赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』(18)
歴史的な転換点に立った日米関係
戦後70年の節目に行われた日米首脳会談(4月28日)と、安倍総理のアメリカ議会上下両院の合同会議での演説(29日)。これらから、「日米協調による国際社会の繁栄と調和への第一歩が踏み出された歴史的瞬間である」と読み取ることができるのではないかと思います。
日米首脳会談で特筆すべきこと
日米首脳会談は、「日米同盟が国際社会で最も重要なものである」ということを宣言したことに最大の力点があります。つまり、現在、中国の覇権拡大がアジアのみならずアフリカ諸国まで及ぶ中で、日米同盟が「繁栄と平和に基づく積極的平和主義で、国際社会に安定とバランスを取戻す」ということを世界に発信したということなのです。おそらくは、この日米首脳会談が、日米両国においても、また国際社会においても、21世紀の明日を決定づける「歴史的な転換点」になったと思います。
首脳会談後の共同記者会見に臨んだオバマ大統領は、日米の協力関係を「相互依存、敬意、責務の分担…。『お互いのために』が日米同盟の本質であり、この同盟には世界へ向けた教訓が含まれている」と強調しました。また、中国の海洋進出に触れ、「日米両国は南シナ海での中国の埋め立てと施設の建設に懸念を共有している。両国は航行の自由と国際法の尊重、それに紛争の平和的な解決に連携して取り組んでいく」と述べています。中国に対する牽制が強くなっていることが理解できます。
一方、安倍総理は「自由,民主主義,人権,法の支配といった基本的価値の上に立つ日米同盟が,アジア太平洋や世界の平和と繁栄に主導的な役割を果たしていく」との力強いメッセージを発信しています。戦争という惨禍を克服し、「未来志向」の関係を築くために積極的に国際社会に貢献していく姿勢がにじみでているものとなっています。
日米首脳会談の全貌については、外務省のホームページご参照:http://www.mofa.go.jp/mofaj/na/na1/us/page4_001148.html
上下両院合同会議での演説
日本の総理大臣として両院合同会議で演説するのは初めてとなった安倍総理は、英語で約45分間、歴史認識、戦後の発展とアメリカの貢献、日米同盟新時代について語りました。今回の演説では「しれつに戦い合った敵は、心の紐帯を結ぶ友になった。戦後の日本は、先の大戦に対する痛切な反省を胸に歩みを刻んだ。みずからの行いがアジア諸国民に苦しみを与えた事実から目を背けてはならない。これらの点についての思いは歴代総理と全く変わるものではない」と述べました。また、この発言により「安倍総理は歴史修正主義者だ」とする評価が誤解であることも明らかにしています。
最後には、「国際協調主義に基づく積極的平和主義こそは、日本の将来を導く旗印となる。・・・ 私たちの同盟を『希望の同盟』と呼ぼう。アメリカと日本が力を合わせ、世界をもっとはるかによい場所にしていこう。一緒なら、きっとできる」と呼びかけ、演説を締めくくっています。
この演説に対して、アメリカ議会での賛同が得られるかどうかが、「戦後70年談話」の成功に向けた試金石であるととらえられていましたが、議員関係者には好評であったようです。事実、アメリカ議会では立場を超えて発言者に対する賛辞を惜しまない「スタンディング・オベーション」も、14回はあったといわれています。
上下両院合同会議については、外務省のホームページご参照:http://www.mofa.go.jp/mofaj/na/na1/us/page4_001149.html
対等な日米関係の成立
今回の首脳会談、上下両院合同会議での演説を見て感じたことがあります。それは、戦後70年を経て、やっと日本はアメリカとの対等関係に立ったのではないかということです。
これまでの日米関係は、第二次世界大戦敗戦の影響で、日本が半ばアメリカの従属的な関係にあったのは事実です。一時的に、中曽根―レーガン、小泉―ブッシュ、といった個人的な親密関係があった時でさえ、アメリカによる経済的開放圧力の前に日本は屈せざるをえませんでした。アメリカの日本に対する絶対的優位はごく最近まで続いていたのです。
ところが、昨今のTPP交渉は、当事者間による激しいやりとりが行われているようです。これは、日本が堂々とアメリカにもの申しているからだと思われます。数年前の日本なら、日本側の妥協であっさりと進展するはずなのに、日本も引き下がらないようです。これほどタフに交渉する日本を見るのは、戦後になって初めてのような気がします。どうやら、日本もアメリカと対等の交渉ができるようになったと見受けられるのです。
集団的自衛権行使容認が日米間の片務性を解消した
この日米関係を対等化させた最大の要因は、日本の「集団的自衛権行使容認」にあることは間違いありません。
