自民党、初の反米政権
安倍元総理大臣の妻の昭恵さんが14日、アメリカ南部フロリダ州の空港に到着し、トランプ次期大統領の自宅でプライベートな夕食会に出席したと報じられています。
X(旧ツイッター)でも
「石破首相ですら会ってもらえないトランプ大統領。そのトランプさんに招待された安倍昭恵氏。」とか、
「しかし何度考えても、トランプから声が掛かるって昭恵さん凄すぎるな。アメリカ大統領だぜ? 石破総理云々じゃないんだよコレ。」
と驚きの声が上がっています。
NHKですら、「トランプ氏との会談をめぐっては石破総理大臣が11月、南米を訪問したあと、会談を調整しましたが、トランプ氏側から就任前に各国首脳との正式な会談は行わない方針を伝えられたことなどから見送られています。」とシラッと石破首相に皮肉をいう始末です。
それだけトランプ次期大統領にとっては、石破首相を「反米」と捉えているからにほかなりません。今回は、国際政治学者に石破政権の本「反米体質」について質を語っていただきました。
石破政権についてです。自民党初の反米政権の誕生には驚きました。
習近平との握手の仕方
11月15日、ペルーの首都リマで開催されたAPEC首脳会談で、日中首脳会談が行われました。
習近平国家主席としては、国内経済が非常に厳しい状況にあり、なんとか打開策を模索している時期でした。一方、岸田首相がバイデン政権との関係を強く維持していたのに対し、新たに就任した石破首相はアメリカとの関係が微妙であるとの見方がされています。このため、中国側は石破政権がアメリカ一辺倒ではなく、自国に歩み寄る可能性があると考え、早急に日中首脳会談を実施して日本を取り込もうとしたのでしょう。
産経新聞などの報道によれば、アメリカに依存している岸田政権よりも、対米自立を意識していると思われる石破首相の方が中国にとって話しやすい相手と見ているようです。このような背景から、中国側が石破首相の意図を見抜き、早めに首脳会談を実施したと考えられます。
この首脳会談で注目を集めたのが握手の仕方でした。習近平氏が片手で握手を求めたのに対し、石破首相は両手で応じました。一般的に、片手で握手を求める方が格上、両手で応じる方が格下という印象を与えるとされており、外交儀礼上では望ましくないとされています。このため、「へりくだった態度を取ったのではないか」という指摘がありました。
石破首相自身は、「選挙活動時の癖で無意識にやってしまった」と説明していますが、意図的だった可能性も考えられます。この握手は、「こちらは友好的で、低姿勢で関係構築をお願いしたい」というメッセージを相手に伝えたとも受け取れるでしょう。
さらに、米中関係が悪化しており、トランプ政権になれば一層関係が悪くなることが予想される中で、石破政権が中国と友好的な関係を構築しようとする姿勢を示した行動とも受け取れます。このように、中国側との対話を積極的に進める姿勢が見られた首脳会談でした。
イギリスとの協調の裏側
その直後の11月18日、ブラジル・リオデジャネイロでG20首脳会談が開催されました。この会談中に日英首脳会談が行われ、「日英2+2」を開始しようという提案が出されました。「2+2」とは、経済担当閣僚と外務大臣が集まり、協議を行う仕組みのことを指します。
しかし、この動きの背景には、明らかに反トランプの文脈が見え隠れしています。トランプ氏は従来のアメリカ主導の自由貿易一辺倒の政策を見直し、高関税を活用することでアメリカ経済、とりわけ製造業を復興させようとしています。一方で、グローバリズム路線を推進しようとしているのが、日本の石破氏とイギリスのスターマー首相です。
また、イギリスを含むTPP(環太平洋パートナーシップ協定)が12月から発効する予定ですが、これにはほとんど実質的な意味がないとされています。というのも、日本とイギリスの間ではすでに経済連携協定、つまり事実上の自由貿易協定が締結されており、新たにイギリスがTPPに加わったとしても大きな効果は期待できないからです。
こうした状況を踏まえると、「トランプの保護主義はけしからん」「日英は自由貿易主義を掲げて対抗する」といった構図が明確になっています。さらに、反米・反トランプの立場を取る習近平とも関係を深めようという姿勢が見受けられます。石破氏は、中国に接近し、イギリスと連携することでトランプに対抗しようとしている意図が明らかです。
英国のスターマー首相も、選挙運動の際に主要な選挙スタッフをアメリカ民主党の選挙支援団体に送り込んでいます。さらに、シカゴで行われた民主党の党大会にも、イギリス労働党の選挙戦を成功に導いた参謀たちを派遣するなど、アメリカ民主党への協力体制を強化していました。この動きは、かなりの肩入れと言えます。
スターマー首相は、カマラ・ハリス副大統領を積極的に支持する姿勢を明確にしました。これに対し、トランプ陣営は「これは反トランプにおける外国による露骨な選挙干渉ではないか」と怒りを露わにしている状況です。
それに対して、「もともとそのようなことがあった」という議論が一つあります。具体的には、イギリスの労働党とアメリカの民主党はリベラルな政党としてもともと親しい関係にあります。それは、イギリスの保守党とアメリカの共和党が保守主義の政党として親しい関係にあるのと似ています。これまでも選挙の際には、ある程度の人員が両国間で行き来することがあったそうです。
しかし、今回はその規模がこれまでとは異なります。これまでは、選挙戦略においてアメリカの方が進んでおり、アメリカがイギリスにノウハウを教えるという立場が主流でした。しかし、今回は大勝利を収めたイギリスの労働党が、アメリカに様々な方法を伝授するという文脈で動いているのです。
