12月10日で終わってしまいましたが、埼玉近代美術館の「ディエゴ・リベラの時代展」を見てきました。
リベラと繋がりのあったメキシコ人画家たちや日本人画家たちの中で、印象に残った1人が北川民次。
民次は、1894年に静岡に生まれる。早稲田在学中の19歳でアメリカに渡り、紆余曲折経てメキシコにたどり着く。野外美術学校で子供や若者にアートの指導にあたる。校長も務めた。
その「紆余曲折」のところも、回想録を読むととても面白い。アメリカでは画学生から労働作業員へ。農園の同僚黒人労働者たちとの毎夜の遊び。メキシコに渡るも、日本人に全財産持ち逃げされる。住み込み家政婦をしたり絵の行商人をしたり。同僚の悲しい人生、中米の先住民とのふれあい、不思議な体験。。。
若い民次の体験は、そのまま波乱万丈なドラマができそう。
(メキシコで校長になってからも、イサム・ノグチや藤田嗣治も訪れた。藤田嗣治とその恋人をもてなした話、当時のメキシコシティのアート業界、日本人社会の話も面白い。役者は揃っている。)
というタフガイ民次に興味ひかれていたところ、タイムリーに岡崎市立美術館で北川民次版画展が開催中というではないか。
行きたい〜でも24日まででは無理か〜泣
ん?この「狂女」という女性
見覚えがあると思ったら、この人だった。
日本中の園児たちを震え上がらせた、「ねずみばあさん」ですよ。
ねずみばあさんは、1974年出版の「おしいれのぼうけん」でデビュー。
耳のあたりやポーズも似ている。
民治の「狂女」は、無垢でかわいらしい印象。ねずみばあさんみたいにこわくはなさそう。
民次の絵は、野外学校で子供の絵に触れていたせいか、素直な表現だと思う。その点では、子供向けの本のこの挿絵とあい通じるかも。
民次は、日本に帰国してからも、児童教育に携わる。
久々に「おしいれのぼうけん」を読み返しみたら、絵がとってもいいなあ。
幼稚園で、おしおきに暗い押入れに入れられたアキラとサトシ。ねずみばあさんと手下のねずみから逃げまどいます。そして、勇気をだして励まし合い、生還を果たすのです。
ねずみの街灯がコワかわいい
この高層ビル、どこかで見たような。
この本の出版は1974年。
新宿に最初の超高層ビルが建ったのが1971年の京王プラザだから、超高層ビルの出始めの頃。
さりげにねずみばあさんは最先端を走っていたのだ。
アキラとサトシも、首都高みたいな高速道路を逃げ惑っていた。ちょうど首都高建設が延伸している頃だ。
子供たちもねずみばあさんも、インフラ建設の目まぐるしい変化と発展の中に暮らしていたのだ。
民次の行った頃のメキシコはどんなだろう。当時のメキシコシティは日本よりはるかに都会だったという。
私は20代のころメキシコに二回行ったことがある。といっても、メキシコシティに一泊と、アメリカ国境のティファナに半日だけ。乾いた土ぼこりの舞うそまつな平屋のティファナ郊外、重厚なヨーロッパ風の建物が並ぶメキシコシティ。同じ国とは思えないほど印象は全く違った。
民次の絵や描いたものからは、ティファナの風景を思い出す。
回顧展があるといいな。