と申しますのも、国家というものは領土・国民・主権の三つの要素から成り立っているといわれますが、なかでも主権とは「国家が、その国の領土と国民を統治する権利」とされておりそのためには軍事的な防衛力が必要不可欠なものとなっています。ところが、日本の場合、日本国憲法によって「正当防衛や緊急避難も含めたあらゆる軍事力の保有と行使を否定した平和主義」という解釈が長年の間、まかり通っていました【※1】。
【※1】意外にも、かつての日本共産党は、日本国憲法を「急迫不正の侵害から国をまもる権利をもたない」ことを理由に反対した。
したがって、自衛隊はあっても日陰の存在にしか過ぎませんでした。日本が諸外国から侵略されずに独立を保持できたのは、ひとえに日米安保条約によるものなのです。ただし、日米安保条約は、一般的には「アメリカは日本を防衛する義務があるが、日本はアメリカを防衛する義務が無い」と極めて片務性の高いものといわれていました。したがって、対等な日米関係ではなく、軍事的にはアメリカの従属下にあったといっても過言ではないのです。これに対して日本の歴代内閣は、何も対策を講じようとはせず、在日米軍に対して金銭を支払うことで問題の本質を糊塗していただけなのです。
しかし、これでは、日本を守る米軍が攻撃されたときに、日本は「見て見ぬふりをする」態度にアメリカのみならず、世界の主要国から疑義がはさまれるのは当然のことです。それを、昨年(2014)の7月に、安倍内閣が「集団的自衛権行使容認」の閣議決定をして、「自国と密接な国が武力攻撃された際に、自国が攻撃されていなくとも実力をもって阻止する」と解釈を改めたのです。
これで、はじめて日本はアメリカと対等の関係が築かれたことになります。そうした事実の積み重ねの上での、安倍総理の訪米であるということを考えれば、日米首脳会談や上下両院合同会議での演説が、極めて重要なものであり、歴史的に大変意義あるものと理解できるのではないかと思います。
謝罪とは悲しみを共有すること
このような歴史的転換点にあっても、マスコミの一部や中国、韓国から「深い謝罪がない」と批判する人たちもいます。
しかし、彼らの要求は政治的な交渉を有利に運ぶための手段に過ぎません。これでは、明日の輝かしい国際社会をともに築き上げようという「未来志向」も「希望」も生まれません。
むしろ、現実は中国の思惑とは違い、結果的に日米同盟が強化されました。韓国も世界から孤立する可能性も出てきました。真実の謝罪を求めるならば、これを政治の駆け引きの道具として利用してはならないのです。
一方、日本政府と日本国民は、いきさつはどうであれ中国や韓国の深い悲しみを理解し思いやる気持ちを持つことが大切です。それが国際社会に調和をもたらす原理であり、国際的な紛争を終結させる力になると確信しています。
日米首脳会談と米国議会演説から読み取れること
アメリカは日本との関係をますます深めようとしています。
現在、アメリカにとっての最大の懸念は中国の存在です。驚異的な軍備拡張政策、基軸通貨のドルに対する挑戦であるAIIB(アジアインフラ投資銀行)には極めて強い不快感を抱いています。
また、アメリカは世界の警察官としての役割を続けるつもりですが、アメリカ一国だけではその維持が難しくなっています。いままで最大の同盟国だったイギリスが当てにならない状況の中で、本格的に日本を頼らざるを得なくなりました。アメリカも安倍総理の提唱(日本の国際協調主義に基づく積極的平和主義を通してテロリズム、感染症、自然災害、気候変動といった新たな問題に対し、共に立ち向かう)を大いに活用していきたいと考え始めているようです。
また、アメリカの友人から伺った話では、アメリカの国会議員のなかに「ミスターアベのような人物がアメリカ大統領になるべきだ」と思っている人が20人は下らないそうです。それほどインパクトが強い演説だったそうです。安倍総理には駆け引き無しの「世界の繁栄と平和」への思いがあるようですので、そのあたりが伝わったのではないかと思います。世界が変わる可能性が大きくなりました。
一方、日本の野党の認識は低すぎます。日本国民の8割ほどが安倍総理の演説に「特別なもの」を感じ、訪米を喜んでいるのですが、そんな中で民主党の枝野氏のコメントには、国民はがっかりしています。彼のコメントで民主党支持率がまた減少したように思います。野党各党も、「国際社会で求められていること」を考えて政治をしないと国民にそっぽを向かれそうです。
日米関係はかつてないほどの親密度の高さとなりました。日米が協調することで、国際社会の繁栄と平和や調和をもたらされる時代が到来しつつあるように思います。まさに、安倍総理のアメリカ訪問が、今後の世界地図を大きく変えていくことにつながりそうです。
お問い合わせ先 akaminekaz@gmail.com
