赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

①戦争のカタチを変えたウクライナ戦争

2023-02-22 00:00:00 | 政治見解



①戦争のカタチを変えたウクライナ戦争:230222情報

ロシアによるウクライナ侵略が始まって一年が経過しようとしています。

戦況報道を見ていますとテレビメディアは戦闘地域における勝ち負けにこだわるばかりで、ウクライナ戦争が現代の戦争を変容させていることには一切気が付いていないのではないかと思うことがあります。

どうも「戦争のカタチ」が、従来の、私たちが知っている「戦争」とは違う形になってきているようです。実際、メディアが好んで語る「陸海空」「核の危険性」といった問題以外に「新しい戦争の形態」が見えてくる現実があります。

そこで、専門家の分析を通して現状を改めて見たいと思います。

まずは、兵器不足の現状についてです。


■ロシアの大攻勢――決着を目論むロシアと小型核兵器使用の可能性

ロシアがウクライナ東部で2月13日から大攻勢に出ました。ゼレンスキー大統領は西側に対して、戦車を送るよう頼んできましたが、イギリス製の戦車が届くのは早くても1か月後。アメリカの戦車が届くのは1年後です。ロシア側からすると西側の戦車が届く前にウクライナを叩く作戦でしょう。

この攻勢を直接指揮するのはゲラシモフ参謀総長。軍の制服組のトップです。軍のトップが自ら指揮を執っているということなので、もし、ロシアが目的を達成できなければ事実上の敗北ということになります。

そこで、小型核という話が出てきます。大量破壊兵器をロシア側が使う可能性があるということです。小型核というよりも化学兵器を使うのではないでしょうか。今、ロシア側は“ウクライナ側が化学兵器を使った”という調査を進めているようです。

「ウクライナ軍が先に使ったから報復として使わざるを得なかった」という言い訳をしたいわけです。


■英米の軍事力――品不足のイギリスと突然の製造停止をしたアメリカ

イギリスの軍事力に不安が漂っています。

ベン・ウォーレス国防大臣:「イギリスの銃火器は 全てウクライナに供与してしまったので もう在庫がない」
イギリスの元陸軍大臣元参謀総長のリチャード・バロンズ卿:「英国は、弾丸の在庫が 無くなる寸前である」
トバイアス・エルウッド※下院の国防委員会委員長:「戦争が勃発した場合、英国軍は兵器不足のため 5日ほどしかもたないだろう」

さらに、空母プリンス・オブ・ウェールズは欠陥だらけで実践配備が無期限延期。2月8日、ウクライナのゼレンスキー大統領はイギリスに緊急訪問し戦闘機を出すようお願いしましたが、こんな状況のイギリス軍ですので戦闘機を出す余裕はないでしょう。

アメリカにも不安要素があります。オーストラリアがイギリスとアメリカから原子力潜水艦を買うことに決めました。しかし、アメリカで建造できるか怪しくなってきました。アメリカの既存潜水艦の3隻のうち2隻以上は現在修理中もしくは修理待ちの状態です。

そしてアメリカ海軍は毎年2隻を建造しなければなりません。

なので、オーストラリアのために新しい原子力潜水艦を造る余裕はないというのが実際のところでしょう。対中包囲網にも影響するので日本はアメリカと協力して原子力潜水艦を造ることを提案すべきではないかと思います。日本の建造技術といえども相当難しいと思いますが、アメリカ頼みだけにはできないということが分かってきました。



近代戦争は、兵器の消耗戦です。 『福井県史』通史編5 のなかにこんな記述があります。
「日露戦争初期の三十七年五月の南山の戦闘では、わずか一日で小銃弾二一九万余発、砲弾三万四〇〇〇発を消費することで日清戦争全使用量を上回ってしまった」

この事態、現在でも変わらないようで、評論家の江崎路郎氏は「自衛隊は武器弾薬の不足により継戦能力がなく、装備や設備の老朽化、防衛産業の撤退と技術開発の遅れが著しい」と警鐘を鳴らしています。


最後に余談ですが、一時期、ロシアの戦車がウクライナ軍の攻撃で大量に破壊【※1】され、ロシア軍は弱いとまで言われたことがありました。しかし、ロシア事情に精通する科学者によると、「ロシアは使い物にならなくなった戦車を戦場に送り込んでスクラップにしてもらった。ロシア国内では新しい兵器がどんどん製造され、軍事産業は好景気だ」という話をしていました。直接聞いた話です。真偽は相当先でしかわかりませんが・・・。

【※1】23年2月10時点で、ウクライナ軍が破壊した露軍の戦車が1012、ウクライナ軍の手に渡った分なども含めると、露軍が失った戦車の総数は1700両を超えた。


(つづく 明日は「第六の戦場」―制脳権争い)


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