣らず。いくらなんでもリアリティ無さ過ぎでは。高校生主人公の抑え気味演技が多少バランスとってたとはいえ。だいたい殺して埋めるなら携帯の電源くらい切って埋めときなよ、馬鹿なの? 姿くらましてたポープってどんだけ大物かと思いきやあれじゃただの低脳ヤクザじゃないか。評価高い映画みたいだけど、俺はダメだなこれ。主人公の表情(というか無表情がときおり崩れる様子)のうまさだけが見所かな、これは。いちいち息子たちにキス(ホッペじゃなくてクチにね)を求めちゃ顔に指で唾なすりつけてるおばあちゃんも終始一貫気持ち悪かったの何の。悪い意味で。
■正体不明 ゼム■ うう~む。裏切られたわい……、いやまあ、たまにはこういうのあっていいか的な、しかしほんと、てっきりモンスター映画だと思い込んでたもんで。まあモンスターだけどな、たしかにあいつら。だってほれ、冒頭の車が襲撃される場面とかさ、ガタガタガガタって揺らされたりすっでしょ。ありゃもう完全に怪力モンスターフラグが立ってるっつの。いくら悪質なチーマーだって、あんなとこで意味もなく車襲いゃしないっつの。執拗な下水道追跡はしかし見応えあったな。道路越しの撮影、見事でした。しかしこれ、実話ってほんとかよ? どこまで実話? 半分も信じがたいけどなあ。
■バイオレンス・レイク■ 『正体不明 ゼム』と同種の犯人たち。こっちは対照的に成り行き系か。あっちがシュールならこっちはカジュアル。犬殺されたのがすべての始まりってのが何ともね。『正体不明 ゼム』がほんと正体不明モンスターからアラアラアラ、とある意味デクレシェンド陰鬱系だったのに対して、こっちはひたすらエスカレート状況の怖さだね。相手が始めからわかっていて所詮あいつら、だけど……って通俗の怖さ。しかしほらあのシーン、味方になってくれそうな少年を早まってぶっ殺しちゃったのは悲しかったね。ああいうときだけサバイバル姉ちゃんのワザが一瞬で決まるのね。少年もあんた、相手はパニクってるんだから少しは警戒しながら近づきなよ。で、逃げ込んだ先で救助の手が一転……ってなんとも散文的な終わり方。重ね重ねリアル。
■クライムダウン■ 中途半端だなあ。山から町へと舞台が移動しちゃうんだな。せっかくシュールな監禁少女発見シーンで始まったんだから山の中だけで終わらせるべきでは? 誘拐犯もあそこまで追っかけちゃうと目的が達せられんでしょうに。どうせ顔見られてるからいくとこまでいっちまえのノリってか? 警官を疑うシーンは緊迫感あったけど、狙撃はうまくいきすぎだよな。どこへ逃げても追ってくる、ほぼモンスターホラーでしたな。後半の派手さが全体のちぐはぐさで帳消しになっちゃったっけ。前半と後半、別の映画でやりなよって感じ。
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