上田桃子らを指導するプロコーチの辻村明志氏が、女子プロの中でも特に“上手い!”と思う選手のプレーをピックアップし解説する「女子プロの匠」。今回は申ジエのゴルフの根幹を形成するアプローチをチョイス。
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ジエは今季序盤、オフシーズンからの体調不良に悩まされ「こんなに勝てないのは久しぶり」というほど勝利から遠ざかったが、8月の「ニトリレディス」で今季初勝利を挙げると、11月の「大王製紙エリエールレディス」で2勝目をマーク。賞金ランクは5位に留まったが、平均ストロークを始め平均パット数、平均バーディ数、パーセーブ率、パーブレーク率、リカバリー率、パー3最少スコアの7冠に輝いた。
このタイトルが示すようにジエのゴルフは“攻めて良し守って良し”。ツアー屈指の難コース・小樽カントリー倶楽部で開催されたニトリ-と、昨年4日間の最少スコア記録が生まれたエリエールゴルフクラブ松山での大王製紙-の両方を勝利していることからも、攻守にスキがないことが見て取れる。
とはいえ、ジエのゴルフはメリハリのあるタイプというよりは、辻村氏曰く「基本的には攻め一辺倒」。「ジエさんは安パイ(安全策)なゴルフはしません。リスクを負って攻めて行く。そして流れに乗ったら手を付けられないタイプ」。それを支えているのが類まれなるショートゲームだ。「アプローチはツアー屈指の技術。高く出せて止められる。だからショットで自信を持って攻めて行けるし、外しても大けががない」。では、そんなアプローチの中でも、今回は特にジエの上手さが際立つロブショットについて解説してもらおう。
まず大前提として「ジエさんのアプローチは全てが天才的。何が上手いとかじゃない(笑)目に見える技術だけでなく、イメージの作り方も天才的に上手い」と始めた辻村氏。ロブショットのアプローチは大きく分けて2パターンがあるという。「1つは手首を使わずにワイドに動かすノーリストロブショット。ジエさんのは(フィル・)ミケルソンと同じように、手首を効かせてくるもう1つのロブショットです」
そのロブショットの中でもジエの手首の柔らかさに注目する。「クラブがVの字に動く。体は回してない。絶対にテークバックで右に流れない。左足一本だけでヘッドを一番高いところに挙げてくる。リストだけでVを描いているような感じです。だからと言って手打ちじゃない。何故なら、体が違うポジションにいったら手打ちになりますが、最初から最後まで自分の中心でものごとをおこしてるからです」
Vを描くスピードもポイント。「大きい動きなのですが、すごくゆったりなんですよね。このVの動きは、少しでも不安がある人は打ち急ぎになりがちなのですが、自分に自信があるから、焦らず振れる。何でゆっくり振る必要があるかと言うと、ボールをゆったり飛ばすためには、自分自身、クラブ自身がゆったり動かなければならないからです。ジエさんは“このボールを打つためにはこういう動きをしなければならない”と、打ち出すボールありきで動きを決めている。ゆっくり動けばゆっくりとした球が出るだろう、という感じではないんです。それはつまり球のイメージ力がものすごくあるということ」。打ち出す球をイメージして、それに沿った動きをするだけ。手先で微調整はしていない。
立ち方にも匠の技がある。「普通、ロブショットって言ったら左向いて打つ選手が多いですが、ジエさんは打ちどころに対してまっすぐにアドレスする。本当に体の正面で立てて向くという感覚。アマチュアの方に多い30~40度左を向いてバンって打つロブショットは結局一か八かの“エイヤー”というロブショットでしかありません。ジエさんのような本当のロブショットはスクエアから5~10度くらいしか左に向かずに、その中でスパッと振る。だからリストを大きく動かせるんです。決してギャンブルショットではありません」
では、そんなジエのアプローチからアマチュアは何を学べばよいのか。それは真上からボールを見ているアドレスだという。「結局アプローチは立ち方なんです。ジエさんはたぶん、目をつむっていてもロブショットを打てると思う。それはどこにボールがあるか分かっているから。アマチュアの方々は間違ったボールポジションをするから、目が無きゃ打てない。ポンってクラブを降ろしたところがポイントだってことを、ジエさんは分かっています。クラブの入り口に全部重心が乗っている。アプローチこそ小手先じゃなくアドレスが大事です。動かすのは体の中から、そして足の裏。ジエさんはあれだけリストを柔らかく使っているのに、足で感じているものの方が大きい。また、まずボールの右側には立ってない。ボールの左サイド、どちらかといえば出口くらいに立っている」
ボールの前後にも気を付けて欲しいと続ける。「ジエさんほど球の位置が近い選手はいません。ショットからそうなのですが、ボールに近ければ近いほど手は使えなくなります。そうすることで体を使うしかない状態を作る。これはアマチュアの方にも試してみて欲しいですね。手が動くルートが一本道だから、ちゃんとしたルートを通って来られるようになりますよ」
解説・辻村明志(つじむら・はるゆき)/1975年9月27日生まれ、福岡県出身。ツアープレーヤーとしてチャレンジツアー最高位2位などの成績を残し、2001年のアジアツアーQTでは3位に入り、翌年のアジアツアーにフル参戦した。転身後はツアー帯同コーチとして上田桃子、藤崎莉歩、小祝さくらなどを指導。上田の出場試合に帯同、様々な女子プロのスイングの特徴を分析し、コーチングに活かしている。プロゴルファーの辻村明須香は実妹。ツアー会場の愛称は“おにぃ”。
以上、アルバニュース
アプローチはシンジエがピカイチだと思います。
解説でもありますが、フィニッシュ時の重心位置でアドレスしてフィニッシュを意識したスイングしているように見えますね。だから安定感があるんだと思います。
このアプローチのスイングがベースになって正確なドライバーショットにもつながっているように思えます。