花咲く丘の高校生

平成時代の高校の授業風景を紹介したり、演歌の歌詞などを英語にしてみたり。

ファニー(人生の幻影)

2024-07-06 | ショートショート
 ファニー
クリスマスキャロル』や『二都物語』の作者チャールズ・ディケンズの短編小説 A Vision of Life(人生の幻影)から、勉学に励む少年期の「学び」、青年期の「恋人」、老人の「幻影」の3コマの映像を翻訳しました。
 少年
その昔、一人の旅人がいて、彼は旅に出ました。そして、森の中のうす暗い道を辿っていくと、勉強の好きな少年に出会いました。そこで、旅人は少年と一緒にジュピターやジュノー、ギリシャやローマのことなどを学びました。勉強だけでなく、乗馬やクリケットも楽しんだし、夜中までダンスもしたし「シアター座」にも行きました。
 だが、ある日、旅人はこの少年を失いました。その名を呼んでも戻っては来なかったので、旅人は一人で旅を続けました。
 恋人
旅人はまた一人で旅を続けました。しばらくの間は何ものにも出遭わなかったが、とうとう恋ばかりしている一人の若者に出会ったのです。  旅人はその若者と一緒に恋の旅に出ると、二人はほどなく初めて見るような別嬪さんに出会いました。
― ちょうど、あそこの隅っこでこっちを見ているファニーのような ― 彼女の瞳はファニーとそっくり、髪もファニーで笑窪もファニー。そして、ファニーの噂をしていると、彼女は、まるでファニーのような笑顔で頬を染めていました。だから若者はファニーに恋をしてしまったのです。 
ー 始めてここに来た時に、名前の言えない誰かさんがファニーとしたように。そして、みんなから冷やかされました。ちょうど誰かさんがいつもされていたように、ファニーと一緒にさ。
 互いに好き合っているのに、そんな素振りはしなかった。
毎日手紙を書いて、・・・、一緒にいないと不幸せ。
 そして、クリスマスに婚約して、暖炉の傍でピッタリと身を寄せ合っていた。もうすぐ結婚するはずだった。
―名前の言えない誰かさんとそっくりに― おお、ファニー・・・。
 しかしある日、旅人は二人を失くしてしまいました。戻ってこいと呼び続けても、決して戻ってはこなかったので、旅人はまた一人で旅を続けました。
 幻影
森の出口に近づくと、木々の隙間から赤く燃えている夕焼けが目に入ってきました。
 木々の枝をかき分けて森を抜け出て、群青色の広がりの上に穏かに落ちてゆく太陽が見えてきたとき、旅人は倒木の上に腰を下ろしている老人に出会いました。
 旅人が老人の傍に腰を下ろして穏かに沈んでゆく太陽を眺めていると、彼が失くした人たちが優しく戻ってきました。勉強好きな少年も恋を愛した若者も、そして、あのファニーも・・・。(完)

誰もが体験(または空想)するような物語ですね。80代半ばの私はいつも、この老人(旅人)のような幻覚に取り憑かれています😇 
  

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする