「環境に優しい」を謳う詐欺商法の終わり
トランプ氏が米大統領に当選したことで、これからCO2に関する神話が世界的に暴露・崩壊していくだろうとの見解を国際政治学者が述べています。許可を得て掲載いたします。
グリーン詐欺の時代が終わる
「人間が化石燃料を燃やすことで二酸化炭素が大気中に増加し、その結果として地球が温暖化し、気候変動が激化している」という主張は、全く科学的根拠に基づいていない議論だとされています。このような主張を利用して生まれたのが、いわゆる「環境に優しい」と謳う詐欺的な商法です。これを英語では「グリーンスキャム(Green Scam)」と呼びますが、こうした「グリーン詐欺」の時代は終わりを迎えつつあるということです。
日本においては、経済産業省がCO2排出量を取引する「排出権取引」という制度を導入しようとしています。また、動力源として水素を活用し、ガソリンやディーゼルを全廃して水素に置き換える計画も進められています。
しかし、水素は零下250度という極低温でないと液化できず、扱いが非常に難しい燃料です。宇宙には豊富に存在しますが、これを実際に燃料として活用するのは極めて困難です。原発推進派の考えでは、原子力発電を用いて水素を製造し、その水素を使って自動車や工場を動かすという構想があるようです。
技術的には可能かもしれませんが、コストが非常に高く非効率的です。そのため、無理に水素を使用する必要はないのではないでしょうか。CO2神話が事実ではないと分かれば、なおさらその必要性は薄れます。
また、洋上風力発電についても同様の問題があります。台風やハリケーンに耐えられる設計ではないため、現実的に運用するのは困難です。さらに、経済的にも採算が取れないことが明らかになってきています。
新型原発は成功するか
それから、新型原発についてですが、新型の大型原発や小型モジュール型原発が議論されています。「小型のものを作ればいいのでは」という意見もありますが、最終的にはコスト面で見合わず、実現は難しいと思われます。また、これらの原発では、放射性廃棄物を最長で10万年も保管しなければならず、その社会的コストは非常に高額です。
市場経済において、あまりにもコストが高いものは排除される傾向にあります。しかし、この問題では市場内のコストだけでなく、社会的コストも考慮しなければなりません。たとえば、放射性廃棄物の保管にかかる負担は、市場の枠を超えた課題です。さらに、人類はこれまでに何かを10万年保管した経験がありません。このような長期的な負担を子孫に押し付けるのは、極めて無責任な行為と言えるでしょう。
原発という仕組みを深く考えると、非常に刹那的であることが分かります。目先の利便性には優れていますが、発生する廃棄物をどのように処理するのか、十分な解決策が存在しません。たとえば、原子炉(ニュークリアリアクター)は当初40年の使用期限とされていましたが、寿命を60年、さらには80年まで延ばそうという動きもあります。もちろん、修繕しながら使用するにしても、老朽化に伴い欠陥が生じやすくなり、事故のリスクも高まります。
さらに、原子炉を80年使用した後、その廃棄処理はどうするのかという問題が残ります。現状では、具体的な処理方法が確立されていません。これも高濃度の放射性廃棄物であるため、対応が非常に難しいのです。たとえば、イギリスでは初期に廃炉にした原発であっても、完全な処理には100年かかると言われています。その間、膨大なコストが必要です。
私たちがそのコストを負担するだけでなく、未来の世代にまで押し付けることになります。これは到底許されるべきことではありません。原発の導入や継続を議論する際には、このような社会的影響を十分に考慮する必要があります。
メイド・イン・チャイナのエネルギー
原発というのは非常に刹那的な考え方に基づいている部分があり、これが大きな問題だと思います。一方で、グリーンスキャムに該当しない太陽光パネル発電や地上風力発電などの技術は、これまでにも度々述べているように、世界的にコストが大幅に下がってきています。これらの技術は今後も存続していく可能性が高いでしょう。
しかし、課題として挙げられるのは、これらの製品に「メイド・イン・チャイナ」が多いという現状です。中国はダンピングによる不正競争を行い、世界中に低価格で輸出しています。その結果、他国のソーラーパネル産業や風力発電産業が打撃を受け、市場から撤退させられることがあります。そして、最終的には市場を独占しようという戦略を取っています。
こうした状況を放置すれば、中国に市場を独占された後、価格を自由に引き上げられる危険性があります。それだけでなく、安全保障上の脅威にもなり得ます。例えば、半導体や電力供給の制御を外部から操作され、必要な時に電力が供給されない、あるいは意図的に故障させられる可能性も考えられます。中国に逆らえば、こうした脅威を突きつけられるリスクもあるのです。
このような背景を踏まえ、中国製のソーラーパネルや風力発電機を市場から排除し、自由民主主義国家間で安定したサプライチェーンを構築することが必要です。これはCO2削減の取り組みに関係なく、技術的にも経済的にも非常に重要な課題です。
ソーラー発電や地上風力発電の技術は着実に進歩しており、これを活用しない理由はありません。なぜなら、これらは国内で発電できる電力であり、外国から購入する必要がないからです。可能であれば、ソーラーパネルを国内で製造し、日本産のソーラーパネルを活用して発電すれば、純国産の電力を確保することができます。このような方向性を目指し、日本のエネルギー政策を進めるべきだと考えます。
CO2カルト
さて、この話は原発推進論とも絡んでいますが、AI社会の到来により、AI革命が進む中でデータセンターの需要が急増していく、つまり電力需要がますます増加するという議論があります。これを理由に「原発を復活させるべきだ」という主張が出ているわけです。しかし、この考えについて、私はフェイクだと思います。
