コラム(392):皇帝を夢見たプーチン氏の誤算
これまで、ウクライナの危機を中心に論じてきましたが、今回は侵略者であるロシアのプーチン氏にとっても危機が迫っているということについて述べたいと思います。
ブーメランとなった「反戦平和」の思想
古い軍事思想プーチン氏の最大の失敗は、ロシアが軍事強国であっても経済規模はさほど大きくなく、欧米諸国が返り血を浴びる覚悟で本気の経済制裁を加えればロシアは破綻するということを認識できていなかったことにあります。
要は、クラウゼヴィッツの「戦争は外交の一手段である」という古臭い発想法と、KGB出身で経済音痴が合わさって、いうなれば昔のソ連時代の考えを引きずったまま、ロシアの新ツァーリになりたいという野望が判断を狂わした結果であると思います。
プーチン氏はウクライナ侵略がこれほど国際社会から反発を受けるとは予想していなかったのではないか。かつてソ連が戦車でチェコを蹂躙し「プラハの春」といわれたチェコの自由化を阻止した時代、その後のソ連によるアフガン侵攻など国際的な非難は浴びても、今回ほど全世界的な非難の嵐にはなりませんでした。
それが今回、世界的な反戦平和運動に発展してしまったことをプーチン氏はどう考えているのか。反戦平和運動は本来ソ連の専売特許でアメリカを封じ込めるためのプロパガンダであったはずなのに、今回イデオロギー抜きの反戦平和運動となってーチン氏に跳ね返ってるという皮肉な現象になっています。
しかも、歴史的に見てこれほど全世界的に戦争反対の声が巻き起こってくるのは今回が初めてではないかと思います。その主因は、「核兵器使用を命令した」とのプーチン発言が人類全体に強い危機感を与えたからだと思います。
経済音痴が招いたロシアの悲劇
もう一つの誤算は欧米諸国による強烈な経済制裁を予測していなかったことにあります。基本的に経済制裁は効果があった試しはなく、経済制裁を受けた国々、たとえば現在でも被制裁国であるイランとか北朝鮮などは生き延びています。どこかに抜け道があるからです。
しかし、今回のロシアに対する経済制裁は実に厳しい。その第一はロシアの唯一の資金源がたたれようとしています。 石油大手シェルが「主要な液化天然ガスプラントを含むロシアの全事業から撤退する」と発表し、「サハリン2」や「ノルドストリーム2」から手を引きます。
決定的な出来事は、欧米がロシアの複数銀行を国際決済システム「SWIFT」から切り離すことで合意したことです。これにより、制裁対象の銀行は国際金融システムから切り離され、世界的に活動する能力が損なわれることになります。
すでにその影響はあらわれ、ロシア最大手行ズベルバンク傘下のオーストリア子会社銀行が預金流出によって経営破綻すると言われ、さらに、ロシア国内では急激なインフレが起き始めた上、ルーブルの信用下落で人びとがATMに殺到し、取り付け騒ぎが起き始めています。
一説によるとプーチン氏はエリツィン政権と運命共同体だった新興財閥「オリガルヒ」と天然ガス利権をめぐり激しい権力闘争を繰り広げていて、経済制裁はオリガルヒつぶしに役立つという見方をする人がいますが、結局は、今回の経済制裁が両者に致命傷をあたえ、国家の財政破綻につながる可能性の方が大きいと思います。
ただし、制裁に若干の懸念材料があります。ロシアがSWIFTから切り離されたことで、中国の人民元の国際銀行間決済システム「CIPS」に逃げ込む可能性があることです。中国や欧米の大手金融機関のほか、日本は三菱UFJ銀行とみずほ銀行の中国法人が同システムに接続して人民元と決済できるようになっていますが、ロシアがここを抜け道に使うならば、金融制裁の効果が激減する可能性もあります。
今回のぷ^陳氏の暴挙、私はプーチン氏が様々な要因から判断ミスを犯したとしか思えません。ウクライナを国防上の緩衝地帯にしたいというソ連時代からの古い思想と国内の新興財閥との戦い、軍事大国でありながら経済は小さくかつてのソ連時代の栄光は地に落ちている現状などのさまざまな要因が、ロシア皇帝を目指すプーチンにとって手かせ足かせになっていたのは事実です。
しかし、それらを打開するためにウクライナ侵略を行ったことで、プーチン氏は全てを失いました。また、ロシアも国際社会からしばらくは拒絶される存在になったと思います。古い価値観にとらわれた政治家が国家の指導者となったとき、いかにその国家が危険であるかを物語る出来事だと思います。
同時に、今回のウクライナ侵略をけしかけたのは、実はバイデン米大統領ではないかと考えています。次回、それを述べたいと思います。
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