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大量死と探偵小説

2024年11月14日 | ミステリ
■日本ミステリ評論界の法水麟太郎だね。
★惜しむらくは、他に熊城捜査局長や容疑者らが周りにいないことですね。
■法水麟太郎以外の登場人物たちも、中世歴史家や思想家ていどの知識と教養があるから、
法水麟太郎のホラ話にツッコミを入れることができるんだね。
★孤高の思想家、評論家、というイメージだけど、「若い人をターゲットに書いている」そうなので、
この本もこれまでに書いてきた評論集から、これから読む人のために「エッセンスを抽出した」ということみたいです。
■自選のベスト・オブ・ベスト的なものかな。ちなみに創作でも評論でも、笠井潔の本は初めてです。
大昔に「バイバイ・エンジェル」の角川文庫本を買ったきり、そのまま。
★同じフレーズが頻出しますが、それこそ著者の言いたい核心と思われます。
■「戦争における大量死がそれまでの体制概念を破壊し、
その反動で直接に大量死を被った国には破壊された概念と入れ替わるように様々な主義、主張が出現、
大量死を体験していない国には主義、主張の代替装置として「本格ミステリ」という表現形式が流行った」、ということかな。
★なぜ第一次世界大戦後にイギリスとアメリカで本格ミステリが生まれ発展し、
第二次大戦後には日本で本格ミステリが生まれたか、という疑問にはうまく説明をつけてくれます。
■戦争における大量死があれば必ず本格ミステリの発生があるわけでなく、
発生の前準備としてモダニズムが必要、という点も重要だね。
★どこにでもいつでも生まれるわけじゃない、ということですね。
■しかし、こんなむずかしいことを考えながらミステリを読まんといかんのかね。
★著者の興味の中にミステリの占める率は数%かもしれませんが、表現形式としてミステリを選んでくれたことには感謝しましょうよ。
■後書きあたりで、著者の創作と評論をつなげる視点で解説してくれるよう、誰かに頼めなかったのかなあ。。
★おメガネにかなう人がいなかったんでしょう。間違った解釈をされるくらいなら、自分で書いたほうがマシだと思ったのでは。

大量死と探偵小説 笠井潔  星海社新書
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