コラム(368):
昔の自民党に戻った岸田政権の未来
岸田首相の就任以来、私は政治への信頼感や安心感が急激にしぼんでいっています。
昔の自民党に先祖返った岸田政権
原因は、岸田政権が昔の自民党に戻ったと感じられるからに他なりません。
これは、安倍政権下で日本がやっとまともな国家になれるという期待感、そのあとを引き継いだ菅政権への安心感、すなわち日本と国民の生命を守り抜くという両者共通の意思とは別物の、既得権益を守り現状を維持することが自民党の役割であると考える人たちの意思が党内の大勢を占めてきたことに起因すると思います。
要は、岸田政権が安倍・菅路線を捨てたと理解することが正解のようです。事実、第二次安倍政権の成立時と比較してみればいまの自民党が別物になったことがよく分かります。
再登板を果たした安倍首相は、選挙の圧勝を背景に、就任早々から中韓に毅然たる態度を示し、靖国神社参拝を果たしたのは今でも記憶に新しいと思います。以降、TPP、安保法制を成立させ、今日のQuad(日米豪印戦略対話)の原型となる「自由で開かれたインド太平洋構想」に取り組みました。その一連の行動は、多くの国民に日本という国家の在り方、それにかかわる自分の存在との関係について考えるきっかけを与えています。
この間、親中派勢力による激しい抵抗運動がありましたが、これも含めて、国民の間では、国家と自分が一体となってこの国を守っていかねばならないとの意識に目覚める人が続出しました。
表現を変えれば、安倍政権時代は、菅政権を含めて、国民に国家の存在価値を知らしめた時代であり、国家のアイデンティティと個人のアイデンティティが一つになる至福のときであったとも言うことができます。だから安倍政権は長きにわたって高い支持を得ていたのです。これは、戦後の日本では珍しい現象です。
これに対して、現岸田政権は、国家のことよりも既得権益を守りたい人や現状維持を望む人の方が多数派となって成立したわけですから、「日本を守る」ために登場した安倍政権とは色彩がおのずから異なります。
これにより国家の意思とつながることのできた目覚めた国民は再び国家から切り離され、政治への共感や関心は喪失することになります。これは岸田政権が誰からも消極的な評価しか受けられなくなることを意味しています。
岸田政権の弱点は人事にあり
いままであまり知られていなかった人物を内閣に登用することで内閣の新鮮さを打ち出した岸田首相ではありますが、人事への手腕に対してもしたたかさがないように思われます。
その代表例が党幹事長人事です。ただし、これは甘利氏の過去のトラブルの問題を問うているのではありません。甘利氏の存在自体が野党の格好の攻撃対象になって、岸田政権が窮地に立つ危惧を感じているからです。
これも安倍元首相の人事のしたたかさと比較すればすぐにわかります。
安倍元首相が覇権主義中国の「一帯一路政策」に対抗して、対中包囲網の根幹をなす「自由で開かれたインド太平洋構想」を発表し、米大統領選に当選したばかりのトランプ氏を説得に行った年、幹事長に指名したのは親中派のボスである二階氏でした。
安倍元首相には、二階氏を党の要に配置すれば党内の親中派の跳ね上がりを抑えて、対中工作に専念できるとのしたたかな読みがあったと思います。事実、党内の親中派からは安倍元首相への造反はありませんでした。
その上、親中派野党も安倍元首相を攻撃することはできても、同じ仲間の二階氏を直接攻撃することはできず、政府のバックヤードである自民党が野党からの攻撃をあまり受けることはありませんでした。安倍元首相が後顧の憂いなく対中包囲網形成に全力を注ぐことができたのも、したたかな考えがあったからだと言えると思います。
しかし、岸田政権では甘利氏が野党の攻撃対象となるのは明らかで、岸田首相は内閣の運営と党の運営の二正面で攻撃を受けることになり、政治運営が不安定になる可能性があります。ここでぶれると党政調で提起したことが何も実現できなくなってしまいます。
総裁選の論功行賞ではなく、もっとしたたかな目で先を見据えて人事を考えた方がよかったのではないかと思います。
岸田首相を支える構造は、日本の国家の行く末を心配する集団が離れ、既得権益や現状維持を守りたい人びとだけが支えています。直近の選挙では負けないにせよ、何も評価されない政権になりそうです。
したがって、岸田首相が国民の心を自民党に取り戻すためには、岸田首相のかくあるべしとの日本の国家像、未来像を提示することが先決で、改憲に全力をあげることでその姿勢を示す以外に方法はないと思います。
お問い合わせ先 akaminekaz@gmail.com【コピペしてください】
FBは https://www.facebook.com/akaminekaz