FBは https://www.facebook.com/akaminekaz です
歴史的な転換点に立った日米関係
戦後70年の節目に行われた日米首脳会談(4月28日)と、安倍総理のアメリカ議会上下両院の合同会議での演説(29日)。これらから、「日米協調による国際社会の繁栄と調和への第一歩が踏み出された歴史的瞬間である」と読み取ることができるのではないかと思います。
日米首脳会談で特筆すべきこと
日米首脳会談は、「日米同盟が国際社会で最も重要なものである」ということを宣言したことに最大の力点があります。つまり、現在、中国の覇権拡大がアジアのみならずアフリカ諸国まで及ぶ中で、日米同盟が「繁栄と平和に基づく積極的平和主義で、国際社会に安定とバランスを取戻す」ということを世界に発信したということなのです。おそらくは、この日米首脳会談が、日米両国においても、また国際社会においても、21世紀の明日を決定づける「歴史的な転換点」になったと思います。
首脳会談後の共同記者会見に臨んだオバマ大統領は、日米の協力関係を「相互依存、敬意、責務の分担…。『お互いのために』が日米同盟の本質であり、この同盟には世界へ向けた教訓が含まれている」と強調しました。また、中国の海洋進出に触れ、「日米両国は南シナ海での中国の埋め立てと施設の建設に懸念を共有している。両国は航行の自由と国際法の尊重、それに紛争の平和的な解決に連携して取り組んでいく」と述べています。中国に対する牽制が強くなっていることが理解できます。
一方、安倍総理は「自由,民主主義,人権,法の支配といった基本的価値の上に立つ日米同盟が,アジア太平洋や世界の平和と繁栄に主導的な役割を果たしていく」との力強いメッセージを発信しています。戦争という惨禍を克服し、「未来志向」の関係を築くために積極的に国際社会に貢献していく姿勢がにじみでているものとなっています。
日米首脳会談の全貌については、外務省のホームページご参照:http://www.mofa.go.jp/mofaj/na/na1/us/page4_001148.html
上下両院合同会議での演説
日本の総理大臣として両院合同会議で演説するのは初めてとなった安倍総理は、英語で約45分間、歴史認識、戦後の発展とアメリカの貢献、日米同盟新時代について語りました。今回の演説では「しれつに戦い合った敵は、心の紐帯を結ぶ友になった。戦後の日本は、先の大戦に対する痛切な反省を胸に歩みを刻んだ。みずからの行いがアジア諸国民に苦しみを与えた事実から目を背けてはならない。これらの点についての思いは歴代総理と全く変わるものではない」と述べました。また、この発言により「安倍総理は歴史修正主義者だ」とする評価が誤解であることも明らかにしています。
最後には、「国際協調主義に基づく積極的平和主義こそは、日本の将来を導く旗印となる。・・・ 私たちの同盟を『希望の同盟』と呼ぼう。アメリカと日本が力を合わせ、世界をもっとはるかによい場所にしていこう。一緒なら、きっとできる」と呼びかけ、演説を締めくくっています。
この演説に対して、アメリカ議会での賛同が得られるかどうかが、「戦後70年談話」の成功に向けた試金石であるととらえられていましたが、議員関係者には好評であったようです。事実、アメリカ議会では立場を超えて発言者に対する賛辞を惜しまない「スタンディング・オベーション」も、14回はあったといわれています。
上下両院合同会議については、外務省のホームページご参照:http://www.mofa.go.jp/mofaj/na/na1/us/page4_001149.html
対等な日米関係の成立
今回の首脳会談、上下両院合同会議での演説を見て感じたことがあります。それは、戦後70年を経て、やっと日本はアメリカとの対等関係に立ったのではないかということです。
これまでの日米関係は、第二次世界大戦敗戦の影響で、日本が半ばアメリカの従属的な関係にあったのは事実です。一時的に、中曽根―レーガン、小泉―ブッシュ、といった個人的な親密関係があった時でさえ、アメリカによる経済的開放圧力の前に日本は屈せざるをえませんでした。アメリカの日本に対する絶対的優位はごく最近まで続いていたのです。
ところが、昨今のTPP交渉は、当事者間による激しいやりとりが行われているようです。これは、日本が堂々とアメリカにもの申しているからだと思われます。数年前の日本なら、日本側の妥協であっさりと進展するはずなのに、日本も引き下がらないようです。これほどタフに交渉する日本を見るのは、戦後になって初めてのような気がします。どうやら、日本もアメリカと対等の交渉ができるようになったと見受けられるのです。
集団的自衛権行使容認が日米間の片務性を解消した
この日米関係を対等化させた最大の要因は、日本の「集団的自衛権行使容認」にあることは間違いありません。
