真田丸のクライマックス「犬伏の別れ」
もう放映前からNHK番宣ほかネットで大騒ぎだ。最終回ではないのだが、三谷脚本真田丸を見続けてきてこの「犬伏」を見逃すことは、あり得ない。親兄弟があえて、敵味方に別れて戦う決断をする親子会議。これから関ケ原・大阪の陣と大舞台が控えているが、三谷氏が最も得意とするのは、犬伏のような舞台設定だろう。それに仲良し真田家が見られるのはこれが最後。寂しいなぁ。
真田家のこれまでエピソード、言葉の一つ一つが全て「犬伏」に繋がっているはず、「さぁこのあたりで、思い切り泣かせてくれ」みたいな感じ(笑)でも、そこは三谷脚本なので、どういった個性的な物語・解釈を見せるのか、とても楽しみにして見た。では感想を
素晴らしかったなぁ。見終わった後の爽快さが格別の回。クライマックスという位置づけは、正しかった。
まず治部様と大谷刑部様から泣かせる。私は片岡愛之助氏(ラブリン)は、それまで興味なかったけど、この大谷刑部を見てから、彼自身へのイメージも変わった、カッコイイ。→私のような人多いんじゃないか。刑部は寡黙なキャラだと思っていたが、ラブリン刑部は、はっきり言うべきことは言うし知略をめぐらす人物、それでいて高潔な感じが素晴らしくいい。あまりに融通が利かない治部様をしっかりサポートする姿、泣かせますね。
それから、吉田羊さん。やっとここにきて、らしくなった。真田兄の妻、真田家の嫁として彼女の活躍が今後楽しみ。(じゃないと、吉田羊をキャスティングした意味がない。)
で犬伏の別れ…三谷氏は、そう見せるのかという感じで、最初少し驚いたが、やはりラストで真田兄、大泉さんが全部丸ごともってった感じかな(笑)
真田パパは、戦において天才的な発想をする人だが、権力者の政治をすぐそばで長年見てきた信繁からすると、それはもう「パパは、時代の情勢が分かっていないよ」となる。これはパパも歳をとるから、仕方ないのだ。年齢を重ねる悲しさ。「夢物語だ」と怒鳴る信繁…私は堺雅人がやっと好きになった(笑)超えたんだな。父を。男の子はいつか父親越えをしなくてはいけないのだ。
父親越えは弟だけでなかった、兄も「真田を残す」という覚悟をもった戦略で、真田パパを驚かす。最後真田パパがお酒を飲みながら一人、ほほ笑んだのは、息子たち二人が自分を超えていった嬉しさからだろう。、三谷氏らしいセンス。信繁が武士としての義から石田方につくというもっとウエットで涙を誘う展開にも出来たはずだが、あえて、これまで積み上げてきた真田家の人物達が成長した姿として「犬伏」を見せた。
三谷脚本は前半パートで、日本人の大好きな定番、大河時代劇のお約束といってもいい「義」というテーマを治部&刑部コンビでしっかり抑えた。これは計算された展開だと思う。これがあるからまた、後半パートの最大の山場、「真田一族として生きる者の成長物語」が、また一段と引き立つ。これまでのドラマなら、後半「犬伏」も、「義」という理由で信繁が別れていく姿を描くはずだ、そう解釈しなかったのは凄い、今までの真田一族の姿が走馬灯のように流れる番宣を見たが、まさにそれの積み重ねだからあったから、この「真田家の決断」が見ていても、自然に受け入れられる。映画ではなく、長丁場の大河ドラマでしか出来ない脚本だと思う。とても臨場感あふれる人間ドラマだった。
もう一つ、このドラマは真田幸村こと信繁が主役だが、真田家が主役でもある。で、ドラマ放映当初は、真田パパが主役のような存在感だった、中盤はここで真田兄が、圧倒的主役的な存在感を示した。本来の主役である信繁が輝くのは、まさに関ケ原以降の戦い以降になると思う。最初優等生な信繁があまりに地味(笑)でつまらないと感じたが、ここから、兄を父を別次元で抜いていくんだなと気が付いた。そうあって欲しい。