温泉やパンダで有名な観光地・和歌山県白浜町に、国内外からIT企業などが次々と進出している。情報通信技術(ICT)を活用し、時間や場所の制約を受けず柔軟に働く「テレワーク」の拠点施設が、平成27年に総務省の補助事業で開設されたのがきっかけ。町と県が用意した2つの貸事務所計11室はすでに満室状態で、新たな施設整備も検討されている。パソコンを使ってリゾート地で仕事をする。仕事(ワーク)と休暇(バケーション)を組み合わせた「ワーケーション」が日本でも広まりつつある中、白浜はその先進地として注目されている。(前川康二)
-サーフショップのようなオフィスー
東京(羽田)と直結する南紀白浜空港(白浜町)から車で約5分。西に紀伊水道、南に吉野熊野国立公園を望む小高い丘の上に、県が開設した貸事務所「白浜町第2ITビジネスオフィス」はある。
その一室に入居する東京の飲食チェーン「サブライム」の白浜事務所は、サーフショップをイメージした内装。バルコニーから海が見える開放的な空間では、男女3人の社員が電話応対をしながらパソコンを操作していた。
同社は首都圏を中心に飲食店を約400店展開し、年商約220億円。新たにIT関連サービスを始めるにあたり、新たな拠点として白浜町を選んだ。「昨今のIT化で働く場所は関係ない。むしろ白浜町の方がメリットが大きい」と松岡庸一郎執行役員はいう。
白浜事務所で展開するのは、飲食店向けの電話予約受付サービスと、人材紹介会社向けのアポイント業務。電話で受け付けた内容をシステムに入力する仕事なので、オフィスの場所は関係ない。本社とのやりとりは、主にテレビ電話で行うという。
入居にあたっては県から補助金が出るため、約100平方メートルのオフィスの家賃は「六本木の駐車場程度」(松岡執行役員)。東京と比べて格段に広いスペースを確保できるため、子供を連れて出勤し空いたスペースで遊ばしておくことも可能という。
「都会よりも通勤時間は短く、疲れたら公園を散歩してリフレッシュできる。働くには最高の場所です」と男性社員(37)。同社は事務所の業務を拡大し、人数も2年後には15人程度に増やすことを検討している。
-米企業誘致が起爆剤にー
こうした企業誘致は、町が平成16年、民間企業から買い取った保養所を整備し、貸事務所(7室)を開設したのが始まりだった。しかし、入居した2社が数年で撤退すると、5年以上、全室が空室状態と苦境が続いた。
変化が訪れたのは27年。総務省のテレワーク推進の地域実証事業の委託先に採択されたことで、米IT企業の日本法人が入居。電話やメールで顧客に連絡し、新規案件を受託する新しい働き方が注目を集めた。
後を追うように、同社の取引先企業も進出し、1年後にはオフィスは満室に。県の担当者は「IT業界では複数の企業が協力して事業を展開することが多く、良い呼び水になった」と振り返る。
地域実証事業では、東京でオフィスを構えていた時に比べ商談件数が11%、契約金額が63%増えたことが判明。通勤時間が減り、地域との交流や余暇の時間が増えるなどの効果も実証された。
こうした結果に自信を深めた県は、さらに企業の受け皿として今年6月、白浜町第2ITビジネスオフィスを開設。入居希望が相次ぎ、10月にはモノとインターネットがつながる「IoT」関連事業を手がける「ウフル」(東京)の入居が決まり、4室すべてが埋まった。
-広まるワーケーションー
ワーケーションは近年、ITの進化に伴い米国などで広まったビジネスのスタイル(考え方)。「働き方改革」の推進もあって日本でも注目を集め、沖縄県などでも始まっている。白浜町は観光やリゾートの環境が整い、空港の立地で東京からのアクセスも便利な点が人気を集める。
ウフルの園田崇社長は「IT企業が集積し、国内外の顧客を招いても喜ばれるすばらしい自然と環境がある。この白浜で社会問題を解決するような事業を生み出したい」と話す。
また、第2オフィスに入居が決まっている不動産大手の三菱地所は、全国で運営管理するビルの入居企業を対象に、新規事業の立ち上げに関する合宿や研修、有給休暇用の「ワーケーションオフィス」として年内に運用を始めるという。
こうしたワーケーションの需要を満たし、今後も白浜にIT企業などを誘致するため、県は町内の遊休施設の活用など新たなオフィスの供給を検討。「日本のシリコンバレー」とする壮大な構想も描いている。担当者は「ITが白浜の新たな主要産業になるよう、どんどん企業を誘致していきたい」と意欲をみせる。
以上、産経新聞
こういう発想はいいですね。
災害の多い日本だから、企業だけでなく、国の機関も同様のことができないか?
そこのところをもっと真剣に考えてほしいものです。