本質的には、いわゆる「CO2カルト」の発想に基づいているのです。電力が必要であれば、他の方法でいくらでも電力を生み出すことが可能であり、わざわざ原発に頼る必要はありません。以前もお話ししましたが、原発が行っていることは基本的に「お湯を沸かしている」だけです。蒸気でタービンを回す仕組みですので、お湯を沸かす手段は原発以外にも数多く存在します。そのため、原発が唯一の選択肢であるかのように結びつけるのは合理的ではないと考えます。
また、無国籍企業的なグローバリストの代表格として挙げられるのが、マイクロソフトのビル・ゲイツ氏です。彼は原発を非常に推奨しており、強い関心を持っています。同じくイーロン・マスク氏にも類似した傾向が見られます。実際、マイクロソフトは2023年9月に、閉鎖されていたスリーマイル島の原子力発電所を再稼働させ、電力供給契約を結んだと報じられています。
このスリーマイル島は、かつて「チャイナシンドローム」とも呼ばれる事故で有名になりました。原子炉のメルトダウンにより、溶解した炉心が地球の反対側まで達するのではないかというブラックユーモアが語られるほどの大事故を起こした場所です。当然ながら、炉心が地球を突き抜けることはありえませんが、それほど深刻な事故だったのは事実です。
このような背景から、アメリカではスリーマイル島の事故を契機に原発への信頼が大きく揺らぎ、原発推進にブレーキがかかるようになりました。それにも関わらず、この発電所を再稼働させようとする動きが出ているのです。これは、原発の信頼性や安全性に対する社会的な懸念を再び喚起するものだと言えるでしょう。
それ以降、原子力発電は徐々に影響力を失い、原発推進派も次第にその力を弱めていったという転換点が訪れました。一方で、10月にはアマゾンやグーグルが次世代の小型モジュール型原子力発電の開発に投資することが明らかになりました。マイクロソフト、アマゾン、グーグルといった大企業は、2030年までに全事業で温室効果ガスの排出量をゼロにする目標を掲げています。
これらの企業は、いわゆる「CO2神話」を信じているようです。そのため、原子力発電に注目しているという発想です。しかし、AI向けのクラウド容量の拡大は既にある程度限界に達しつつあるとの指摘もあります。最近ではファイナンシャルタイムズやウォールストリートジャーナルがそのような内容の記事を掲載しています。
もちろん、クラウド容量の拡大は今後も必要でしょうが、電力需要が爆発的に増えるために「どうしても原発が不可欠」という必然性があるわけではありません。電力が必要なら、CO2削減に固執せず、他の方法で電力を供給すれば良いという話です。しかし、原発推進派は、この状況を何とか原子力発電の必要性に結びつけたいと考えているように見えます。
もう一つの議論として、電力供給の問題があります。例えば、アマゾンやグーグルのデータセンターの近くに原発を建設し、そこから専用の電力供給を受けるというアイデアです。一見、効率的な考えのように思えるかもしれません。しかし、原子力発電所には周辺地域に危険性を及ぼすリスクがあるほか、原発の電力は公共の資源と見なされます。そのため、特定の企業だけに排他的に電力を供給することが電力行政の観点から適切かどうか、反対意見が存在しています。
最近、テキサス州で興味深い訴訟が起きています。訴訟の相手はブラックロックをはじめとする投資会社で、州の電力料金を不必要に高くしたとして提起されたものです。具体的には、CO2削減の義務を電力会社に過度に押し付けたことが問題視されています。
投資会社は非常に大きな影響力を持っており、自らが投資している企業に対し、「CO2を排出するな」や「グリーンエネルギーを採用しなければならない」といった指示を行ったとされています。その結果、電力料金が上昇し、州民の利益に反する状況が生じたとして、この訴訟が起きたのです。この主張には筋が通っているように思われ、非常に興味深い動きだと言えるでしょう。
こうした大企業が恣意的に行動する背景には、企業トップ層がリベラル的な価値観を持っていることが影響しているのかもしれません。そのため、原発の推進を抑制したり、CO2削減を強調する政策を取ることで、結果的にコストを押し上げている状況が見受けられます。また、CO2神話の真偽についての議論が十分になされていないことも問題視されています。この状況は、一部では新興宗教的な性質を持つとさえ言われています。極端な例を挙げると、公序良俗に反したオウム真理教のような思想的側面を持つ新興宗教にも例えられるかもしれません。
さらに、エネルギー問題について実際の数字を見てみると、ロシアへの依存度が非常に高い現実があります。例えば、2024年9月時点でEUの天然ガス輸入の23.74%がロシアから供給されており、ロシアは最大の輸入元となっています。このうち液化天然ガス(LNG)が全体の40%、パイプラインによる供給が60%を占めています。
また、2023年にアメリカの原発で使用された濃縮ウランのうち27%がロシア製でした。ロシアは世界の濃縮ウラン供給の約45%を占めており、アメリカ国内で消費された濃縮ウランのうち国産の割合はわずか28%にとどまります。国産のウランは高価であり、ロシア産のウランが安価であるため、ロシアからの供給が止まると原子力発電の収益性が低下してしまうのです。
こうした状況の中で、ロシアは2023年11月15日にアメリカへの濃縮ウラン輸出を禁止しました。特別許可が与えられた場合にのみ輸出を許可するとの方針を示し、アメリカ国内の原発推進派に対して圧力をかけています。この一連の動きが、今後のエネルギー政策にどのような影響を及ぼすのか注目されています。