[北京 7日 ロイター] - 今年、いくつか重要な記念日を迎える中国では、一党支配を敷く共産党による政治的忠誠の要求が過熱している。
共産党が「誤った思考」に対して警告を発する中、高官たちは習近平国家主席と同主席の哲学に競って忠誠を誓っている。
中国は今年、慎重な対応を要する節目をいくつか迎える。学生らの民主化運動が武力弾圧された「天安門事件」から30年、チベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世のインド亡命の契機となったチベット動乱から60年、さらに10月1日には、共産主義国中国が建国されてから70年を迎える。
多くの人が命を落とした長い内戦の混乱と革命を経て、1949年に中華人民共和国を建国した中国共産党は、「乱」が起きないよう常に警戒を怠らず、何よりも安定を重視してきた。
「今年は建国70周年を迎える。持続的かつ健全な経済発展と社会の安定を維持する使命には、極めて大きな努力を要する」と、習主席は全国人民代表大会(全人代)が開幕した5日、内モンゴル選出の議員らにこう語った。
習主席は2012年に党中央委員会総書記になって以降、政府や市民生活のほぼあらゆる面において党の支配を強めている。
昨年の全人代で、国家主席の任期を撤廃する憲法改正案が採択され、習氏は望めばずっと主席の座に居続けることが可能となった。ただし、それが実現するかは定かではなく、これについて習氏は公に語っていない。
党は、中国が「党の構築」と呼ぶテーマを話し合う幹部総会を年内に開催する可能性が高いと、中国指導部とつながりのある外交官や関係者は明らかにした。党の支配強化を目指し、党の指示が確実に守られるようにするためのコンセプトだ。
1月には国営メディアで「党の政治体制強化」に向けた新たなルールが公表され、党として忠誠心を改めて強調し、忠誠を偽ったり「低レベルの共産党員」であったりしてはいけないと党員に呼びかけた。
「イデオロギーに関するあらゆる誤った考え、曖昧な理解、悪しき現象を非常に警戒せよ。油断せず、事態を早期に見極めよ」と同文書は警告している。
<忠誠第一>
国営メディアが伝えた公式発表によると、習主席は、中国共産党の幹部を養成する中央党校で3月1日行ったスピーチで、少なくとも7回「忠誠」という言葉を使った。
政府高官が党に忠実かどうかは、彼らに理想や信念があるかをはかる重要な基準となると習主席は明言。「忠誠は常に何よりも重要である」と同主席は述べている。
中国は、党の命令に対して底辺で抵抗が起きる可能性や、経済の減速、また国民が豊かになるにつれて政治改革を求める声が高まることを懸念していると、エコノミスト・インテリジェンス・ユニットのアジア担当ディレクター、ダンカン・イネスカー氏は指摘する。
「支配への欲求はある時代特有のものではなく、転覆を常に恐れる独裁政権の根本原理だ」と同氏は語った。
党への絶対的な忠誠によって選ばれた代表が全国から集まり、ほぼ形式的に進められていく全人代だが、今年は習主席が一段と存在感を示した。
全人代が開幕した5日、閣僚たちは記者団との会話の中で、習氏に計16回言及した。
「イデオロギーが何よりも優先されている」と、オブザーバーとして全人代に出席したある西側外交官は語る。「全ては建国70年だ」
<背信根絶>
党は、背信行為や党方針からの逸脱の根絶を、汚職監視当局の取り締まり内容に位置付ける傾向をますます強めている。同局の役割は名目上、贈収賄などの犯罪行為を取り締まるものだった。
同局は先月、地方政府や省庁に対する今年の調査で「政治的な逸脱を明らかにする」とした。
反腐敗運動を指揮する党中央規律検査委員会トップの趙楽際氏は、1月に行った演説で「忠誠」という言葉を8回使った。
「党に忠実だという手本を示しなさい」と同氏は呼びかけた。
中国は、汚職撲滅運動について、習氏による政敵排除や政治的駆け引きではないと繰り返し強調している。同氏は2015年にシアトルで、ネットフリックスで放送されて人気の米政治ドラマ「ハウス・オブ・カード 野望の階段」のような権力闘争ではないと述べている。
党がさらに深く懸念しているのは、党の支配を終わらせかねない危機をあおるような国内外の事件や情勢不安である。
習主席は1月、甚大な影響をもたらす想定外の事態を意味する「ブラックスワン」に特に注意するよう述べている。
また同月、中国の警察トップは、警察は市民による暴動「色の革命」を阻止することに重点を置き、政治体制の防衛を第一に行動しなければならないと語った。
党は一方で政治改革に関心を示しておらず、中国共産党の美点を重ねて強調している。今月、国営メディアのツイッターアカウントに、「中国の民主主義」をたたえる英語の宣伝ビデオを掲載した。中国ではツイッターは依然ブロックされている。
国営の新華社通信は3日、英語の論評で、中国は自国の政治モデルに忠実であり、西側の民主主義は拒否すると主張した。
「わが国は1世紀前に民主主義について学ぶようになったが、すぐに西側の政治スタイルはここでは機能しないと分かった。混乱と内戦が何十年も続いたからだ」
(翻訳:伊藤典子 編集:山口香子)
以上、ロイター記事
中国共産党は、綱渡り状態になっていると思われる。
習近平が中国共産党支配を崩壊させてくれると期待しています。