赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

②日本が取るべき経済安全保障政策——中国系アメリカ人に対するアメリカの対処法に学べ 

2025-01-10 00:00:00 | 政治見解
②日本が取るべき経済安全保障政策
——中国系アメリカ人に対するアメリカの対処法に学べ 



昨日からの続きです

(本ブログは著者の特別の許可を得て掲載しています。なお、収録時は対中宥和の岸田政権下です。)


AI半導体の新星、エヌビディア

例えば、最近売り出されたAppleのiPhone 15Proの中には、A17Proという半導体が入っています。この A17ProというCPUの中には、約190億個のトランジスタが入っているんですよ。iPhoneの中にね。

そして、このトランジスタの回路の幅は3ナノメートルなんです。こういう我々の身近なものにも、ものすごくハイテクなものが使われていて、そしてスパコンの脳である先端半導体は、この微細化を競っているわけです。

ところが、このCPUというのは一度にーつのタスクしか処理できないんですね。AIでは知覚、認知、行動などの領域に入ってくると、マルチタスク、つまり並列処理にCPUが弱いということが表面化 して問題になった。

そこで大規模な並列計算ができるプロセッサーが要るねということになって、GPU ——これはもともとゲームなどに使われていたんですけれど、Graphics Processing UnitというものがAI 研究者によって広く使われるようになって、AI開発の重要なツールとなったのです。

つまり、AIのこの 計算するスパコンの心臓部が、微細加工されたCPU。そしてAIを開発するための重要なツールは、GPU というものなんですね。
これを使っている代表的な会社が、エヌビディアというアメリカの会社です。ここはA100というこう いった、GPUを販売していたんですけれども、これをアメリカの規制対象になってしまったのでA800というのを作っています。

ところが、これでもそこそこで きるので、今、バイデン政権が検討している追加規制では、こういったA800の販売も禁止しょうということを検討しているようです。


ウクライナ戦争と半導体



ウクライナ戦争における半導体の重要性ということですけれども、結局今申し上げたように、戦争において高性能な半導体は欠くことができない。ところが欧米諸国が半導体をロシアに対して禁輸にしたものですから、ロシア軍はウクライナ戦争で使う兵器の補給能力がすごく落ちたんですね。

結局、先端半導体が手に入らないから、ミサイルに組み込むことができないのでミサイルが足りない。中国は 最先端の半導体を製造していないので、ロシアに密輸とか回すことができない。だからこれが経済安全保障の肝なんですね。

そして、アメリカの輸出規制に違反して、ロシア軍にアメリカ製の集積回路を供給したということで、2023年10月、49の事業者がアメリカのエンティティリスト、ブラックリストに追加されています。 どんな会社かというと、ほとんど中国。あと他にエストニア、フィンランド、ドイツ、インドとか、いろいろあります。こういったところが追加でブラックリストに追加されています。

こういったような覇権争いに関係があるので、アメリカが昨年10月に輸出管理を強化した時に、なぜ この輸出管理を強化するのかという理由を説明しています。


中国への規制を強化

この昨年10月の半導体規制というのは、COCOMという対共産圏輸出規制というのが昔あったんですね。東西冷戦の頃は。

それが東西冷戦が終わって解散した後、最大の規制になっています。そしてまず先端半導体分野では、スパコ ン分野、特定重要分野というのを対象にして規制をかけた。それから特定の指定企業でなくても、そういった半導体の開発製造をする企業全般を、これは純粋な民生用とですよと言っても禁輸にした。

それからさらに、この規制の前に成立していたアメリカのチップス法という法律がありますが、中国の半導体工場が先端半導体を開発製造しているかどうか分からない場合は、原則、輸出を不許可にしています。基本的には、もう出さないよという規制を取ったわけですね。

この規制の要点を説明する、これはちょっと輸出管理的な専門的なことなのでさらっと言うと、エンドユース規制に半導体製造関連エンドユース規制とスーパーコンピューター関連エンドユース規制というのを新たに設けた。

それから直接製品規制というのがあるのですが、ここに新たに3類型を設けた。それからアメリカの商務省の既製品リストで、中国への規制を強化した。それからすごいのは、アメリカの企業とか中国系のアメリカ人ですね。中国系に限りませんけれども、主に対象になっているの は中国系アメリカ人などによる、中国の先端半導体の開発・製造への一切の関与を禁止した。

これはどういうことかというと、今言いましたように中国系アメリカ人という方々がいて、彼らはアメリカの会社に就職をして、そして中国に行って中国の半導体企業の工場の立ち上げなどを手伝っていたわけです。これを、もう原則不許可にするという措置を執ったわけですね。



そこでどういうことが起きているかというと、YMTCとかDRAMのCXMT、それからスパコンの半導体を開発している会社などに所属している米国人、アメリカの従業員はアメリカへもう帰国しています。

それからアメリカの主要 半導体製造装置メーカーは、このメモリーを作っているYMTCに派遣している製造装置の立ち上げをやっているエンジニアも引き上げちゃったと。それからオランダのASMLという露光装置の大手の会社 がありますが、アメリカにあるASMLと子会社の従業員へ、中国顧客への装置の販売とかサービス提供 を停止するように指示をしている。
こういったのは非常に中国系のアメリカ人にとっては、もう帰国の選択肢しかないわけです。つまり、一切のサポートとか指導を禁止するということは、口頭を含む一切の技術提供その他の支援の関与も規制されているわけです。

つまり、この中国の半導体メーカーとか製造メーカーに勤務している多数の中国系アメリカ人というのは、もうそこの中国の会社を退職してアメリカに帰るか、もしくはアメリカの国籍を捨てて中国の半導体会社で勤務を続けるかという選択を迫られたわけですね。

仮に米国籍を捨てたとすると、もう再び取ることは極めて難しいわけです。そうすると、もう彼らにしてみれば 帰らざるを得ないということで、それも強制的に接触ができなくなりますから、日本でもそうですが ハニトラとかマネトラとか、千人計画で行っている人たちに対しては非常に強力な手段なんです。

日本も導入するべきなんですよ。ハニトラとかマネトラでズブズブになっている人が、たくさんいるわけです。彼らに、もう日本の国籍を捨てて中国に残りますかと。それとも日本に帰りますかという選択肢を迫るというのと同じことなわけです。これは非常に有効な手段です。

日本企業への影響というのは、アメリカの企業とか、あとアメリカ以外の企業ですね。日本企業などの米国以外、日本なども含めて、からの輸出も含めて、包括的に規制対象になっています。それから中国にある外資系企業、例えば日本企業の中国工場などの半導体工場向けの輸出も、規制の対象になって います。

(つづく)

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