さらに、イギリスの労働党の選挙関係の高官が、SNSで次のような内容を公開しました。「これから10月に向けて、私たちは100名のボランティアを組織し、カマラ・ハリスを支援する予定です。その際の宿泊費用についてはこちらが負担します」という内容でした。この行為は、厳密に言えば選挙法違反に該当する可能性があるという指摘がされています。
こうした状況の中、スターマー氏はハリス副大統領を積極的に応援し、明らかに反トランプの姿勢を示していました。政策の方向性も反トランプであり、現在のバイデン大統領とは親しい関係にあります。このように立場が明確であるため、アメリカ国内では「スターマー首相はアメリカ内政に干渉したのではないか」と批判されることもあります。
さらに、スターマー氏が「トランプは保護主義で問題だ。我々は自由貿易を推進するべきだ」といった発言をすれば、トランプ政権としては「安倍元首相とは路線が異なる石破政権は対立軸にならざるを得ない」と考えるのも当然です。実際、そうした路線の違いが石破氏自身への反発を招いている要因ともいえるでしょう。
その結果、日米首脳会談が後回しにされるのも仕方ないと言えます。
こうした状況下で、日本も厳しい立場に追い込まれています。早急に石破氏を引きずり下ろさなければ、日本の未来は危ういと言えるでしょう。ただし、私はアメリカ政権の言いなりになるべきだと主張しているわけではありません。
バイデン政権の時代には、それに強く反発し、バイデン政権と戦うことが日本の国益にかなっていたと思います。しかし、今、世界の自由経済を盛り上げ、第3次世界大戦を回避し、平和に向かう道筋を示そうとする優れた大統領が登場しているのです。そのようなリーダーと協力するのは当然のことです。
一方で、中国共産党の帝国主義に対しては断固として対立するという姿勢が、トランプ政権の基本方針です。そのため、アメリカとしっかりと手を結ぶことが必要不可欠だと考えます。これまで日本は「自由貿易」を掲げてきましたが、その実態はグローバリズムの推進でしかありませんでした。我々の先人たちは、明治時代に関税自主権を奪われ、それを取り戻すために明治のほぼ全期間を費やしてきました。そして最終的に関税自主権を取り戻し、国としての経済的な自立を果たしました。
関税を課す権利は各国固有の権利であり、日本にとって不都合な外国製品に関しては関税を課すことができます。しかし、それを無条件で取り払って「自由貿易」の名の下にTPPのような枠組みを推進するのは、関税自主権の放棄に等しい行為です。どの国も自国の弱い産業を保護する権利を持っています。日本も競争力のある分野では自由貿易を進めてきましたが、競争力の低い農業分野などでは保護主義を取り入れてきました。
保護主義は必ずしも間違いではありません。各国は競争力のある分野では自由貿易を採用し、弱い分野を保護することが自然な流れです。トランプ大統領が推し進めようとしているのは、こうした現実的な政策に基づいたものです。そのため、日本もこの方針を受け入れることに何ら問題はありません。
しかし、自由貿易というイデオロギーに基づき、関税を完全に撤廃するというグローバリズム的な考え方は機能しません。国境の壁をなくせばすべてがうまくいくという発想は現実を見ていないのです。実際に、外国人労働者の流入が増加することで、失業率が上昇し、犯罪率が高まるなどの問題が発生しています。ヨーロッパやアメリカの現状を見ても、その結果がいかに深刻であるかは明白です。
グローバリズムが誤りであったという結論が、すでに多くの国で出されています。特に民主主義国家においては、国民を主体とし、国益を第一に考える政治を行うことが当然の責務であると言えるでしょう。
自由貿易主義も保護貿易主義も、その時々の状況に応じて使い分けるべきです。重要なのは、そのバランスをどう取るかという点に尽きます。しかし、その際に古いイデオロギーであるグローバリズムに基づき、「何でも自由貿易主義が正しい」と主張し、保護主義的政策をとるトランプを非難するのは、現実を見ていない議論だと言えるでしょう。それは、国益を無視した議論でもあります。
また、スターマー氏が反トランプの立場を明確にし、それに基づいて手を組もうとする動きがあります。これにより、日本では自民党政権として初めて、アメリカの政権と正面衝突する形になる可能性があります。今後、トランプ氏が政権にいる限り、日本に対して厳しい要求を突きつけてくることが予想されます。しかし、それらの要求の多くは、日本の防衛における自律性を求めるものであり、日本にとって有益な提案と言えます。
たとえば、アメリカの防衛力に頼らず、日本が自主防衛を実現するべきだという主張は、筋が通っています。本来であれば、憲法を改正し、日本自身が防衛の責任を持つ形にすること、さらには米軍基地を必要としない国になることが理想でしょう。こうした建設的な圧力がアメリカから加わることにより、日本の防衛政策が前進する可能性があります。
このような中、マスコミは「トランプは反日的だ」と報じるかもしれませんが、実際にはそうではありません。トランプ氏はアメリカの国益を追求しているだけで、その結果として日本に対する要求が強まるのは当然のことです。アメリカの影響力が相対的に弱まっている中で、新しい日米関係を築く必要があります。その中で、防衛における自主国防の実現は当然の課題と言えるでしょう。