と申しますのも、国家というものは領土・国民・主権の三つの要素から成り立っているといわれますが、なかでも主権とは「国家が、その国の領土と国民を統治する権利」とされておりそのためには軍事的な防衛力が必要不可欠なものとなっています。ところが、日本の場合、日本国憲法によって「正当防衛や緊急避難も含めたあらゆる軍事力の保有と行使を否定した平和主義」という解釈が長年の間、まかり通っていました【※1】。
【※1】意外にも、かつての日本共産党は、日本国憲法を「急迫不正の侵害から国をまもる権利をもたない」ことを理由に反対した。
したがって、自衛隊はあっても日陰の存在にしか過ぎませんでした。日本が諸外国から侵略されずに独立を保持できたのは、ひとえに日米安保条約によるものなのです。ただし、日米安保条約は、一般的には「アメリカは日本を防衛する義務があるが、日本はアメリカを防衛する義務が無い」と極めて片務性の高いものといわれていました。したがって、対等な日米関係ではなく、軍事的にはアメリカの従属下にあったといっても過言ではないのです。これに対して日本の歴代内閣は、何も対策を講じようとはせず、在日米軍に対して金銭を支払うことで問題の本質を糊塗していただけなのです。
しかし、これでは、日本を守る米軍が攻撃されたときに、日本は「見て見ぬふりをする」態度にアメリカのみならず、世界の主要国から疑義がはさまれるのは当然のことです。それを、昨年(2014)の7月に、安倍内閣が「集団的自衛権行使容認」の閣議決定をして、「自国と密接な国が武力攻撃された際に、自国が攻撃されていなくとも実力をもって阻止する」と解釈を改めたのです。
これで、はじめて日本はアメリカと対等の関係が築かれたことになります。そうした事実の積み重ねの上での、安倍総理の訪米であるということを考えれば、日米首脳会談や上下両院合同会議での演説が、極めて重要なものであり、歴史的に大変意義あるものと理解できるのではないかと思います。
謝罪とは悲しみを共有すること
このような歴史的転換点にあっても、マスコミの一部や中国、韓国から「深い謝罪がない」と批判する人たちもいます。
しかし、彼らの要求は政治的な交渉を有利に運ぶための手段に過ぎません。これでは、明日の輝かしい国際社会をともに築き上げようという「未来志向」も「希望」も生まれません。
むしろ、現実は中国の思惑とは違い、結果的に日米同盟が強化されました。韓国も世界から孤立する可能性も出てきました。真実の謝罪を求めるならば、これを政治の駆け引きの道具として利用してはならないのです。
一方、日本政府と日本国民は、いきさつはどうであれ中国や韓国の深い悲しみを理解し思いやる気持ちを持つことが大切です。それが国際社会に調和をもたらす原理であり、国際的な紛争を終結させる力になると確信しています。
日米首脳会談と米国議会演説から読み取れること
アメリカは日本との関係をますます深めようとしています。
現在、アメリカにとっての最大の懸念は中国の存在です。驚異的な軍備拡張政策、基軸通貨のドルに対する挑戦であるAIIB(アジアインフラ投資銀行)には極めて強い不快感を抱いています。
また、アメリカは世界の警察官としての役割を続けるつもりですが、アメリカ一国だけではその維持が難しくなっています。いままで最大の同盟国だったイギリスが当てにならない状況の中で、本格的に日本を頼らざるを得なくなりました。アメリカも安倍総理の提唱(日本の国際協調主義に基づく積極的平和主義を通してテロリズム、感染症、自然災害、気候変動といった新たな問題に対し、共に立ち向かう)を大いに活用していきたいと考え始めているようです。
また、アメリカの友人から伺った話では、アメリカの国会議員のなかに「ミスターアベのような人物がアメリカ大統領になるべきだ」と思っている人が20人は下らないそうです。それほどインパクトが強い演説だったそうです。安倍総理には駆け引き無しの「世界の繁栄と平和」への思いがあるようですので、そのあたりが伝わったのではないかと思います。世界が変わる可能性が大きくなりました。
一方、日本の野党の認識は低すぎます。日本国民の8割ほどが安倍総理の演説に「特別なもの」を感じ、訪米を喜んでいるのですが、そんな中で民主党の枝野氏のコメントには、国民はがっかりしています。彼のコメントで民主党支持率がまた減少したように思います。野党各党も、「国際社会で求められていること」を考えて政治をしないと国民にそっぽを向かれそうです。
日米関係はかつてないほどの親密度の高さとなりました。日米が協調することで、国際社会の繁栄と平和や調和をもたらされる時代が到来しつつあるように思います。まさに、安倍総理のアメリカ訪問が、今後の世界地図を大きく変えていくことにつながりそうです。
お問い合わせ先 akaminekaz@gmail.com
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