赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

無頼漢が建てた国、中国――真実の中国② topics(592)

2022-09-20 09:32:11 | 政治見解



topics(592): 無頼漢が建てた国、中国――真実の中国②

中国という国家の成り立ち

昨日は、中国人の精神の底流に流れるのは、孔子・孟子の性善説思想ではなく、「厚黒学」という厚かましく、かつ、腹黒く生きる生き方であるということを述べました。この生き方を実践すれば「無頼の徒」になるのは確実で、中国をよく観察すると、無頼漢の集合で国家が形成されているのではないかと思えるほどです。

このことを、天安門事件に絶望していまは日本人となった石平(せき・へい)さんが教えてくれています。

腹の黒い悪党ほど権力を握って天下を取るのは中国史上の鉄則であって、中国の歴史と中国という国のかたちはこのようにしてつくられていった。中国をつくったのはまさに悪党たちなのだ。中国の歴史も、中国という国のかたちも、まさにそれらの悪党によってつくられているのである。このような伝統は、現代になっても生きている。(前漢の高祖・劉邦の知られざる残虐性 「国家の私物化」と「恐怖の政治粛清」より)

歴史上、無頼の徒がつくった国が「漢」です。「漢」字や無頼「漢」のもととなっている国です。司馬遼太郎さんの『項羽と劉邦』を読んだことがある方には、無頼の徒、劉邦が漢帝国を作っていった過程をよくご理解していると思います。劉邦の悪党ぶりはすさまじく、再び、石平さんの文章を引用しますと・・・。

劉邦のもとに集まってきた武人や策士たちも、じつは彼と同類の人間が多い。策士の一人である陳平(ちんぺい)という者が親分の劉邦に対して、項羽軍と比較して「わが陣営の特徴」について語るときにこう述べたことがある。

「大王(劉邦)の場合、傲岸不遜なお振る舞いが多く、廉節(れんせつ)の士は集まりませんが、気前よく爵位や封邑(ほうゆう)をお与えになりますので、変わり者で利につられやすく恥知らずの連中が多く集まっております」

いってみれば、自分の生き残りのためにわが子の命を犠牲にするのに何の躊躇いも感じない劉邦という「人間失格」の無頼漢のもとに、「利につられやすく恥知らずの連中」が集まってできあがったのが、すなわち劉邦の率いる人間集団の性格である。

そして、結果的にはやはり、この「恥知らず」の人間集団が、あの豪快勇敢にして気位(きぐらい)の高い英雄の項羽を打ち負かして天下を手に入れた。

歴史によくあるような無念にして理不尽な結末であるが、いわば「悪いやつほど天下を取れる」という中国史の法則がここから始まったのである。


現代中国は「漢」を模倣する

毛沢東らの無頼の徒により現在の中華人民共和国が誕生したのが1949年10月1日、形の上では共産主義者の集団となっていますが、実質は、伝統的な中国大陸の悪党の集まりであることは間違いありません。国家の形式をとっているから何も知らない人が信用してしまうのですが、たとえて言えば、暴力団が抗争を繰り返しながら最大勢力になり、国を建設したといえる国が現代中国なのです。毛沢東自身、政権は「銃口から生まれる」と暴力革命を肯定しています。

無頼漢である毛沢東の残虐性はいたるところに見ることができます。たとえば、朝鮮戦争で人海戦術を繰り出した時の最前線の兵士はかつて敵対していた国民党軍の生き残りでした。その後ろには共産党軍の督戦隊がいて退却してくる兵士を撃ち殺します。兵士たちは前進しても死、退却しても死、死ぬしか方法はありませんでした。中国の歴史によくみられる「囚人兵」と同じで、敵軍の前で自決させて敵軍を驚愕させるやり方です。

また、毛沢東の権力欲は異常で現代中国は権力闘争だけで出来上がっているといっても過言ではありません。その最たる例が文化大革命で、毛沢東の後継者と見られていた劉少奇は非業の死をとげましたが、この時、毛沢東は軍をおさえていた林彪を利用しました。しかし、のちに林彪も殺されるのを恐れてソ連に脱出しようとしたとき飛行機の墜落事故でなくなりました。毛沢東はかつての仲間も平気で殺すわけです。朝日新聞が礼賛する文化大革命とは、毛沢東による権力奪還のための闘争が本質だったわけです。

その後の中国における大事件はすべて権力闘争によって引き起こされたと見る方がよく、また、チベット、ウイグルへの侵攻と大虐殺、天安門事件に見られるような虐殺も人の命を軽んずる中国の伝統的な考え方に依拠していると思われます。その延長線上に今の習近平政権があり、習氏は今もなお胡錦涛氏を含む江沢民派つぶしに全力を挙げる一方、ウイグルや香港の人権弾圧を行い続けているのです。

現在、習氏は、党のトップにあたる「中国共産党中央委員会総書記」であり、軍のトップである「中央軍事委員会主席」と国家のトップにあたる元首、「国家主席」を兼ねています。そして、党の中に、経済・安全保障・外交・情報通信などそれぞれの分野で指導を行う「小組」という組織を作って、みずからそれらの組織のトップに就きました。この意味するところは、習氏の独裁を可能にしたということです。

したがって、習氏のいまの気分は「皇帝」で、たびたび毛沢東と「漢帝国」を引き合いに出し、「中華民族の偉大な復興」を説いています。実際、本年7月1日の香港返還25年の記念式典には航空機を使わず陸路で、しかも式典では参列者とものすごい距離を取り、晩餐会も中止するなどの異様な対応をしましたが、これは歴代の皇帝と同様、暗殺を極度に恐れているからと言われています。

ただ、習近平氏が皇帝の気分であっても、真の皇帝化実現のためには10月16日から党大会での承認が必要です。江沢民派らをさらにどう抑え込むか、ただいま、無頼漢同士の権力闘争の真っ最中です。(つづく)

(明日は「華夷秩序とそれに抗う日本」です)




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