コラム(20):中国ガス田開発の意図
中国が東シナ海の日中中間線【※1】の自国側海域で、海洋プラットフォーム【※2】を急速に増設させています【※3】。これに対して日本政府は平成27年版防衛白書で取り上げ「海洋プラットフォームの軍事施設転用」への危機感を募らせています。
【※1】日中中間線:沖縄諸島と中国大陸との中間に位置し、日本が排他的経済水域の境界線を定める基準として主張している線。日本はその権益の範囲を国際的に一般的な日中中間線とするのに対し、中国は大陸棚の先端沖縄トラフまでを主張している。
【※2】海洋において掘削および生産の作業をするための土台となる海洋構造物類。坑井保護、居住、生産処理、掘削および生産、貯油などの機能がある。その型式には、固定式、浮遊式、重力式、人工島、揺動式がある。
【※3】中国は2013年6月以降に新設したプラットフォームや土台は12基に上り、既設の4基を加えて16基となった。
これは中国側の海域に作られていますが、軍事転用の意図が明らかです。
ガス田の採掘の経緯
東シナ海におけるガス田開発の歴史は、1968 年国連アジア極東経済委員会によって海洋調査が実施されたことに始まります。この調査の結果、大規模な石油ガス田が存在するとみられ、1999 年に中国が平湖ガス田開発、操業を開始しました。
問題の発生は、2003 年 8 月、中国による春暁(日本名・白樺)ガス田の海洋プラットフォーム建設工事からです。設置位置が日中中間線からわずか 5km中国寄りのため、日本は「地中では日本側のガスも吸い出すことになる(ストロー効果)」との理由で抗議をしました。
ガス田の採算は取れない
実は、東シナ海には大した海底エネルギー資源は無いとの理由で、2004年、石油メジャーのロイヤル・ダッチ・シェルとユノカルは中国のガス田開発から撤退しています。また、日本も原価割れの可能性が高いので試掘権が与えられた帝国石油が実施を見合わせました。
なぜ、日本政府は中国に抗議するのか
そのような地域にも関わらず中国がガス田開発を進める理由は、資源エネルギーの獲得が主目的ではなく、軍事施設の構築が真の目的であることは明白です。
中国はプラットフォーム上に、レーダー【※4】や水中音波探知機、弾道ミサイル発射装置などの配備を計画しています。完成すると、沖縄本島や南西諸島すべてが射程内に入り、日本の安全保障上の新たな危機となります。
【※4】現在、中国沿岸部に設置されているレーダーでは、尖閣諸島周辺までの情報収集が精いっぱいだが、中間線付近にレーダーを設置することで500キロ圏内のあらゆる通信波を拾い、沖縄、南西諸島全域の自衛隊と米軍の動きをキャッチできる。
危機から日本をどう守るべきか
海洋プラットフォームが軍事利用された場合、それが日中中間線の日本側の排他的経済水域であっても、日本には何の対抗手段が無いとされています。理由は排他的経済水域は公海とほぼ変わらず、海底資源開発や漁業利用以外、何の権利も持たないからです。
したがって、日本は、引き続き中国に対し建設の中止や撤去、軍事行為の抑制を促すと共に、有事の際に速やかな対応が取れる体制の構築が急がれています。
早急に安保法制の可決を図り、改めて日米の軍事的な連携を深め、海上や空中からの徹底監視体制の強化と、それに対応できる最新鋭の艦船や航空機の増強が急務となります。
防衛予算を大胆に増やし、艦船や航空機のみならず、高性能機器の配備や人材の積極的登用に力を注ぐ必要があります。
これは最低限、国家の存立を守るための自衛措置であり、決して軍事国家への道を突き進むことではありません。旧来の法に捉われるあまり国際環境の変化を見誤ってはならないのです。
私たちは、日本の眼前に迫る危機をしっかりと認識するべきだと思います。
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