安倍晋三首相とロシアのプーチン大統領が14日の会談で3年以内の平和条約締結を目指すことで合意したのは、中国が北極海への権益拡大に動き出したことも大きな要因となった。北極圏はロシアの聖域だけに、日本と経済だけでなく、防衛分野での結びつきを強めることにより、中国の台頭を抑えたいとの思惑がある。
今年5月、ロシアの首都モスクワ「赤の広場」で、対独戦勝利を祝う軍事パレードが開かれた。そこに、全ての装備を真っ白に塗装した一団が現れた。北極圏防衛を担う主力部隊だ。パレード参加は昨年に続き2回目だが、車両や装備の数は大幅に増加された。防衛省幹部は「北極圏権益を死守するという意思の表れだ」と分析する。
北極圏は、世界全体の未確認天然ガスの30%、石油の13%が眠る天然資源の宝庫だ。さらに温暖化で海氷面積が縮小したことにより、輸送航路としての価値も高まっている。極東と欧州を結ぶ場合、インド洋~スエズ運河を通る航路だと2万キロ。対する北極海航路は1万3千キロと6割強しかなく、輸送時間も10日間ほど短縮できる。
また、露海軍は、北極海とオホーツク海に戦略原潜を潜行させており、ロシアにとって核抑止力の基盤でもある。
それだけに、ロシアは早くから北極圏開発に乗り出していた。2011年には北極海中央部を自国の大陸棚だと主張。16年には世界最大規模の原子力砕氷船を進水させ、北極海の港の増強も進めてきた。
その権益を脅かす動きを見せているのが中国だ。今年1月には北極政策をまとめた初の白書を公表し、北極海航路を「氷上のシルクロード」と位置づけ、天然資源や新航路の開拓に意欲を示した。今年9月には初の国産砕氷船「雪竜2号」を上海で進水。遠洋型の海軍力増強も着々と進める。
いずれの動きも、ロシアには「聖域への挑戦」としか映らない。択捉島に地対艦ミサイルを配備し、北極海航路上でミサイル発射演習を繰り返してきたのは、中国に対する牽制(けんせい)の意味合いがある。
だが、ロシアの国内総生産(GDP)は日本の3分の1、中国の8分の1にすぎない。露海軍の装備の老朽化も進んでおり、防衛関係者の間では「中露の海軍力はもはや逆転した」との見方が支配的だ。北極海の権益を守るには、経済だけでなく、防衛分野でも日本の協力は不可欠となりつつある。
「今年のボストーク(露軍の極東軍事演習)では、日本に配慮してクリール諸島(北方領土と千島列島)での演習を見送ったよ」
今年10月、防衛省の河野克俊統合幕僚長が訪露した際、ショイグ露国防相はこう耳打ちした。北極海権益を守るため、日本との防衛協力を深化させたいというサインだったとみられる。
(石鍋圭)
以上、産経新聞
北極海を狙う中国に対して、日本はロシアと手が組める。
そういう意味では北方領土に関してロシアと友好的にできれば、日本にとってもロシアにとっても有益かなと思われます。