倒れる前も後も意識がなく記憶もない。私が感じていたのは黒の世界だけだ。
漆黒・暗闇・暗黒ありとあらゆる形容詞を全てもちいた黒とでもいえばよいのか?
人間は時として黒や暗闇に畏怖や恐怖を感じ好ましくない印象をもちがちだが、
私が意識を取り戻すまでの間感じていたのは、母胎の中で感じていたであろう暗闇
なのかもしれない。人間の脳には記憶が残っているといわれている領域だが
自分自身では取り出せない領域にあるとされている。
まっくらけののけ の全暗黒の世界だった。しかし不思議なことにこの暗黒でかつ静謐な
世界に安堵感を感じていた。つまり世俗的な事から一切切り離されたような感覚。
ーこのまま、このまま死ねるならなんとも楽に違いないふとそう思った
人間は必ずいつか終焉の時を迎える。瞼を閉じた今世の際きっとこういう安穏な
世界を見るのではないか、だとしたら死を畏怖するべきか賛美するべきか微妙だと
個人的に思う。
僕の理想の死といえば、例えば戦場で銃弾を浴びてとか道を歩いていたら
上から鉄筋が落ちてきて のような死を意識しない死に方。
ー今日のお昼は何を食べようかなぁ~なんて考えながらつまり生きていく事が
当たり前ーという時に一瞬にして生を終えるのだ。
でも現実的にはそんなのは稀な事だろう。見知らぬ僕を夜に頭部から出血している
のを見つけてくれて救急要請してくれた人がいる訳で、ややもすれば状況次第で
犯人扱いされかねない中での行動であり死を賛美するかのような表現は慎むべきかも
しれない。
ーそんなこというならあのまま知らぬふりをしておいてなるようになれば良い
そういわれるに違いない。